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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
277/346

――クリスマス――

季節物書きました。前回の続きは別に書きます。

 それは気温の低いある日の事。

 人間族領の最北端に位置するブライトタウンに雪が降った。

 ブライトタウンは人間族領の最北端であると同時に、魔人族領の最南端でもある。

 ブライトタウンでも雪が降るのであれば、魔人族領は大雪なのでは? と思うかもしれない。

 だが、違う。魔人族領の最北端とブライトタウンの気温はそう変わらない。これは人間族領の最南端もである。

 魔人族領の最北端からブライトタウンまでの中心が暖かく、人間族領の最南端とブライトタウンまでの中心もまた暖かい。なんて事は無い、惑星は丸いと言うだけの話だ。

 この世界の人々がそれを知らないのは、最南端と最北端の間の海に神話級の化け物がうじゃうじゃしているからである。

 あれを渡り切るのは俺か日坂でもない限り難しいだろう。

 東と西の間の海も天候の荒れが酷く、航海手段が無い為、その先の土地が地図上の反対側である事を知らない。

 教えて上げても良いが、夢の国があるという説が広まり、子供達やロマンな大人達の夢ともなっている為、言い出すのは躊躇われる。

 雪が降ったと大はしゃぎするリノと結衣香を微笑ましく見ていたのだが、何やら水奈と穂乃香もはしゃいでいるようだ。

 

「お兄ちゃん!」

「氷君! 見て見て! サンタさん!」


 そこには真っ赤なミニスカサンタ服を着た水奈と、真っ黒なミニスカサンタ服を着た穂乃香が居た。

 可愛過ぎか……ただ、一つ訪ねたい。


「なあ、足寒くないか?」

「「凄く寒い」」


 タイツぐらい履け……なんで生足なんだよ。

 

「ねぇ~ご主人様~。確かにこの格好可愛いんだけど……サンタって何?」


 真っ白なミニスカサンタ服を着たフィサリスが現れた。

 元々白っぽい銀色の髪に、肌の白いフィサリスがそんな恰好するとだ。

 

「雪の妖精みたいだな」

「サンタって雪の妖精なの?」

「あーいや。サンタがじゃ無くて、お前がだ」

「私が……――妖精!?」


 不意打ちで褒められるのに弱いフィサリスは、ドンドン顔が赤くなっていく。

 それ以外が白いから余計に目立つな。愛い奴め。

 

「む……氷君! 私は? 私の見て感想は!?」

「黒のサンタ服がお前ほど似合う奴は居ないだろうな。可愛さの中に大人の色気もあって素晴らしい」


 黒いサンタは悪い子を連れ去るんだっけか。穂乃香が子供達にプレゼントを渡すところとか想像できないし、役割としてはそれでいいと思う。

 水奈はめっちゃ配ってそう。

 

「お兄ちゃん……私は……?」

「王道此処に極まり。その格好で信者達の前に出るんじゃないぞ、悶え死した死体と噴き出した血の海になる」

「どういう事っ!? 信者って何!?」


 黒サンタより恐ろしい水奈サンタである。

 ホワイトクリスマスがいつの間にかブラッドクリスマスに変わってしまう。

 けれどもみんな幸せな表情をしていると言う……これが宗教の恐ろしさだ。

 

「で、なんでまたクリスマスの格好してんだ?」

「こっちでクリスマスって無いでしょ? 折角サンタコス作ったのに、使う機会が夜しか無いんだもん」


 そりゃ、この世界にキリスト教無いし。

 聖夜の服が性夜にしか使われてないって? 性夜はまた別に、布面積がもっと減ったサンタ服着てたじゃん。南半球版の。

 

「氷君にも作ったんだよ? ハイこれ!」

「…………」


 …………俺がトナカイするの?

 

 

 

 サンタを乗せたソリは孤児院へと向けて移動している。

 ソリは錬金術で作った物、トナカイも錬金術で作ったもの。

 俺? 来てないよ。 流石にトナカイは無理ですと言ったら、サンタの格好で許して貰えた。仮にも町の代表がさ、トナカイは無いでしょ……

 白髭に白眉を付けて、服も軽く膨らませてある。本格的サンタだ。

 子供達のプレゼントも用意した。別にクリスマスでは無いけど、雪降ったし、水奈たちも乗り気だしな。

 

「で、結局サンタさんってなんなの?」

「サンタ……正式名サンタクロース。それは煙突から家へと侵入し、炎が燃え盛る釜戸の中を潜ってでも、子供達にプレゼントを届けたいと言う強き意思を持った――小太り爺さんだ」

「え、そのお爺さんヤバくない?」

「お兄ちゃん、変な風に教えないでよ」

「間違っては無いだろ」


 サンタクロース……即ち、熱さ耐性にも寒さ耐性にも特化したエリートヒューマンである。

 さてそろそろ孤児院へと着く、着いてしまう……着くのかぁ……

 子供達は良いんだ、サンタもクリスマスも知らないから。

 でもアイリスとアマリリスが居るんだよ、孤児院は。

 星原に爆笑され、院長には温かい目で見られる。未来視先生がそう言っている。

 ……はぁ……トナカイよりはマシか。

 

「「メリークリスマース!」」「……何メリーって?」「……そういう祭りなんだよ」


 キリストの誕生祭を楽しみましょうって話だけど……この世界にキリスト誕生してないし。

 

「みんなー! プレゼントあげるよ~!」

「わあぁ! いいの!?」「水奈お姉ちゃんの服可愛い~!」「ぼく、たんじょうびじゃないよ?」「ちょうちょうー! おひげ!」「町長……その格好どうしたんですかぁ?」

「……色々あったんだ、色々と」

「ボス、こりゃ一体なんの祭り事だ?」「あっひゃっひゃっひゃっ~~~! 氷河ちゃんサンタ似合わなすぎ~~~!!!」「クリスマス……? なんでみんなサンタの格好してるの?」

「穂乃香と水奈の思い付きに付き合ってるんだ。特に深い意味は無い」


 小さい子供達はやっぱり水奈に群がって行くか。年上の女の子は神秘性を感じる美しさのフィサリスに、年上の男の子は女性の色気が強い穂乃香に視線を集めている。

 色付くのは結構だが、穂乃香は俺のだ。あまり淫らな視線を向けるんじゃねぇぞ。

 

「町長ーこれ中どうなってるの?」

「綿を詰めたんだよ。ぶっちゃけ熱い」

「ちょーちょーふかふかー」


 俺を指さして爆笑するアマリリスを、外に連れ出して雪だるまにしてやろうかと思い始めた頃、プレゼントを配り終わった様だ。

 

「いいか。今後も良い子にして、お手伝いを頑張った者にまたプレゼントをやる。院長の言う事をちゃんと聞くんだぞ?」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」

「プレゼントまで、わざわざありがとね」

「まあ、なんだ。石像を置かせて貰ってる礼みたいなもんだ」


 穂乃香作の俺の像。

 時折ほたるやマリンが謎の祈りを捧げている。どこに届くんだその祈りは。

 それを真似して子供達や、町の住民達まで祈りを捧げる者が出始める始末だ。

 別にご利益は無いぞ。そして腕の配置の意味を知って、お姫様抱っこされてみたいと、乗ってみる者も居る。

 ミラが『おぉ……』と言いながら嵌ってるのをアイリスがうずうずと見ていた。

 院長……言えば、それぐらいならしてやるよ……

 

「さて……水奈、穂乃香。満足したか?」

「氷君、プレゼントはまだ残ってるよ」

「町の子供達にも配らないとだよね!」


 …………町にも行くの……?

 

 

 

 

 

 どっと疲れた……子供連れの家は全て……ロータスの所にも行って来た。

 まあ、良かった事もある。町の者達……特に冒険者達から怖いイメージを持たれていた俺の印象が、少し和らいだ様だ。

 だからと言って、気軽に話しかけれる様では無いみたいだが、少しでも距離が縮まったのなら今回のイベントは行って良かったのだろう。

 少しでも石像への崇拝者が減ってくれるのであれば、大変嬉しい。

 町の宗教は水奈教だと言っているだろう、俺を神体とする違う宗教を確立するんじゃない。

 合併して月島教とかになったらどうしよう……俺の像の横に水奈の像が立つかもしれない。

 ……氷河教たるモノはどうにか食い止めなければ……筆頭のマリンとほたるに自重させねないと。そしてどうにかこの宗教について穂乃香から隠し通さねば。

 穂乃香に肯定されたら、俺の手からは消せなくなってしまう。あいつは妻となった今もなお俺を神聖視してるからな……崇めるのは水奈だけでよい。

 そんな事もあったが、家へと帰り付き、うちの子達にもプレゼントを上げる事にした。

 煌輝にはおもちゃの剣をプレゼントした。魔法特化のステータスを持つ煌輝だが、魔剣術を使えるようになれば、俺と同じく接近戦も出来る様になるだろう。魔法主体の戦いを選ぶならそれはそれでも構わないが、俺としては息子に俺と同じく剣を取って欲しいと思う。稽古も俺が出来るなら付けてやりたい……武術系なら制覇してるからなんだって教えてやれる筈だ。

 結衣香にはリボンのカチューシャをプレゼントした。これが似合って可愛いんだ。

 もう、お洒落を気にし始める年頃だからな。可愛いものが欲しいし、可愛いものを身につけたいだろう。可愛いお手本である水奈が居るから、結衣香はどんどん水奈の姿を見て吸収している。穂乃香は水奈を見て、表情の作り方を覚えていたから、親子って似るものだなと思った。

 そして――

 

「リノにはこれだ」

「……メイク?」


 子供用メイクアップセット。肌を傷つけない物だ。

 リノにはまだメイクは不必要だが、リノは賢く精神年齢も少し高い。

 お姉ちゃんになった事や、戦闘に参加した事でより大人へと成長して来ている。

 子供な部分は捨てずに居て欲しいが、大人な面も尊重して行かねばならない。

 15歳になって成人する頃には、立派なレディーとして振る舞えるようにするためにも、ぶっきちょなリノに今のうちにメイクを教えておこうと思う。

 

「じっとしてろよ」

「ん…………」


 一回目なので、まずはメイクをした場合どのぐらい変わるのかを、目で見て知ってもらう。

 パパはメイクにしたってプロだ、任せなさい。

 肌は元々きめ細かく、色白なため特に触れない。眉毛を整えて、睫毛をクリンとカーブさせる。アイシャドウを入れて立体感を持たせ、ほんのりチークと淡いリップを塗る。

 

「……できたぞリノ、鏡見てみろ」

「おー……」

「リノおねちゃん、きれー!」

「おー!」


 お! 珍しく煌輝が俺によくやったと告げている。

 そうだろう、パパよくやっただろ。そしてリノ姉ちゃん綺麗だろ?


「お兄ちゃん何でもできるよね、ホントに」

「ご主人様~、こんど私にもメイクしてよ」

「他国に会談しに行く事があればな。そうじゃ無ければする必要ないだろ、十分綺麗だ」

「――! ふ、不意打ち止めてくれないかな……ご主人様は分かってするんだからホントにもう…………」


 俺はフィサリスだけでなく、水奈や穂乃香、もちろんリノにだってメイクはあまり必要ないと思う。

 

「リノ、お前もメイクをしなくたって綺麗だ。だけどな、お前が成人して大人になった時必ず必要になる。なんたってお前は姫様になるんだからな」

「王妃」

「はいはい」

「氷君、それどういう話???」

「何てことは無い――未来の話だ」

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