伴侶
水奈ってフィサリスさんに嫉妬してんだなぁ……お兄さんでは無く穂乃香的な意味で。
「神奈ちゃん、服って……?」
「あ、いや……えっとですね……穂乃香の趣味で作ってる服があるんですよ……ほとんどは水奈に着せる為に作られたんですけど……本人やフィサリスさん……あと何故だか私の分まであるんです……」
本当に……なんで穂乃香は私のまで作ってるんだろう……
って水奈、飲み過ぎ……ちょっと止めた方が良いかな。
「――この宝箱ってなんですかー?」
「宝箱……って弥生ちゃん! それ開けちゃ駄目!」
なんであの箱が水奈の部屋に!?
「これ……服――ってエロっ!? え!? えぇぇえええ!?」
「ちょっと水奈! あれなんで穂乃香の部屋じゃ無くて水奈の部屋にあるの!?」
「……んぅ? だって、ゆいかちゃんがねむるへやに、おけるわけないじゃん」
尤もだ……! 見せた所で理解できないとはいえ、見せて良い理由にはならない!
「こ、こここれって氷河先輩の趣味……なんですかっ!?」
「いや……それが穂乃香の趣味の服……お兄さんの趣味って言うより穂乃香の趣味」
「穂乃香ちゃんこんな服つくってたんだね……この中に神奈ちゃん用の服も?」
弥生ちゃんと美空先輩がどんどん服を漁って行く……止まれ酔っ払い達。
水奈に至っては呂律が怪しくなって来てるし……どうしようこれ……
「これ隠すべきとこ隠れてないし……これ服かどうかも怪しい……」
「これも……ん? この棒何でしょう……――」
「「「………………」」」
「――……みみみみみ水奈! 何アレ!? あんなのあるとか聞いてないんだけどっ!?」
「あ、それいつもほのかとつかうやつ……たまにおししょうさまともつかう」
使ってるの!? 穂乃香とはいつも!?
もう2人とも顔真っ赤で弥生ちゃんに関しては、握ったままどうしたら良いのか分からなくてプルプルしてるじゃん。
「そ、相当細かく作り込まれてるみたいなんですけど……ほ、本物ってこんな感じなんですかね?」
「私に聞かないでよ……」
「神奈ちゃんっ!」
「え、えっと……まあ、そうですね……」
ちょっと大きいけど……リアルと言うか……リアル過ぎると言うか…………
「ね、ねぇ水奈……あれってまさか……」
「ぅん? おにいちゃんのだよぅ」
「「「………………」」」
うぁあぁ……これはちょっと……知りたくなかったかも。
と言うかお兄さんドンマイ……お兄さんの可哀想な所って、コレ知りたくなくても知っちゃうところだよね。知らない方が幸せに済むのに。
「……か、か、か、家宝にします!」
「何言ってるの弥生ちゃん!?」
「……不可抗力で月島君の見てしまった……けど、考え方を変えたら、彼はいつでも……透視を使えばリアルタイムで見れる訳だから、お相子……だよね!」
「奏先輩! 私は触ってしまったんですが、これは氷河先輩に触って貰わないとお相子にならないのでしょうか!?」
「……追体験がある筈だから、弥生が自分のに触れた事あるならお相子じゃない……?」
「じゃあ、触っても問題ありませんね!」
「それは問題あると思うよ!?」
駄目だ……弥生ちゃんが酔いで壊れてる……
「けれども弥生、月島君は意識的に見続けたり触ったりはしていないと思う! だから今すぐそれを元に戻しなさい!」
「す、すこし咥えて見てからでは駄目ですか」
「弥生!?」
「ちょっと待って弥生ちゃん! 冷静になって落ち着こう……それは洗ってあるとはいえ、水奈、穂乃香、フィサリスさんが使用したものなんだよ?」
「水奈ちゃん、穂乃香ちゃん、お母様…………大丈夫です! 行けます!」
何がっ!? 弥生ちゃんだいぶヤバい事口走ってるよ!?
ちょっと水奈……ってまだ飲んでる!?
「――! いい加減にしなさい、弥生!」
「良いじゃないですか本物ではありませんし! 生涯独身喪女の最後のチャンスかもしれないんです!」
「月島君は帰って来たら此処で起きた事全部知ってしまうのよ!?」
「知ってしまった後はもう2度とチャンスは訪れません! 今だけなんですっ!」
……2人とも引っ張るのに夢中で、顔の前でがっしり掴んでますけど……
どうしたら良いんだろう……流石に知人の形を触りたくはないしなぁ。
ていうか引っ張り過ぎて少し中間から壊れそうに……
「――おにいちゃんのこわしちゃだめっ!」
「ちょっ――!」「わっ――!」
「…………うわぁ……」
「……美空先輩……元気出して下さい……」
「……っ……っ……無理だよ……どうやって顔合わせたら良いのか分からないもん……っ」
「事故だって分かってくれます……お兄さんはこの程度の事で、距離を取る心の狭い人ではありませんって」
「かにゃでしぇんぱーい、ぎゅー」
泣く美空先輩、眠る弥生ちゃんと、甘える水奈。
べろんべろんになった水奈は美空先輩にも私にも甘える様になった。
これが可愛過ぎてちょっとヤバい……
ヤバいけど私までタガが外れたら、本当に収集が付かなくなるからどうにか耐えている……
私、なんでこんな疲れてるんだろう……
「んく、んく」
「ちょっと水奈! もう飲んじゃ駄目だって!」
「みしゅじゅ、んー――」
「――――!?」
口移しっ!? しかもこれアルコール度数高い奴っ!
これは……本気で……もう…………
「――――ぷはっ、えへへ~――おいしらった?」
「――――――水奈ぁぁあああ!!!」
……頭痛い……
痛いが我慢するしかあるまい……
久しぶりにちょっと孤児院の子供達と遊びたいなとか、フィア先生とお話しながらほのぼのしていたいと思いはするんだが……
フィア先生に現実逃避するなと言われてしまっては仕方ない。
いや、だって向かう先の選択肢、リノの部屋と水奈の部屋なら断然リノの部屋が平和でしょ。俺そっちに混ざりたいもん。
いや、来ましたけどね、水奈の部屋。
「「「「………………」」」」
「……とりあえず全員一ヶ月禁酒」
「「「「……はい」」」」
「ほたる、3日間うちの家出入り禁止」
「うえぇっ!? ……はぃ……」
「アイリス……俺は何も見なかった、お前も何も見なかった……良いな?」
「――! はい……っ」
「神奈……お前は頑張った……お疲れ」
「あぁ……はい、ありがとうございます……」
「水奈……――母親にはしてやる。ただ時期を少し待ってくれ」
「…………え……? お兄ちゃん……それって……」
教皇を殺した事で国は2つに割れた、保守派と、復讐派。
この復讐派が各国の教会に強力を募り、全面戦争するつもりでいる。
全部仕掛けてきてるのは向こうなのに、こちらが悪いみたいな扱い……
まあ、こっちが全滅すれば悪は滅びる、我々は正義と主張していたんだろうに。
自分達が滅ぼされたら奴らは悪だだもんな。自身を悪だとは感じてすらいない。
いや……でもどこで間違えたかな俺……教皇殺したのが不味かったのか……? それは遅かれ早かれだろう……アイリスを助けた事を間違っていたとは思わない。
戦争を回避するためにあの半年を受け入れたのに……戦争の大元になってんな俺。
「――……1年後、宗教の奴らと大々的に戦争になる。今は兵力集めに必死みたいだが、大体集まるのが1年後。こちらから攻撃すれば大義名分を与える事になる。あちらから仕掛けてくるまで待たなきゃならない。――その時に流石に俺が動けないのは不味いからな。戦争終わるまでは待ってくれ」
「え、戦争……? あ、ねぇお兄ちゃん……私がお兄ちゃんとの子供作る事は良いの……?」
「遺伝子的に危ないから一回きりな。水奈は俺の伴侶だ、俺以外との子を作るのは許さないぞ」
「……ありがとうお兄ちゃん!」




