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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
245/346

誕生日

 という訳でリノの誕生日。

 炊き出しにはリノ好物である豚汁。

 猫まんまにして食べるのがリノのお気に入りである。

 それとは別に神奈特性はちみつレモンと、俺特性柿のフルーツアートがある。

 リノの好物盛り合わせである。

 

「では――せーの!」

「「「「「「「「「「「「「「「リノちゃんお誕生日おめでとう!」」」」」」」」」」」」」」」

「……ん…………ありがと」


 村長である俺の掛け声と共に誕生を祝う。

 この村は大体こうである。子供達や冒険者達はノリが良いからな。


「豚汁はお代わりあるからね~」

「「「「「「はーい!」」」」」」


 料理の固有スキルを持った女子生徒が、子供達に声を掛けている。

 炊き出しは大体こんな風景。誕生日祝いもよくやっている。

 

「……? リノちゃんどうしたの?」


 リノが院長の手を引いて来る。

 リノ……それはあまりオススメしないぞ……

 リノは院長を椅子に座らせるとその膝の上に座った……リノに話しかける事の出来ないアマリリスに見せつける様に。

 

「……月島君? これどんな意味があるの?」

「……昨日リノがアマリリスに泣かされたからな。見せつけてるんだろう」

「……僕、リノちゃんと話せないだけで、動けはするんだけど?」


 ほら寄って来た。あっち行けしっしっ。

 

「パパ、あーん」

「……食べさせろってか」


 ……まあ、誕生日だしな。

 ただ穂乃香やらフィサリスやらの視線が刺さって来るんだよ。

 穂乃香は食べさせて貰えるリノに嫉妬。リノに嫉妬するなっての。

 フィサリスはリノに座られてる院長に嫉妬。構図的には確かに親子っぽい構図だものな。

 フィサリスの膝上にリノなら納得だけど、今回はアマリリス攻撃がリノの目的なんだよなぁ……

 碌な事にならないから止めておいた方が良いって。

 

「あーん」

「はいはい」


 リノの口に猫まんまを乗せたスプーンを入れてやる。

 リノは美味しそうに咀嚼し、満足げにアマリリスを見る。

 そいつに喧嘩売るのは止めとけって。

 

「…………氷河ちゃん、僕も僕も」

「は? する訳無いだろ」


 子供の姿になったって駄目なものは駄目だ。こっちくんなしっしっ。

 リノ、アマリリスにドヤ顔するの止めなさい。こいつが暴走すると面倒くさいんだから。

 

「あーん」

「ほれ」


 俺に食べさせて貰うリノは大変幸せそうである。

 

「リノちゃん……私、食べれないけど……」


 膝の上に座られた院長は、豚汁にありつくことが出来ていない。

 まあ、下手に食べようとしてリノの頭に零す訳にもいかないしな。

 

「………………」


 アマリリスが喋れてないが、若干嬉しそうにリノへ向けて、『早く降りなよ、奏ちゃんが食べれないでしょ?』って顔をしている。

 

「パパ、あーん」

「ほれ」

「ちがう、アイリス」


 …………固まった。 この辺の空気……俺と院長、穂乃香とフィサリス、水奈、そしてアマリリスまでもが固まった。

 つまりあれか……? 俺が院長に食わせろってか……?

 いや、確かにそれなら院長も食べれるよ? 見た目年齢的にも19歳が13歳に食べさせる絵だからまあ、どうにか頑張ればギリギリ許容も出来るだろう。

 でもな……リノ……それは不味いんじゃないか?

 アマリリス攻撃には確かに有効だろう。でもそれ以上に他にもダメージが広がるが大丈夫か……?

 主に穂乃香とフィサリスの視線がヤバいって。

 

「パパ、あーん」

「……マジか」

「月島君……? 無理にしなくても……リノちゃんが食べ終わってから私――」

「――あーん!」


 リノ……どうしてもアマリリスに仕返したいか……

 ……分かった…………穂乃香とフィサリスには後で埋め合わせをしよう。

 

「……院長」

「へ……? むぐっ!?」


 院長の口へとスプーンを差し込んだ。

 リノの渾身のドヤ顔がアマリリスに向けられる。

 

「………………」

「星原……同情してやらんでもないが……――リノに何かしようとしたら、タダじゃおかないからな?」

「……氷河ちゃん、親バカ過ぎじゃない?」


 元はといえば昨日お前が泣かせたせいだし、リノが挑発したからって、お前が仕返していい理由にはならない。

 

「精神19の肉体25歳が、7歳相手にマジになるなよ、みっともない」

「パパ、あーん」

「はいはい」


 それからリノの指示により、俺はリノとアイリスを交互に食べさせてやった。

 顔を真っ赤にしたアイリスが、「私は、もうお腹いっぱいだから大丈夫」と断るまでそう時間は掛からなかった。中身19歳からしたら羞恥プレイもいいとこだもんな。

 そんな時、リノは俺のスプーンを掴んで受け取ると、更に爆弾を投下した。

 

「はいパパ、あーん」


 リノちゃん……そりゃあかん。

 

「パパ……嫌?」


 ぐっ……!

 

「パパ……リノ嫌い?」

「嫌いな訳あるか」

「あーん」

「…………」


 …………直前に食べたのはリノだ、院長では無い、リノなのだ!

 つまりこれは院長とでは無くリノとの関接……どっちにしろアウトじゃねぇか。

 ……考えるのは止めよう。間接キス程度でギャーギャー騒ぐのは純情な子供のする事だ。

 俺は19歳大人。食器をシェアしたぐらいで騒がない。友達や子供に一口分けるなんてよくある事だ。

 ……南無三!

 

「……んぐ」


 スプーンを持つリノは幸せそうに微笑んだ。ちくしょう良い笑顔しやがって。

 俺がこの短時間でどれだけ精神削れたと思っている。

 院長も顔赤くしないで。こっちまで恥ずかしくなって来るでしょ……純情か。

 だが、滅多に見る事の出来ないリノの綺麗な笑顔だ……それだけの価値はあった。

 今日分かった事……うちの娘はマジで恐ろしい。

 この後俺は穂乃香、フィサリス、水奈の3人にも食べさせる事となった。

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