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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
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緊急会議

妊娠10ヶ月。

穂乃香が臨月を迎え、子供ももうすぐ生まれるであろうと言う頃。

緊急事態が起きた。

原因は、つい最近村にやって来た商人に、孤児院の子供たちが作った野菜を売った事だ。

俺はすぐさま、日坂、ラミウム、フィサリス、ロータス、アイリスを呼び出し緊急会議を開いた。


「面倒な事になった……」

「一体どうしたのですか?」


 普段問題事が起きても、大体俺一人で勝手にどうにかする事が多く、

 他の者の力を借りる時は個人的に声掛けをしているので、一堂に集めて会議をするのは移住してきて初めての事だった。

 言ってしまえばクーデター以来である。

 その為、こうして会議を行われるほどの事とは、何なのかをロータスが聞いて来た。

 

「子供達が作った野菜を商人に販売した事で、この村の存在が人間領に伝わっているのは知ってるな?」

「はい、魔族を受け入れられぬ一部が襲ってくる可能性があると」

「ああ……だが、どういう訳か、魔人族領にも情報が流れた様でな……アマリリスがこちらに向かっている」


 院長が固まった。フィサリスはおもむろに嫌そうな顔をしている。

 俺だって嫌だ。

 日坂、ラミウム、ロータスはアマリリスを知らないため理解できていない様だ。

 

「アマリリスはな、魔人族領ライブラ王国のズベンエル公爵の娘で、転生者――生前の名は星原明だ」

「あぁ……なるほど……」


 日坂は苦笑いしつつ納得すると、固まっている院長に同情の目を向けた。

 

「奏様と同じく、元は氷河様たちと同じ世界の方だったのですね?」

「ああ、ただ中身は碌でも無い奴だ。院長が生前死ぬきっかけになった奴でもある」

「…………美空様にとって良くない事が起きようとしているのは、分かりましたが……ここに一堂集まった理由とは?」


 唯一無二の友達である、美空奏のピンチも俺個人としては問題なのだが、

 それ以上にこの村に危機が訪れている。

 

「問題は奴がズベンエル公爵家の護衛達を引き連れて、この村の真相調査として訪れる事だ」

「……それは不味いな……」


 日坂は完全に理解した様だ。他も何となく理解している。

 このメンバーは話が早くていいな。

 

「アマリリスが『この村は良い村だ』と報告しても信じるのは良くて二割だ……しかし、『この村は魔族の子供を馬車馬の様に働かせる酷い村だ』と報告すれば開戦待った無しだ」


 人間族と魔族の共に暮らす村と言っても、魔族代表の院長の肉体はまだ13歳。

 他も院長と同い年ぐらいから年下の子供しかいない。

 それに対し、人間側はリノ以外全員15歳以上の成人した大人だ。

 人間の大人と魔族の子供と言う構図が出来ている。

 それに魔族の子供たちが畑で働いているのは事実だ。

 どんなに本人達が楽しそうだとしても、それこそ奴隷の様に扱ってると言われても、事実がある以上完全には否定できない。

 全てはアマリリス次第……状況はあいつに有利な状態で始まっている。

 これで開戦でもしようなら、俺が今までして来た事は全て水の泡だ……だが。

 

「…………月島君……私が――」

「――駄目だ」

「でも……!」


 アマリリスが執着しているのは美空奏だ。

 一番手っ取り早い解決方法はアイリスを差し出す事……だがそれは最善では無い。

 

「奴が俺の奴隷である以上、最終手段は俺の命令でガチガチに拘束する事だ。してもいないのに諦めるんじゃねぇ」

「……! ……うん」

「……具体的にはどうするつもりなんだ、氷河?」


 今回はアマリリスに護衛が付いている……つまりあいつも星原では無く、アマリリスの面を被ってないといけない。

 露骨にアイリスに執着したり、正当性に欠ける脅し行為などは出来ない筈だ。

 

「まず話をするに当たって面倒なのはあいつの身分だ。公爵家令嬢相手となれば、村の代表でしかない俺は下手に出るしかなく、多少の横暴も呑み込まなきゃいけなくなる……そこでラミウム……肩書を貸してくれないか……?」

「……構いませんよ。私のでよろしければどうぞお使い下さい」


 ラミウムにはアマリリス対応に参加して貰う。

 アマリリスは、魔人族領、王国の公爵家令嬢だが、ラミウムは人間族領、王国の王女だ。

 ブルーゼムは人間族領の中でも大国で、ラミウムはその第一王女だ。

 仮に向こうが無茶な要望をしても、ラミウムが断ったとすれば無礼だと護衛に文句を言われる事も無い。

 設定としては、ラミウムはこの村の資金提供をしているバックアップと言う事にする。

 完全に嘘だが、ラミウムが王女である事は事実なので問題ない。

 最近着る事の無くなっていた王族家のドレスを、また着てもらう事になる。

 

(かしこまりました)


 悪いな……折角一般の服を着る生活を始めてたのに。

 

「次に日坂、冒険者たちに魔族が集団で現れても、絶対に攻撃しない様に言い聞かせておけ。向こうも一応武装はしているが、攻撃はしない様に指示されている。こっちから攻撃したら開戦の火種になるぞ」

「了解した。ちゃんと指示して置く」

「あと、お前もアマリリスの対応参加な」

「……まあ……そうなるよな……」


 当たり前だろ、お前も村の代表なんだから。

 俺だって嫌だよ、あいつと話すの。

 

「ロータスには人間族領側の見張りを頼みたい。魔族が来てるって時に人間側に来られると混乱を生む。話の分かる友好的な相手なら丁寧に断り、話の分からない敵対的な要件……争いに来たような奴は叩き潰していい。必要なら神奈を派遣する」

「かしこまりました」


 神奈には基本、水奈と一緒に穂乃香の傍に居て貰いたい。

 本当は俺が傍に居てやりたいんだが……なんだってこんな時期に来やがるんだ星原は。

 タイミングが悪いんだよ。じゃあどのタイミングで来られるのが、良いのかって言われるとどれも良くないから、結果来て頂かないのが一番良い。

 

「院長は可能な人数で良いから、孤児院の子供達を連れて来てくれ」

「明君に会わせるの!?」

「直接本人達の声を聞かせるんだよ。院長が代表して言ったって、護衛達にヤラセだと思われたらそれまでだろ? 子供達には当日まで伝えず、自然な感想を言って貰うのが良い」


 賭け要素があるが、子供達に今の暮らしに不満を持っている子は見当たらないし、問題ないだろう。

 

「院長にも参加して貰う事になる……いいか?」

「うん……わかったよ」

「はいはーい! ご主人様! 私は!?」


 騒がしい……どうしてこう……シリアスブレイクをかまして行くかな。

 

「お前は俺の左目だろ。着いて来い」

「――! はーいっ!」


 だから会議に参加させてるんだろ……まったく。 

 

「距離から考えて、アマリリスの到着は明日の昼頃だ。それまでに日坂は指示を伝え、他のみんなも準備して置く様に。以上」


 さて……どうなるかね。

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