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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
243/346

主従

 不本意ながらアマリリスが家に住む事になって2週間。

 穂乃香の出産予定まで後2週間。

 出来るだけ穂乃香の傍から離れたくない……そうは思いつつ俺は、フィサリスを連れて――デスラインに訪れていた。

 

「…………不安だ」


 俺の千里眼の範囲内に、村が映って無い事が不安だ。

 そんな村に、アマリリスが居ると言う事が不安だ。

 一応、アマリリスには穂乃香の半径1m圏内、腕が届く範囲に入る事を禁止している。

 魔法の使えないアマリリスにはどうしようも無い……筈。

 だが、しかし、不安だ。

 

「早いとこ捕まえて帰りたいね~」

「ああ、急ぐぞ」


 そう、そんな不安を抱えつつ、こんな所まで来たのには理由がある。

 明日、リノの誕生日なのだ。

 去年祝ってやれなかった俺とフィサリスは、リノに欲しいものが無いかと聞いた。

 リノはおもむろに大事によく読んでいるモンスター図鑑を取り出し、『ワンちゃん』と言ってケルベロスのページを見せてくれたのである。

 リノよ……どう頑張ってもケルベロスはワンとは鳴かない。

 だが、他ならぬリノの望みであるため、俺とフィサリスはいつぞやのリバイアサンを目撃したデスラインへとやって来たのだ。今日は雨が降っていないため、リバイアサンは海底深くに眠っている。

 

「と、居た居た」


 ケルベロス

 Lv 79

 HP 830/830

 MP 370/370

 

 別にデスラインにうじゃうじゃケルベロスが居る訳では無い。

 千里眼で特定しただけである。

 

「おい、お前。俺に従う気は無いか?」


 てめぇ何ほざいてんだ、あぁん!? と言わんばかりにケルベロスが吠えて来る。

 そうか……残念だ。なら――躾ける必要があるな。

 俺のお気に入りの技だ。左手を地面に付き、錬金術で地面を割る様に開く。

 地面にある土を全て細かくナイフの形に作り上げ、重力魔法で巻き上げる。

 投剣の龍。

 

「ご主人様派手だね~」

「もう一度聞く、ケルベロス……俺に従う気は無いか?」


 こ、こんなもんでビビるかよ! と言わんばかりに、さっきより少し弱めに吠えて来る。

 そうか……ならば実力行使だ。

 ナイフの山がケルベロスに飛来する。ケルベロスは持ち前の脚力を使ってそれを回避する。

 回避する先で待ち構えていた俺が、首元に蹴りを入れ、3つの頭に一回ずつ拳骨を入れて行く。これぞ肉弾矯正。

 目を回して倒れるケルベロスの目の前に浮いて姿を現し、目を合わせてもう一度訪ねる。

 

「最後のチャンスだ、ケルベロス……――俺に従う気は無いか?」


 わ、わかったよ……従うよ……と言わんばかりにケルベロスがくぅ~んと鳴いた。

 お前くぅ~んとも鳴けるのか。可愛いとこあるじゃないか。

 さて任務完了だ。早く帰――!

 

 ミノタウロス

 Lv 72

 HP 750/750

 MP 180/180

 

 ミノタウロス……いや、今お前は求めて無い。

 お? ケルベロスが動き始めた。従うと決めたからには義理は果たすってか?

 良い奴だな。でも、お前俺と戦ってダメージ追ってるんだから無理しなくていいぞ。

 

「フィサリス」

「はいはーい『プロミネンス』」


 ミノタウロスが一瞬で塵と化した。

 ん? どうしたケルベロスそんなに震えて。大丈夫だ、一緒に帰ろう。

 

『これはちょっと可哀想……大丈夫だよ~』


 フィアが元気づける様にケルベロスの目の前を飛んでいる。

 そういえばこのメンバーだけで動くのは久しぶりだな。もう1年か。

 

 

 

 この村に来て、氷河ちゃんの監視の目が無いのは初めてだなぁ。

 何かしようとしてもすぐ邪魔されちゃうんだもん。面白くない。

 

「ほたる、レモン食べたい」

「ちょっと待ってね~……あれ? もう在庫切れちゃったのかな……ちょっと待ってねリノちゃん! 神奈ちゃんに確認取って来る!」


 ん~……そういえばリノちゃんは明日誕生日だったかな?

 

「リノちゃんやっほー!」

「………………」

「懐いてくれななぁ……あ! ねぇリノちゃん! 明日誕生日なんだよね? リノちゃんのパパやママってどんな人だったの?」

「…………? パパはパパ、ママはママ」

「いやいや、確かに氷河ちゃんやフィサリスちゃんと親子ごっこはしてるけどさ? 本当のパパとママが居た筈でしょ?」


 氷河ちゃんが12で子供作った事になっちゃうよ?

 

「パパはパパ! ママはママ!」

「何言ってるのリノちゃん、氷河ちゃんもフィサリスちゃんも――君の本当のパパやママじゃないんだよ?」

「――――――止めて下さいっ!」


 突如に現れた水奈ちゃんがリノちゃんを抱き上げて、僕から距離をとった。

 急に一体何かな?

 

「水奈ちゃん、そんなに慌ててどうしたの?」

「……っ……リノちゃんを苛めないで、下さい……!」

「別に苛めて無いよ? 事実を話してただけで」


 ん~? 何か駄目だったのかなぁ……

 

「あ、ねぇ水奈ちゃん。水奈ちゃんはどうして今の立場にいるの?」

「…………今の、立場? ですか……?」

「そうそう。君と氷河ちゃんと穂乃香ちゃんの関係ってさ――君がいなければスッキリする話じゃない?」

「――――――――」

「氷河ちゃんと穂乃香ちゃんだけなら問題ない普通のカップルだけど、君が入る事によって近視相姦とか同性愛とか問題が生まれてるじゃない? ――どうして2人に甘えてるの?」

「…………わ…………わたし…………」

「『アイスカッター』っ!」


 僕と水奈ちゃんの間、僕よりに氷の刃が縦に飛んできた。

 

「危ないなぁ穂乃香ちゃん、何するの」

「私の水奈に近寄るなぁあっ!!!」


 穂乃香ちゃんが怒りながら僕と水奈ちゃんの間に割って入った。

 氷河ちゃんの命令によって、僕の身体が自然と穂乃香ちゃんから遠ざかる……これ気を付けないと僕が壁にめり込むかもしれない。

 妊婦さんだっていうのに、そんなに動いたら危ないよ?


「アマリリス様、お戯れはそこまででお願いします」

「ラミウムちゃんまで……僕は何もしてないよ?」

「ご冗談を。私のスキルを忘れて頂いては困ります。氷河様ほどではありませんが……アマリリス様が、水奈様に『一緒に住みたくない』と言わせて、奏様の下へ向かう口実を作ろうとしていた事ぐらい読み取れます」


 あらーバレちゃってる。厄介だね『心眼』スキル。

 でも、それってさ……つまり、口にする事無くセクハラとか色々出来るって事でもあるんだよね。

 

「――! 何を……っ……! …………っ…………」

「――私の愛しき姫君に……邪心を向けるのは止めて頂けませんか?」


 ロータスちゃんが僕の首に槍を添える。

 ヒューカッコいい。

 

「おいおいロータスちゃん。無抵抗の公爵家令嬢に武器を向けるなんて大問題だぜ? 氷河ちゃんの努力が全て無駄になっちゃうよ?」

「そうですね…………――ですが、私にも譲れないモノがありまして」


 あははは! 本当に此処に住む人達は面白いなぁ。

 先に武器を抜いたのはロータスちゃん。じゃあ僕も、戦闘防衛として鎌を抜くしかないよね!

 

「――『我が奴隷に主が命ずる――」


 げ、氷河ちゃん。

 

「――そこで大人しく反省してろ』アマリリスっ!!!」




 帰って来たら予想を上回って星原が馬鹿やっていた。

 

「……手間かけさせて悪いなロータス、ラミウム……ラミウムはひとまず孤児院の方に行っててくれ、その方が気が休まるだろ。ロータスは付き添いを頼む」


 子供達の純粋な心が、今のラミウムにとっていい薬となる筈だ。

 俺は水奈とリノの額にキスした後、水奈の傍に穂乃香と神奈、リノの傍にフィサリスとほたるを居させて、日坂と共に星原の説教に入る。

 

「お前何? 大人しく出来ないの? そんなにガチガチに命令で身動き制限されたいの?」

「今回ばかりは擁護出来ないぞ……いくらなんでもやり過ぎだ」

「………………」


 あぁ、大人しく反省って命令のせいで喋れないのか。

 良いよ。お前それぐらいの方が。しばらく黙ってなよ。

 

「人間族領の方で、面倒そうな動きが見られるって言うのに……うかうか村を離れる事も出来ねぇじゃねぇか」

「……冒険者から見張りを付けるか?」

「こいつのせいで人材割かれるのもな……いっそこいつの護衛を引き入れて、ずっとアマリリスの仮面被らせた方が良いんじゃないか?」

「………………」


 あんなキャラでずっと居るのは嫌だ?

 じゃあ少しは自重しろよ、行いを。

 

「とりあえずお前、水奈とリノの状態が元に戻るまでそのまま放置だから」


 俺は日坂に後を任せて水奈とリノの下へ向かう。

 全く……リノは明日誕生日だって言うのに。

 

「………………」

「星原……お前が悪い」

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