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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
メインストーリー
220/346

4ヶ月目 2

「――未来視? じゃあご主人様は未来まで見る事が出来る様になったの? 全知全能じゃん」

(人間辞めてるなぁ……流石ご主人様)

「人外扱いするな。それにこの未来視も正確な未来が見える訳じゃ無い……所謂予報みたいな物だ」

「予報?」


 急激に情報が頭に流れ込み、並列思考をもってしても処理が間に合わず頭痛がしばらく止まなかった為、戦闘を切り上げて地下空洞で休んでいる。

 だいぶ慣れてきて痛みは治まったが……情報量が今までの比じゃ無いな……

 並列思考と高くなったINTが無かったら、処理しきれず廃人になってたんじゃないか……? 危ねぇスキルだな。

 

「この未来視は、千里眼と鑑定で分かる情報を、照らし合わせて自動集計し、答えを導き出すプログラムみたいな物だ。だから本来しようと思えば以前でも出来なくは無かった……面倒くさ過ぎて、しようと思う事は無かったけどな」

「え、じゃあご主人様は前から未来を見る事が出来たの?」

「予測未来だけどな……例えば今見えている未来の中に、此処の地上を通る馬車の車輪が、溝にはまってしまうってのがある。馬車に乗る人数は4人、積荷と合わせて総重量は300㎏、御者は道路端から50㎝離れた所を普段から通る人で、馬車の車輪がそこそこに劣化している。車輪が通る道の上に木の葉に隠れて見えにくくなっているが、溝があり、気付かずに上を通ろうとすれば車輪の劣化と重さではまってしまう……御者は連勤で疲れ気味の為、溝に気付く事は無いだろう……って予測の未来だ」

「あー……一個一個鑑定して、計算を重ねた上で分かる未来なんだね……それは確かに考えるのめんどくさそう……」


 小学校の頃にこういった計算問題があったな。

 妹の水奈ちゃんは家から2㎞離れた図書館へ向かって時速3㎞で歩いて行きます。10分後、水奈ちゃんがお弁当を忘れた事に気付いた兄の氷河君が、お弁当を持って時速6㎞で水奈ちゃんを追いかけました。氷河君は何分後に水奈ちゃんに追いつくでしょうか。

 こういった情報を複雑で、より正確に計算して答えを出すのが未来視のスキルだ。

 水奈が図書館に向かう事、水奈が時間ギリギリに出た事で弁当を忘れる事、俺がリビングに現れてから弁当を発見する事と、それまでの時間、発見して届けてやる事と、発見してから家を出る準備をする時間、水奈の速度で歩いた時の引っかかる信号の数と時間、追う俺が引っかかる信号の数と時間、俺の体力的に考えて疲れて途中減速したり、水奈が猫を見つけて立ち止まったりする事、その猫と水奈が鉢合う事、水奈を視界に入れた俺が声を掛けて水奈を立ち止まらせ、声を掛けられた水奈が振り向かえって俺に尋ねる……なんて所まで千里眼と鑑定で細かく情報を調べて照らし合わせ、未来として導き出すのが未来視だ。

 

「予測はあくまで予測だから全てが確定じゃない。俺の千里眼の範囲外からの影響が受けやすい物ほど未来が不確定になる。だが逆に千里眼の範囲内だけの事なら高確率確定の未来予測も可能だ」

「でも未来ってコロコロ変わりそうなもんじゃない? そんな確定したりする物なの?」

「……お前、俺に『俺を置いて人間領に帰れ』って言われたら帰るか?」

「嫌だ! 私も残る!」


 ……即答かよ……

 

「強い意思によって決まる未来はそうそう変わらない。今のは例え俺が帰れと言った所でお前は帰らないという確定未来だ」

「う~ん……しない事は大量に確定してると思うけど、する事は確定しなくない?」

「お前、明日俺の作る飯、食べるか?」

「食べる……ってそっか……確定してるね」

「もちろん不確定要素もある、肉の味付けに塩にするかタレにするかなんて、その時の気分次第だから確実とは言えない。ただ好みの傾向としてお前は塩の方が好きだから、塩で食べるだろうという、高確率確定の不確定未来だ。まあ、俺が味統一で作ってしまえば確定未来だけどな」

「確定要素と不確定要素を照らし合わせた上で予測できる未来かぁ…………ん? あ、ねぇご主人様? そういえばご主人様は塩とタレならタレが好きなのに、最近ずっと調理の味付けが塩なのってもしかして……」

 

 …………………なんだよ。良いだろ塩食ったって……調味料節約を考えただけだろ。

 ……ウザい、キラキラした目でこっちを見るんじゃない。

 

「~~~もう! そういう所が大好きだよご主人様っ!」

「……うるさい、頭に響くから黙れ」

「もう素直じゃ無いなぁ~うりうり~」

「調子に乗るな」

「あぅ」


 でこピンをかまして黙らせる。

 暗い話をするっていうのに、しにくくなったじゃねぇか……

 

「ともあれ、レベルが目標の60に届いた。強力なスキルも手に入った……フィサリス、明日から正面切って暴れるぞ」

「……いよいよ本格的にいくんだね……」

「ああ。片っ端から奴隷共を殲滅していく、人間だとバレるから指名手配書はすぐ作られるだろうし、追手も付く……覚悟はいいな?」

「もちろん! それにしても、指名手配されてばかりだね~」

「今回はそれだけの事してるだろ。今後はレベリングの時間も全て殲滅の時間に回す。休養は地下空洞だが、追手が付くと位置がバレる。錬金術で穴を掘って、違う地点に移動してから休養を行う事にするから、そのつもりで頼む」

「はーい。……逃亡生活だね」


 なんでちょっと嬉しそうなんだよ……相変わらず締まらねぇなぁ……

 

「それと、これを持った奴に気を付けろ」

「……? なにこの機械?」

「武闘派奴隷が持っていた『魔法阻害装置』だ。空間魔法阻害装置に比べて範囲は圧倒的に狭いが、これを使われると転移だけじゃ無く、MPを消費して使う魔法や技全般が使えなくなる。つまりお前の天敵だ、これ使われたら杖で戦うハメになるな」

「えぇ……ご主人様……私、接近戦に関して言えば水奈ちゃんにも負ける自信あるよ?」

「だから基本持っている奴を見つけたら、装置を奪うか破壊するのを優先的に行っていく」


 俺より強い戦力が一瞬にして足手纏いになり果てるからな。

 俺としてもそれは困る。

 

「……今から棒術を鍛えたりとか……」

「そんな時間ある訳ないだろ」

「……だよね~……ご主人様、これもし使われた場合、私どうしたらいいかな……?」

「転移も使えないとなると戦線離脱も出来ないしな…………」


 単純なスピードで言えば俺よりフィサリスの方が早いが、杖での打ち合いの動きはまんま素人だ。追撃から背を向けて逃げ出す形になってしまう。

 

「……もし使われた場合は――俺の傍から離れるな」


 逃がすにしても、守るにしても、俺が近く居ない事にはどうしようもない。

 格下相手で少人数ならフィサリスを守りながら倒す事も出来るだろうが、同格や大人数となると守りながらはキツくなる。その場合はフィサリスを逃がし、俺がそこに居る奴ら全員の足止めをしてフィサリスが逃げ切った後に戦う方が良い。

 足止めを行う場合、俺が敵とフィサリスの間に入らなければいけないので、離れた所に居られると出来ないからな。どっちにしろ近くにいて貰わないと俺が困る。

 

「ご、ごごご……ご主人様っ!?」

「あん? どうし――! いや、ちがっ! ……違うくはないんだけど……そうしないと俺が困るからであって、そういう意味じゃ――」

「困る……困る……えへ、えへへ~……ご主人様っ!」


 フィサリスに抱き着かれた……事細かに説明しても良いが、乙女モードに入ってる今、何説明しても耳には入らないだろう……

 …………最低限、棒術を教え込んでおくべきなのかコレ?

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