置き土産
勇者VS魔王の蹴技に関して、名前を変えました。
魔なので、光と聖は使えなかったです……
――――――――――死ぬのか……? 王たるこの吾輩が。
この世界の観測者として3000年君臨し続けたこの吾輩が、この世界で1年も経たない異界の者に殺されると言うのか…………
…………世界よ、それが吾輩に対する貴様の答えだと言うのか…………
……良いだろう。吾輩はここで死ぬ。
だがな、世界よ。吾輩は腐っても『魔王』であるのだ。
貴様が吾輩を殺すが為に送り込んだであろう、この異界の使者には――ここで死んでもらう。
『「冥界の門」』
月島 氷河
Lv 79
HP 400/400
MP 800/800
STR 82 (+70) (+75)〔227〕
DEF 123 (+70) (+25)〔218〕
AGL 206 (+107)(+20)〔333〕
DEX 248 (+127)(+15)〔390〕
MIND 331(+154)(+95)〔580〕
INT 374 (+146)(+15)〔535〕
LUK 50 (+42) (+5)〔97〕
魔王を倒し、レベルが10上がった。
2回に及ぶ、スキルレベル9の大技を使って空になりかけたMPも元に戻った。
数値で言えば10だが、経験値で換算すると、レベル69に至るまでに得た総合値の1.5倍を魔王から得た事になる。
3000年半端ねぇ……レベル後1上がったらグレートヒューマンに成れるぞ。
次で貰える固有スキルも最後か……『無詠唱』欲しいな。
「…………少年よ……」
「……地島昌一郎か」
魔王が肉体から離れた事で、地島昌一郎の精神が元に戻った。
……と言っても肉体はもう持たない。あと30秒も持たず死に至る。
死ぬ間際のほんの一瞬だ。
「……ありがとう…………」
「…………ああ、安らかに眠れ」
老人は、安らかな笑みを浮かべて息を引き取った。
……安らかに眠らせてやりたい所ではあるんだがな……そうも行きそうになんだよな。
「――っ!」
地鳴りと共に城が崩れ始める。
魔王が俺の手によって死ぬ未来…………ここまでは確定していた。
問題はここから。この先が、俺の為にフィサリスが死ぬかもしれなかった未来。
俺が死ぬ確率は、依然変わらず9割のままだ。
魔王が消滅間際に残した置き土産。『冥界の門』。
その門が開き、中から現れるのは魔王の眷属。つまり――
グレートデーモン
Lv 85
HP 780/780
MP 630/630
――グレートデーモン……100体。
デーモン
Lv 55
HP 440/440
MP 250/250
――デーモン……900体。
レッサーデーモン
Lv 35
HP 250/250
MP 170/170
――レッサーデーモン……9000体。
計1万体のデーモン集団だ。
グレート100体だけでも十分悪夢だってぇの。
魔王が人間族との戦争の為に温存していた戦争兵力……あの野郎、俺1人に対して使いやがった。
城が崩壊し、外壁が無くなって外の風景が見える筈なのに、俺の周りは360度デーモンで埋め尽くされており、どこ見ても青暗い黒しか見えねぇ。
これで空でも飛ぼうものなら、足元も囲まれて球になる。飛ばぬが吉、半球に囲まれてる今の方がまだマシだな。
ラスボスの後の裏ボスが、数による暴力だなんて、どんなクソゲーだよ。
「フィア、出てこい」
『氷河……どうするの?』
「持久戦になるから大技は控えて、聖剣術で仕留めて行く。問題はMPだが、ポーションを飲む隙はくれないだろう。回復は自動回復と……フィア、お前にポーションを渡すから戦っている俺に掛けてくれ。この際濡れる事なんて気にしてられない」
掛けても回復する事は、飲めなくなって止む終えず掛けた時に実証済みだ。
MPポーションは全部で16個……節約しなければならない。
空間魔法阻害がとかれれば、数を気にせず使えるのに……というかこの場から即退散するのに。
なんで城が崩れても装置が壊れてないんだよ。地中か? 地中に埋めたのか?
物質が密集してると千里眼では見えないんだよ。目だけ転移させて見る感覚だからな。
鑑定で見えるのは地表の情報だし、錬金術で探る時間は……くれないよな。
「戦うしかないってか……分かったよ…………フィア! 俺の命、お前に預ける……殺さないでくれよ?」
『……っ……! 当たり前でしょ! 絶対に死なせてなんてあげないんだからっ!』
これから死ぬかもしれないって言うのに、フィアの言葉を聞くと笑みが零れる。
やっぱり俺のパートナーは世界一最高だ。
「行くぜっ!」




