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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
メインストーリー
226/346

6ヶ月目 2

 ――残り5

 

「くっ!」


 ――残り4

 

「こいつ!」


 ――残り3

 

「かはっ!」


 ――残り2

 

「ヤバいって!」


 ――残り……!

 魔法阻害が解かれた……? 何故使わない。

 最後の1人が残りHPを見てヒヨりやが――っ!

 

「馬鹿っ! まだ出てくるんじゃねぇ!」「『プロミネンス』」


 放たれた炎が敵の半分を燃やし尽くす。


「いたぞ!」「装置起動!」


 体力が残ってる奴に装置が渡って、起動させやがった!

 装置を持った奴がフィサリスの下に向かい、フィサリスの魔法の範囲外に居た残り半分が、壁となるべく全員俺の所へ突っ込んで来る……!

 あの馬鹿、魔法阻害が解けたからって勝手に行動しやがって……!

 

「――邪魔だぁあ! そこをどけぇぇええええええ!!!!!」「絶対にそいつを通すな! あの女を確実に始末しろ!」


 羽虫どもを振り切ってフィサリスの下へ向かう。

 フィサリスの下まで後3.31秒、敵の剣がフィサリスに届くまで3.53秒。

 俺の方が少し早い……! 間に合え……間に合えっ!

 

「――――――――――っ!」


 俺が右腕でフィサリスを抱き上げ、勢いのまま右に回避しようとする。

 回避をしようとする俺らに剣が振られ――――――俺の左目を切り裂いた。

 俺は左目の痛みを堪えつつ、左手の剣を振って最後の装置を破壊した。

 

「ご……主人……様……? …………ご主人様の目が……目が……そんな…………」


 左目が死んだ。回復術を使っても蘇生は無理そうだ。

 だが、フィサリスの命に比べれば安い代償だ。

 俺の鑑定、千里眼、未来視は片目さえあれば事足りる。

 

「……どうして…………どうして私なんかの為に…………ご主人様の目が……」

「……うるせぇな……お前の命に俺の片目なんて、比べる余地も無いからに決まってんだろうがっ!!!!」

「――――っ!」

「『ホーリークラッシャー』」


 俺の腕の中で涙を流すフィサリスに、斬りかかって来たハエを左腕の剣で斬り捨てる。

 よく見れば周りにも残党がわらわらと……

 

「……装置は全て破壊した」

「……うん」


 フィサリスは涙を拭い、敵を睨み付け、杖を構えた。

 

「『サンクチュアリ』」


 レベル9の聖魔法を放ち、目の前に居た残党たちは跡形も無く消え去った。

 

 

 

 城下町に居た奴隷を全て始末した後、人気のない所に地下空洞を作り休む事にした。

 フィサリスの精神が落ち着いてないし、俺も左目を怪我したばかりだからな。

 血は止まったが、視力は戻らなかった。HPは生命力だが、欠損は状態異常。水奈の『治癒回復』ならその場で治せたかもしれないが、時間が経ち過ぎたな。もう戻る事は無いだろう。

 まあ、今まで千里眼を使ってばかりで見てきた世界だ。片目が見えなくなったぐらいじゃそう変わらない。

 が、それは俺にとってはの話でしかない。

 

「……ご主人様……私が……私が、ご主人様の目になる」

「だから気にしなくていいって……」

「だって……! 二度もご主人様に命を助けられたんだよ!? しかも今回はご主人様の目を犠牲に! それも私がご主人様の命令を守らずに飛び出したせいで……! ……私のせいで…………」


 …………一つの未来が確定した。

 俺はフィサリスの体をそっと抱き寄せた。

 

「言っただろ……俺の片目なんかより、お前の方が大切なんだ……人を殺し続けたこの半年、ずっと死んだ人間の生い立ちを見てきた。未来が見えるようになった2ヶ月は、そいつが生き延びた先での可能性未来まで見てきた。……ハッキリ言って地獄だ。相手の人生を知り、共感した上で殺して行く、頭がおかしくなりそうな毎日だった。それでも俺が正常であり続けられたのは……お前が隣に居たからだ。素の性格もあるかもしれないが、俺が暗く沈みかけてる時はお前が明るくしてくれた。気を遣ってわざとしてた時もあったな……俺はスキルで分かるってのに……でも嬉しかった」

「ご主人……様……」


 『いつか絶対ご主人様に私の事好きって言わせてみせるんだから!』

 ……俺の負けだな。

 

「3ヶ月前から予兆はあったんだけどな……時間が経っても、収まるどころか増える一方だった……――俺はお前が好きだ……この思いは変わりそうにねぇ」

「……ぅううぅ……っく……うぅぅうううっぅぅ……っく……うぇえええぇぇえええええん!!!!」


 本当に…………大きな子供みたいだな。


「…………今まで悪かったな」

「ううん……今までも幸せだった…………今は……もっと幸せになった…………幸せ過ぎて……どうしたらいいか分からなくて……」


 少し体を離して顔を覗き込む。

 

「……くしゃくしゃじゃねぇか」

「だ、だって……――!」


 唇を重ね合わせる。優しく、触れる程度に。

 フィサリスは初めてだしな。

 少しして唇を放す。

 

「ごしゅじんさま……ん――」


 だが2回目以降は手加減してやらない。

 フィサリスは大人だからな。

 

 

 

 

 

「穂乃香に怒られる内容が増えた……3日の監禁じゃ許して貰えそうにないなこれ……」


 隣で幸せそうに眠るフィサリスの頭を撫でる。

 そういえばフィサリスの頭を撫でてやった事って無かったかもしれない。

 でこピンした回数は覚えてないが。

 しかし、まあ……ちょっとやり過ぎた……

 最初は初めての事もあり優しく丁寧にしてたんだが、半年間四六時中一緒に居て、一度もしてなかったから……フィサリスが慣れてきた最後の方は俺も抑えきれなかった。

 ………………

 

「何してんだろうな……俺」


 泣かせる事になる……こんな事したら余計にだ。

 でも……だからこそ……愛しておきたかったのか……

 

「結局、俺の我が儘だな」


 今、考えても仕方ないな……

 俺は地下空洞の入口付近を錬金術で頑丈に閉めると、笑みを浮かべて眠るフィサリスの額を軽くピンと弾き、眠りについた。

少し表現を付けたしました。9/29

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― 新着の感想 ―
ここまで読み進めましたがが やはり主人公の自己満足的な性格と レベルで人間をやめる 世界観に無理を感じます
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