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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
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三つの言葉

 朝から一戦してしまった。

 切っ掛けは穂乃香が起きて、自分で仕掛けた罠に自分で引っかかった事だ。

 目が覚めて俺と顔を合わせると同時に微笑もうとして、喘いでしまった。

 開き直った穂乃香は俺の耳元で喘ぎ始めた。それにフィサリスが便乗し中に指を入れた。

 両耳から聞こえる甘い声についに息子が反応してしまい、その衝撃で水奈が起きてしまった。

 起きた水奈は俺の息子に驚いた後、俺の耳元で甘い声を出す穂乃香とフィサリスを見て妬き、下の口で咥えこんでしまった。

 俺もやられっぱなしは性に合わない為、3人に反撃を開始して、3人とも果てさせた所で朝の一戦は終わりを告げた。

 シャワーを浴びて、水奈とフィサリスは子供達の部屋へと向かった。穂乃香と俺は客間へと向かう。

 因みに子供部屋に向かうのが穂乃香では無く水奈なのは、結衣香が穂乃香より水奈に懐いているからである。頑張れ穂乃香、実母だろう。

 と言う俺も煌輝からは懐かれていない……父さん悲しいよ、何がそんなに気にくわないんだ。

 母さんやリノ姉を俺が取るからか? 母さんは俺のだ、それは譲ってやらん。

 そして実の娘からライバル認定された母と、実の息子からライバル認定された父は客間へとたどり着いた。

 客間で寝ていた筈の暗殺者……ピアニーは自身の首や胸に刃物を突き立てようとしていた。

 

「何故……!? 何故自決が出来ないのです……! 覚悟は決まっているのに!」

「――そりゃ俺が命じただろ。この町の者に手を出すな、と。俺の奴隷になったお前もこの町の住民だ。よって手を出す事は許されない」

「――……くっ! 殺しなさい!」

「従僕が主に命令するな。そして断る、折角の臣下候補をやすやすと殺して堪るか。俺に出くわしたのが運のツキだ、せいぜい扱き使ってやる」


 悔しそうに俺を睨むピアニーに対し、不敵に笑みを浮かべる。

 グラジオラスが反発心を無くして忠臣になってしまった今、俺に対し敵対心を持つ奴が居なくなってたんだ。丁度良かった。

 

「あぁ……悪者を演じる氷君も素敵……!」

「お前はホント、ブレねぇな……」

「……女性を3人も誑かすケダモノめ! 誰が臣下などになるものです……か…………」

「――オマエ今、氷君を馬鹿にした……?」「落ち着け穂乃香」


 ほら、殺気を鎮めなさい。怖がって話が出来なくなってしまうでしょ。


「――さて、パープルニアの王宮の影、ピアニー。俺の臣下にならないと言うならお前の母国パープルニアに報復に行くだけだが……どうする?」

「――! 私はパープルニアの人間では無い! この国紋を見なさい!」

「ああ、お前の持つ国紋はブルーゼムの物だ。だがそれはお前の国の物では無い。そんな単純な罠に引っかかるとでも思ったか?」

「何を根拠に私をパープルニアの人間だと決めつけるのです!」

「ザウル辺境伯次女カトレア。7才にしてお家騒動に巻き込まれ亡命し、名をピアニーに改める。保護してくれたアーメルト子爵家の当主に元々持っていた素質を見抜かれ、暗殺者となる。そして暗殺者として成長し、子爵の属する派閥のトップ、グラムス公爵家の目に止まり、王宮に雇われる。そして今回王命によって俺の下に来たわけだ……波乱万丈の人生だな」

「――――――――――」

「何故知ってるのかって顔だな。そういうスキルなんだ、お前の知ってる事で、俺に知らない事は無い」


 口を割る割らないなんて問答、俺の前では無意味だ。

 俺に関係あるのは知ってるのか、知らないのか。ただそれだけだ。

 

「……私は……私は売国奴になってしまったのですか…………」

「いや、お前がと言うより国王が無能だっただけだな。俺のスキルの有効範囲は大国一つ分に匹敵する。お前が派遣されてこの町に入り込む前から全て俺の情報となっていた」

「全て手の平の上…………なんて理不尽なんでしょう……」


 喧嘩を売る相手を間違えたな。優秀な暗殺者だとしても、俺の睡眠中に千里眼の範囲外から襲って来ない事には話にならない。

 

「で? 氷君、こいつ氷君を殺そうとして来たんだよね? 殺していい?」

「駄目だ。臣下にするって言ってるだろ、折角の透視スキル持ちなんだぞ」


 人を殺すなっていつも言ってるでしょ、メッ!

 

「透視? 氷君とお揃い……ムカつく……」

「お揃い……? 貴方も透視の目を……?」

「ああ、俺も透視のスキルを持っている」

「変態です」

「盛大なブーメランだな」


 そういう目的で使うから変態扱いなんだろうが。

 透視は空間魔法との相性が良い。遠距離の転移は知ってる場所でないと木や建物、土の中に埋まってしまう場合がある。だから転移は基本的に視界に入る範囲で行われる。

 俺は千里眼で遠くまで移動してるが、フィサリスは座標を記憶してるマジもんの天才だ。穂乃香は感覚だが外れなく移動してるバグ。キチンと視界の先を飛んでいるリノが正しい。

 ピアニーは俺の家の構造は知らなかったが、透視で見る事で問題なく侵入が出来た。

 これに暗殺術と投剣術まで身につけてるんだ、優秀だろう。俺が相手でなければ。

 

「私は……! 私は変態ではありませんっ!」

「ああ、スキルで蔑まれてきた事も知ってる。安心しろこの町でそんな事は起きない。何故なら透視スキルを蔑む行為はイコールで俺を蔑む行為だからだ」


 これはラミウムの心眼も同じだ。ラミウムの心眼を蔑む奴はイコールで俺の敵である。その喧嘩、高く買ってやるぞ。

 

「そんな事起きないって……そんな訳無いじゃないですか……女性である私ですら沢山言われてきたのです。男性の貴方が……」

「――この町の住民の中でな、町長である俺に纏わる3つ言葉がある。一つ、町長に逆らってはならない。一つ、悪事も善行も全て町長が見て知っている。一つ、町長を異性に数えてはならない」


 最初の1つ目は主に冒険者達と勇者達だな。畏怖の象徴扱いだ。

 2つ目は移民達だな。悪事を働けば確実にバレる。良い事をした奴には礼を言ったり、内容次第では褒賞を出してるからな。良い事をしようと言う住民達の戒めだ。

 3つ目は未婚既婚拘らず女性達だな。俺は相手の全てを知ることが出来る。責任を取れなんて言われたら、未婚の女性であれば誰でも俺の妻に成れる事になってしまう。

 売れ残った未婚女性の最終到着地点みたいな扱いされても困る。

 そういうのは受け付けない。玉の輿目当ても受け入れない。受け入れたら水奈や穂乃香、フィサリスがそれと同格扱いになるからだ。

 最近は俺に知られてるのは当然だから気にしない……みたいな風潮が出来つつある。

 ラミウムやミラは完全にそれである。神奈もそれっぽくなって来た。俺に対し羞恥心を持ってるのはアイリスぐらいである。

 ……なんかさ、俺の扱いがお天道様みたいだよね……

 

「この町に住む者の人生……恥ずかしい思い出や黒歴史、普段風呂で見る自分の裸体、してる奴は自慰や性行為まで全て知ってる相手に対し、反応するだけ無駄と言う考えの者ばかりだ。なんなら俺が知ってるからって相談までしてくる奴も居るんだ、男だけじゃなく女でもな」


 最近妻に、夫に満足して貰えてる気がしない。だから攻めるポイントや、興奮させれる格好の質問をされる。本人に聞けと言ってやりたいが本気で悩んでるのが分かるからちゃんとアドバイスはする。

 胸が小さくて大きくならないとか、息子が小さくて長くならないとか相談されてもだな……個人差はあるだろ、ホルモンを促せ。

 異性に数えないと言いつつ、俺が常に見ているという意識から、自身の身体や身だしなみに気を遣い始めた女性が多いのも事実だ。見られているという意識は人を綺麗にする。

 ただ自慰の時に俺に見られてるって意識して高めるのは止めて欲しい。全力で見ない様にする。

 

「透視持ちが1人増えた所で、それも女性だってなら別に問題ないだろ。女性は町に居るだけで俺に全て知られるのに、男共はその時の裸をピアニー見られるかもしれない……ぐらいで済むんだから。むしろ見てくれって変態が出るかもしれないから気を付けろよ」


 某高橋とか。あいつの守備範囲は広すぎる。

 

「あ、当然悪用しようとすれば俺が分かるからな。欲望に走るなよ」

「走りません! …………異常ですね、それが受け入れられてるなんて…………」

「始まりはアイリスだが、俺が存在する上で作られた町だ。俺の存在を受け入れられないなら他を当たれと言うだけの話だ」


 元々は俺の奴隷達だけで、冒険者達が魔族を嫌がるなら日坂達は置いて来る予定だった。それが今では町になった……ゆくゆくは国になるだろう。

 

「…………死なさせては貰えないのですね」

「駄目だ。俺の臣下になれ。優秀且つ透視持ちを死なせなどしない」

「……私が貴方を受け入れないと言ったら?」

「俺の目の間で潮吹いて失神したんだ。それ以上に恥ずかしい事なんて無いだろ」

「わ、忘れて下さいっ! デリカシーが足りないのではありませんかっ!?」


 初対面で血走った目で股間を凝視し、求めたんだ。それ以上の辱めなんて無いだろ。

 いやー……水奈の恐ろしさよ。

 

「うぅぅうううううう! 暗殺者としてだけでは無く、女性としてももう終わりを迎えました! 死なさせて下さい! いっそ殺して下さい!」

「駄目だ。俺の臣下になれ」


 ピアニーは項垂れている。うむ、八つ当たりは十分果たされた。


「…………暴君ですね…………祖国には手を出さないで下さいますか……?」

「パープルニアから仕掛けて来なければな。俺だってむやみやたらに争いたい訳じゃ無い。火の粉が降りかかるから払うだけだ。ウザかった場合は滅ぼしてやるだけだ」

「………………不安しかないですね……陛下……どうかこの町に攻撃しないで下さい……」


 こうして臣下候補を手に入れた。

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