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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
アフターストーリー ~10年後まで~
237/346

 約束を守ると言う事は大事だ。

 俺は可能な限り、した約束は守ろうと努力している。……場合によっては、事情により守れない事もあるが。

 今回は魔人族領に向かう前にした約束を果たそうと思う。

 俺は水奈と一つの約束をしていた。そう、スキル『潜水』の指導だ。

 という訳で今日訪れた場所は、潜水が可能な水場……即ち――海だ。

 

 

 

 名目上、スキルの訓練となっているが、向かう先が向かう先だ。

 水奈も旅行の様な心持ちだし、

 

『氷君! 私も行く!』


 当然こうなる。

 だが、穂乃香はここ最近生理が来なくなったばかりだ。

 つまり……子供ができた。監禁されてた時は、ずっと穂乃香に主導権を握られて、避妊の避の字も無かったからな……

 こんなに早くなるとは思ってなかったが、俺も親になるのか……感慨深いな……


『穂乃香、連れて行くには条件がある』


 穂乃香はまだお腹は膨らんでいないものの、扱いは妊婦だ。

 泳ぎは愚か、潜水など絶対にさせられない。

 お腹を冷やす訳にはいかないので、水には足が浸かる程度。

 激しい運動は禁止。日焼けは疲労に繋がるので、ラッシュパーカーと麦わら帽子の着用を義務づける。且つ、入れない訳じゃ無いがあまり水場に入りたくないと言うフィアに、穂乃香の見張り役として傍に居て貰う。

 

『――以上が最低条件だ』

『……お兄ちゃんって、ホント穂乃香大好きだよね』


 水奈に呆れられた……解せぬ。

 その後、リノが行きたいと意思表示をし、それに伴い、フィサリスとほたるも参加。水奈が声を掛け、最近忙しくなっている息抜きとしてアイリスの参加が決まった。

 メンバーが俺の奴隷で揃ったため、ラミウムにも声を掛けてみたのだが、泳ぐのは苦手だと断られてしまった。

 リノの為にどうせ浮き輪を作る予定だったので、浮き輪を用意してやるぞと言うと、

 

『勘弁してくださいませ』


 とマジで嫌がられた。

 18歳の王女には浮き輪を付けるという現実は、プライドが許さないようだ。

 まあ、確かに俺も泳げなかったとして浮き輪を付けるかと言われたら、付けないな。

 でも泳がないのは穂乃香も一緒なのだが……まあ、本人が嫌と言うなら仕方ない。


『奏様の代わりに孤児院の運営をしておきますので、どうぞ楽しんでらして下さい』


 との事だった。

 因みに水奈はアイリスだけでは無く、神奈にも声を掛けたのだが、メンバーを聞いた神奈は、

 

『……遠慮して置こうかな』

 

 との事だった。

 断られると思ってなかった水奈が悲しそうな顔をしていた。

 だが、連れて行くには神奈が可哀想なため、俺がフォローを入れて置いた。

 

『水奈、神奈は今度日坂と2人で行くそうだ』

『ちょっ! お兄さん!?』

『そうなの美鈴……?』

『他の男に水着姿を見せたくないって乙女心だ。察してやれ』

『そ、そうなの! だから水奈、また今度の機会にね?』

『お兄ちゃんはスキルで見れるから、意味無いんじゃない?』

『……心持ちの問題だ』


 どうにか水奈には納得して貰った。

 

『……お兄さん、弥生ちゃんも行くんですか……?』

『……本人の強い希望だからな』

『……弥生ちゃん、心強いなぁ……』

 

 神奈は先の未来を察していた。その判断は間違ってないと思う。

 ほたるはその辺考えてない、故に当日に知る事になるだろう。

 ――この世の格差社会を。

 

 

 

 という訳で海だ。場所は魔族領に限りなく近い人間領の離れ小島だ。千里眼で見つけた。

 俺は今、柄パンにパーカーを羽織った状態で、錬金術の壁の中で着替えている女性陣を待っている。パーカーを着てるのは片腕無いのが目立つためだ。

 潜水と言っても数十メートルも潜る訳じゃ無い、正しくは水中行動、水の中で動ければそれで良い。片腕でも問題ない。

 最近は片腕の生活にもだいぶ慣れてきた。義手の製作には取り組んでいるものの、緻密な動きが可能なハイクオリティなものを作ろうと時間が掛かっている。まあ、無くてもあまり困らないので他の事を優先して、製作に費やす時間が暇な時間のみなのが主な原因だ。

 穂乃香の組手相手となると流石に片腕じゃきついが、神奈の稽古相手なら片腕でも問題ない。シュークリーム獲得はまだまだ先が長そうだ。

 シュークリームはまだだが、この間美空奏の記憶から得たプリンの作り方を元に、試作プリンを作って一緒に食べた。

 

『プリンだ……プリンだぞ、神奈!』

『プリンですよ、お兄さん!』


 ハイタッチして一緒に喜んだ。最近降下気味だった師匠の株が上がった瞬間だった。相変わらずチョロイな。

 プリンはリノにも気に入って貰えた。分かるか、分かるかね。美味いだろう。

 さて、着替えもそろそろ終わりそうだな。女性陣の水着は全て俺の手作りだ。故に誰がどんな水着を着るかは知っている。 

 水奈は水色のリボン付きワンピース。腰から短めのスカート。

 穂乃香はワインレッドのビキニに紺色のラッシュパーカーと麦わら帽子。

 フィサリスは黒のビキニ。黙ってれば大人。

 リノはスク水にピンクのキャップと浮き輪。お手製ゼッケンに『りの』と書いてある。

 ほたるはライトグリーンの花柄パレオ。頑張ったと思う。

 アイリスは本人の希望で競泳用水着。太腿まであるタイプ、尻尾用穴付き。

 まあ、ざっとこんな感じだ。

 ほたるのパレオは俺なりの優しさだったんだが、穂乃香とフィサリスが横に立つとやはり可哀想だな。

 胸囲の格差は穂乃香が圧倒的に大きくGカップ。バストもそこそこだが、アンダーが細すぎる。

 Eのフィサリス、Dのラミウム、Cの水奈、Bの神奈と続いてAのほたるである。

 本日はラミウムと神奈が不在で、より格差が顕著に出ている。

 美空奏は生前Dだったが、現在のアイリスの身体ではBである。

 つまりほたるは自分より身長の低い水奈や、肉体年齢が年下のアイリスより小さいのである。

 大丈夫だほたる、リノには勝ってる。

 因みにフィアの人間サイズは、穂乃香、水奈、フィサリスが入り混じっている為、大きめのFカップ。どうかほたるの前では精霊サイズでいて上げて。

 着替えが終わった様なので、壁を元に戻す。ほたるが砂浜にのの字を書いている。

 花柄似合ってるって、元気出せ。

 

 

 

 潜水の訓練をするのは水奈とアイリスの2人だけである。

 リノは完全に遊びに来ただけだし、フィサリス、ほたるもその付き添いだからな。

 穂乃香はしばらく陸でお留守番、後で相手してやらないと拗ねるな。

 アイリスが水中戦闘も可能になったら、水中戦、地上戦、空中戦を兼ね備えた万能ソルジャーになるな。役職は孤児院の院長だけど。

 あー……でも水中じゃ投剣術は厳しいか、抵抗が多いし武器が錬金術と空間収納だよりだからな。

 水中戦向きは穂乃香なんだよな、あいつ無詠唱あるし。そうじゃなきゃ、水中は基本魔法が使えない。

 俺自身もあまり水中戦は向いてない……長時間になると息切れで死ぬな。

 まあ、水中で戦闘する事自体滅多にないけどな。

 

「深呼吸で肺から二酸化炭素を出して、出来る限り酸素を取り込む。酸素を取り込んで息を止めて潜る、肺の中が二酸化炭素でいっぱいになる前に水面に上がって来る」


 基本を教えて試しに潜ってみる。

 最初は水面から2、3m程度の深さだ。そう深くない。

 アイリスは……問題なさそうだな。ハンドサインでOKと伝える。

 水奈は……問題ありだな。首を横に振って、上を指さす。

 一度水面へと戻って来た。

 

「ぱぁっ……水奈、吸った酸素は肺に溜めろ肺に。頬に溜めてどうする」

「……肺に?」


 ハムスターみたいなことになってたぞ。可愛かったけど。

 その後練習を続けて水奈はそこそこ息が続くようになった。

 アイリスは呑み込みが早く、ドルフィンキックを覚えてすいすいと泳いでいる。

 ……この辺で切り上げるか……水中行動は体感より体力を消耗してるし、何よりそろそろ穂乃香が拗ねる。

 

 

 

 陸へと上がり、水奈とアイリスはリノ達が遊んでいる所へ向かった。

 俺は紫外線をより遮る為にと作ったパラソルの下で、ビーチチェアに座る穂乃香と見張りのフィアの下へ向かった。

 

「氷君、お疲れ様」

「おう、隣いいか?」

「うん」 

 

 穂乃香の隣にチェアを作って座った。フィアは俺のパーカーの中に戻った。

 

「私も氷君と一緒に泳ぎたかったなぁ……」

「……また来ればいいさ。その時は俺らの子供と一緒にな」

「うん……」


 綺麗に微笑んだ穂乃香は、甘える様に俺に近づく。

 

「ご主人様~」

「む」


 そこに休憩に来たフィサリスが現れた。完全にわざとである。

 この2人の互いへの対抗心は未だに強い。まあ、何だかんだ息が合って仲良いんだけどね。

 この2人と一緒に何回か3人で寝ている。4つの御山の破壊力はヤバかった。水奈を含めて4人の時もある。義手装着必須で、大体朝は起きて来れない。

 2人ともビキニを着ていて黙っていれば大変色っぽいのだが、中身が子供だからな。

 2人っきりにはさせないとやって来たフィサリス、休憩どうぞとチェアを譲り俺の上に座る穂乃香。文字通り尻に敷かれてしまった。

 

「喧嘩するな2人とも」

「むー」「私はそんなつもりないんだけどね~」


 そう言いつつフィサリスは俺にすり寄って甘え、穂乃香を挑発する。

 挑発に乗せられた穂乃香は体勢を仰向けからうつ伏せに……つまり俺と対面になり抱き着いて来る。

 穂乃香はもう子供できるんだから、余裕と落ち着きを持ちなさいよ。フィサリスに遊ばれてるぞ。

 

「氷君は、私の!」

「私はご主人様の物~」

 

 ……それ結果的に、フィサリスは穂乃香の物って事になってない?

 

 

 

「………………」

「奏先輩? どうしたんですか?」

「あ、ううん。何でもない……リノちゃんっ!?」


 月島君達に視線を向けていた隙に、リノちゃんに尻尾を掴かまれてしまった。

 

「リノちゃん放して? んっ……尻尾を触られるとムズムズするの」

「あむっ」

「あ! 駄目っ! んっ……美味しくないから、んっ……ペッてして、ペッて」


 リノちゃんの甘噛み……舌も柔らかかくて、声が漏れちゃうっ……!

 

「奏先輩、色っぽい……ってどうしたのほたるちゃん?」

「……競泳用水着にも勝てない私の色気…………」


 見てないで助けて、2人とも!

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