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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
273/346

警告

 始まりは3年前、うちの冒険者達にちょっかいを出し、当時100人程しか居なかったうちの村に200人で攻め込もうとしていた。

 それを俺と日坂の2人で叩き潰し、俺は殺す気でいたが、悉く日坂に邪魔され、結局死人は出なかった。

 代わりに参加した200人の住居地を一つ一つ回って、次舐めた真似したら領地ごと滅ぼしてやると警告をした。

 大方はそれで黙ったが、黙らなかったのがレッドリアだ。

 魔族を悪魔として扱う宗教上、魔族と人間との共存なんて例があると、信仰自体が揺らぎかねないレッドリアは、国家ぐるみでうちの村を襲った。

 それが去年。当時3000人程だったうちの村に3000人の兵で押し寄せた。しかも俺の不在を狙ってだ。

 忠告を無視し、戦を仕掛けて来た教皇及び、神官共にはもれなく死んでもらった。

 仕掛けては来た……しかし命令を出したのは上層部で会って、末端や国民に罪は無い。

 そう考えた俺は、国民に向けて警告をした。次また手を出そうものなら国を更地にしてやると。

 その警告を聞いて、従う様呼びかける者や、他国へ逃亡する者も居た……が、そうならなかった者も居た。

 そうして今年、1万人が暮らすブライトタウンに3万人の兵が向かう事になった。

 警告を聞いたにも限らず攻めて来た信者共には、もれなく全員死んでもらった。

 だが、国同士の結び付きで、義理を果たすために参加した他国の兵達に罪は無い。

 そう考えた俺は、幹部たちに被害は最小限に抑える様に命令した。

 

「――レッドリアはもう、次は止めなかった者も同罪として、国ごと地図から消してやるつもりだ……さて、皇帝陛下殿。未来の話をしようか」

「……そ、それはつまり……」

「――警告だ。和平を反故し、敵対しようものなら――ホワイトールは帝国では無くなり、隣国のブルーゼムの一部になるかもな」

 

 今回の戦いでマグオートと言う戦力を投入したブルーゼム王国は、ブライトタウンとの同盟国の中でも特に発言力は大きくなるだろう。戦勝国みたいなもんだ。

 あの国王に勝ち馬に乗られた気分で、あまり良くは無いけどな。

 因みに友好国では無く同盟国だ。仲良くは無い。利害が一致しただけだ。

 うちの町がまだ自治州である以上、ラミウム、ロータス、フィサリスは国籍上ブルーゼムだからな。マグオートも含めると戦場を駆け回った10人中4人だ。功績はデカい。

 まあ、功績内容で言ってしまえば、俺と日坂が圧倒的だけどな。

 ……俺を危険分子と判断するか。間違っては無いな。

 そっちが仕掛けてこない限り、こっちは全く興味無いんだけどな。逆らえなくなる=無理難題を吹っ掛けられると考えるのは人間の性か……――! ……アホが居る。

 穂乃香が居ないだけまだマシだが……にしても不味いな。

 ……ラミウム。

 

(畏まりました――)

「――『サモン』」

「――え? ご主人さ――――」


 目の前に呼び寄せたフィサリスに、唇を重ね合わせて口を塞ぐ。

 

「――――こやつが生きてる限り! 我が国に未来は無いっ!!!」


 アマリリスの腹を刺した空間魔法使いが、俺の背後から心臓目掛けて剣を突き出す。

 突き出された剣を、ラミウムの放ったサンドアローが弾き飛ばす。

 

「なっ……!」

「――動くな」


 空間魔法使いの首筋に神奈の刀が添えられる。

 そして神奈を除く、敵の全方位を囲むようにアイリスのナイフが浮かび上がる。

 この間わずか3秒。

 神奈は弓を構えたラミウムに反応して来たが、アイリスは反射的に囲んだな。

 ただ……今回は失策だったな。神奈の刀だけならどうにか出来たが、アイリスのナイフは隠しきれない。

 ナイフを視界の端に捉え、理由を察したフィサリスの殺気がこの場を覆い尽くす。

 ……口塞いでなきゃ、間違いなく殺してたな。

 ……ってなんで魔法が発動してんだ……詠唱は出来な――この土壇場で無詠唱スキル開眼しやがったのかっ!

 仕方ねぇ。俺とキスしてんのに敵に意識を向けるなんて、俺が許さない。俺だけを見ろ。

 

「――! ~~~!」


 舌でフィサリスの口内を蹂躙する。殺気が一時的に霧散していく。

 ……少しは落ち着いたか?

 

「――……落ち着け」

「――ご主人様……あいつ殺して良い?」


 落ち着いてないな……穂乃香に負けず劣らず、こいつも俺の事大好き過ぎるんだよな。

 殺気も覆い尽くすほど溢れ出てはいないが、抑えようとして鋭さが増している。

 周りを見渡すと特にブチギレてるのがフィサリスと言うだけで、神奈やアイリスも中々だ。グラジオラスがキレてるのはレアだぞ、俺の奴隷になる前以来だ。

 

「つ、月島殿! こ、これは違うのです! とんだご無礼を――」

「――皇帝陛下殿。勘違いして頂きたく無いんだが……俺らが和平を望んでる訳じゃねぇんだぞ? そっちが和平を望むのなら、受け入れてやっても良いと言うだけだ……そっちが戦いを望むのであれば……」


 日坂が剣を、神奈が刀を、ラミウムが弓を、フィサリスが杖を、ロータスが槍を、アイリスが短剣を、アマリリスが大鎌を、グラジオラスが斧槍を構える。


「――徹底抗戦もやぶさかでは無いぞ」


 さて、いかがしますか。皇帝陛下殿。


「――皆の者! 直ちに武器を捨てよ! 捨てぬ者は一族共に処刑する!」


 皇帝は兵士たちに武器を捨てさせ、そして俺に頭を垂れた。

 

「私の首を差し出します……どうかお怒りを収め下さいませ……そして我が国と和平を結んではいただけませんでしょうか」

「お前の首などいらん。が、和平は結んでやろう。但し、さっきも言ったが……次は無いぞ」

「……寛大なるご慈悲、感謝いたします……」


 皇帝に頭を下げさせる……まるで俺が魔王の様だが、俺は何も悪い事していない。

 

 

 

 

 

 戦争は終わった。穂乃香を召喚してさっさと帰りたい所ではあるんだが、埋めて来た兵士を掘り出してやらないと、ホワイトールの城はしばらく阿鼻叫喚のままだ。

 仕方ないのでホワイトールの城まで穂乃香を迎えに行く事にした。

 穂乃香を迎えに来たんだが……

 

「……穂乃香、なんだそれは」

「あ、氷君! 見て見て! 氷君像!」


 石を削って作り上げられたリアルな石像があった。

 なぁ、星原が美空奏の身体をコピーにしてる時も同じ事を思ったんだが、なんで鑑定がある訳でも無いのに寸分狂いなく正確な形に作れるんだ……?

 お前ら2人がバグである条件なのか?

 

「どう~? 力作でしょ!? する事無くて暇だったから作ったの!」


 フード付きローブに閉じられた左目、腰に下げた2本の剣に、義手まで再現したのか。

 

「最近氷君が付けてくれない眼鏡も装着可能だよ!」

「…………この腕の配置は?」

「此処に乗るとね……ほら! お姫様抱っこして貰えるの!」


 腕にすっぽりと穂乃香が収まり、石像が穂乃香を抱っこする形になっている。

 ………………………………

 

「『サモン』」

「きゃっ! 氷君……」

「『トルネード』」

「あ! ダメ!」


 召喚術で引き寄せた穂乃香をお姫様抱っこし、石像を破壊しに掛かる。

 が、穂乃香の無詠唱で放たれたブリザードストリームに防がれてしまった。

 

「氷君! なんで壊そうとするの!?」

「穂乃香……お前が欲するのは俺の形をした石像か? それとも俺本人か?」

「氷君!」

「じゃあ、要らないだろ。お前には俺が居るんだから」


 石像の分際で俺から穂乃香を奪うなど許さん。穂乃香をお姫様抱っこするなどもっと許さん。

 

「え~……折角力作だったのに……町のシンボルとして飾っちゃダメ?」

「…………お前は観光客たちが、俺の石像に抱っこされる姿が見たいのか?」

「我が家に飾ろう!」


 もっと意味分かんねぇだろ。なんで自分の家に自分の像があるんだよ。

 来客者もビックリだわ。俺がナルシストみたいじゃん。

 

「却下だ」

「じゃあ! 人の手には触れられないとこに飾るのはどう? 教会のマリア像みたいな!」


 うちの町に教会は無い。あるのは孤児院だけだ。

 手に触れられないで言えば、噴水の中央とかある事にはあるが、自分の形した石像が風化したり、鳥のフンとか付けられたらそれはそれで嫌だ。

 可能なら今この場で破壊しておきたい。

 が、穂乃香は仮にも俺の形をした物が壊れる所を見たくない様だ……まず作らないで欲しいんだが……仕方ないな。

 

「分かった……孤児院の一角に置かせて貰おう」

「――! ほんと!? やったー! 氷君大好きっ!」


 石像が、孤児院と俺の関わりが深いと言う象徴になれば、観光客達が孤児院の子供達を下に見る事は無いだろう。

 富裕層には割と居るんだ、親無しと見下す奴。孤児院って他の国だと援助金を貰っていたりするから、寄生虫扱いする奴も居る。

 うちは子供達が働いて普通に稼いでるけどな。よそ者によってうちの子供達が、不快な思いをさせられるのは我慢ならない。

 今のところはグラジオラスが何とかしてるが、もっと孤児院との結び付きが深いって事を押して行かないとな。

 

「ただし穂乃香。お前今日、分身体6人攻めの刑な」

「6人!? え、氷君は?」

「俺は総大将を頑張ったであろう水奈と、フィサリスの相手をする」

「えぇ~……氷君の分身6人も魅力的だけど、氷君本人が無いのはイヤ!」


 魅力的なのかよ……お前の愛ってレベルが高過ぎて時々怖くなるわ。

 6人……前、後ろ、口と胸が左、右で……後は弱点の耳裏や太腿を攻めるか。

 フィサリスも落ち着いた今、俺のキスを思い出して、乗り気だからな。

 俺は鑑定と透視で弱点ポイントが見抜ける上、相手のして欲しい事も分かるし、経験値も違うからな。マンネリ化などさせない。いつだって求められている以上に応えれる様務めている。特に水奈がシアドに傾くなんて事が無いように、全身全霊をもって妻たちを愛している。……穂乃香の相手は中々大変だけどな……体力的に。

 

「じゃあ2人の後にな」

「んふふ……6人相手でヘロヘロになった所に来るんだぁ……氷君の鬼畜~」


 穂乃香が嬉しそうに俺へと擦り寄って来る。

 何がヘロヘロだ、出来上がった所の間違いだろ。6人でへばる玉かよ。

 穂乃香が空間収納に石像を仕舞う。さて、帰るか。

 ……あ。兵士掘り出しに来たんだった。

リノ人形を作った人のお言葉とは思えません。

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