限界
戦闘員組が帰って来た。
水奈の視界に俺が映る。
月島 水奈
恐怖度 100
帰り着き、俺を見てなお100だ。
……限界だな。
「水奈、ちょっと来い」
俺は水奈の手を引く。
「月島先輩、どこへ行かれるんですか? これから報告会です」
キタコレ学級委員が俺の行く手を遮る。
今はそれどころじゃねぇんだよ。
「俺は水奈に用があるんだ。お前じゃない、どけ」
「困ります。月島さんは学級委員でクラスの中心なんです。その月島さんに報告会を抜けられては――」
あぁ、話が分かんねぇ奴だな……!
「どけ!」
「……っ!」
俺の威圧にたじろんでいる間に、水奈を連れて部屋へと向かう。
「……鑑定のくせに調子乗りやがって」
非戦闘員組の男子の一人が、そう呟いたのが聞こえた。
俺の部屋に水奈を連れてきた。
住み始めて5日、こんなんでも一応俺の部屋だからな。
水奈の好きな匂いと一致するのかは分からねぇけど、使えるもんは部屋でも使おう。
「水奈大丈夫か?」
「お兄ちゃん……どうしてあんな事したの……?」
月島 水奈
恐怖度 100
憤怒度 50
水奈はクラスメイトに対し威圧した事を怒ってるらしい。
「あんな事したら、お兄ちゃんがみんなから嫌われちゃうじゃん! ただでさえ今、男子から評判悪いのに!」
「そんな事よりお前の方が大事だからに決まってるだろ」
俺が嫌われるのと水奈が崩壊するの、迷う余地なんて無いだろ。
「……ずるいよ……そんな事言われたら……怒るに怒れないじゃん……!」
水奈は俺の胸で泣き出してしまった。
また泣かせてしまった……今日で二回目だ。
俺は水奈を優しく抱き締めて、泣き止むまで頭を撫で続けた。
あまり泣かせたくはない。でも涙と一緒に恐怖もストレスも流れて行くなら、
俺の胸で、うんと泣いてもらおう。
月島 水奈
恐怖度 70
泣き疲れ、目を真っ赤にした水奈は少し落ち着いたのか、報告会に戻ろうと言った。
水奈が言うならば仕方ない。戻るとするか。
部屋を出る直前、水奈に今日の夜も来てねとお願いされてしまった。
言われずとも行く予定だったが、俺に少し恥ずかしがりながらお願いする水奈は大変可愛かった。
うむ。良いものだ。水奈のこんな表情を見れただけでも大変満足である。
――例え報告会が、男子による俺への不満、愚痴り会になっていようとも。
一人の男子の呟きで始まり、俺と水奈が居なくなった報告会では、男子たちが思う存分俺に対する文句を言い合っていた。
一部の女子が俺に対するフォローや、男子へ反論するものも居たが、男子の溜まった鬱憤は止まらなかったようだ。
女子が俺の味方してるって? 違う違う。
確かに一部は俺に撫でられ隊もいるがそうじゃない。
如月 穂乃香
憤怒度 95
穂乃香が、綺麗な笑みを浮かべてブチ切れている。
そりゃ怖いだろ、俺だって怖い。
察しの良い女子がフォローに回る訳だ。
そして穂乃香を宥めている神奈が悲鳴を上げている。
必死に俺と水奈を呼んでいる。
まあ、待て今行く。