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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
メインストーリー
216/346

3ヶ月目 5

 取引場所は公爵家の土地に地下空洞を作って行う。

 日が昇ってるうちに公爵家の屋敷に長居する事は出来ないからな。

 ミスリルを持った星原を連れて地下空洞へ移動する。

 

「委員長、こいつが知り合いの魔族だ」

「貴女が氷河さんのお話にあった……? お名前を聞かせて貰ってもよろしいかしら?」


 元の器となった魔族の話し方だったとしても、星原がこう喋ってると思うとキメェ。

 

「は、はい! 私はアイリスと申します!」

「――! アイリス……良い名ですね、私と似ていますし……私はアマリリス。リリスとお呼び下さい」

「リリスさん……よろしくお願いします!」

(悪い人じゃ無さそうかな……?)


 その予想は見事に外れる事になる。

 しかし……フィサリスにアイリスにアマリリス……リスが3匹だな、胡桃でも渡そうか。リコリス? 知らん名だな。

 

「じゃあ氷河ちゃん、約束のミスリルね~!」

「ああ、確かに受け取った」

「え? ……え? どういう事……? 月島君……? ……リリスさん……?」

「委員長。そいつな、委員長と同じ転生者なんだよ。旧名『星原 明』」

「久しぶりだね、奏ちゃん!」


 委員長が固まった。まるで石像の如く。

 そしてギギギと音が鳴りそうな程、ゆっくりこっちを向いた。

 どうした? こっち見んな。

 

「いやぁぁぁああああ! 月島君っ! 私を置いて行かないでぇっ!!」


 全速力ダッシュからのジャンピングハグだった。クールな委員長は瞬く間にして消えてしまった。

 流石星原半端ねぇな。拉致られた時以上の取り乱し方だぞ。

 

「ちょっと奏ちゃ~ん……久しぶりに再会した従兄弟に対してそれは無いんじゃない? 僕だって傷付くんだよ? 悲しいなぁ……僕は奏ちゃんを助けようとして死んじゃったって言うのに……」

「……そうだけどっ! でもそれも元を辿れば明君のせいでしょ! 結局私と一緒に死んじゃってるし!」

「へぇ~……奏ちゃんは、奏ちゃんが死んだのは僕のせい、僕が奏ちゃんを助けようとして死んだのも、僕が勝手にやって死んだ事って言うんだ」

「う、……そういう訳じゃ……ないけど……」


 こいつらが死んでこの世界に来ることになった原因、それはこいつら2人の性格にある。

 こいつらは従姉弟だからかは知らないが、2人とも会話の中から情報を拾い、相手の素性や人柄を見極めるのが上手い。

 だが、それを知った上での対応の仕方が180度違う。

 委員長は相手の良い所を見つけるのが上手く、悪い点もポジティブに捉える。悪い事をしているのが分かった時は、どうしてそんな事をしたのかを相手の気持ちに寄り添って考える温情派だ。

 星原は相手の良い所には興味が無く、悪い点のみを的確に見つけて行く。悪い事をしてると分かれば、どんな理由があろうと罪は罪。起きた事実のみを真実として捉える。欺瞞を嫌い、堂々とした悪を好む。公に出なかった悪意を大っぴらに晒して人間関係を破壊していく屑だ。

 温情の空と非情の星。こいつらによって巻き起こった一つの悲劇がこいつらを殺した。

 こいつらと言うか、主に星原のせいなんだが……

 委員長は反応を見て分かるように星原が嫌いだが、星原も反応を見て分かるように委員長が大好きだ。

 自分を殺した人間をも嫌わない委員長に唯一嫌われる星原と、悪意を好む狂人に悪意を持たない人間の中で唯一愛された委員長……これだけでも十分ミラクルだよな。

 委員長の生涯で彼氏が出来なかったのは星原のせいである。憐れ。

 星原は委員長に対する独占欲が強く、近づく人間は男女拘らず、自分が認めた人間しか許容しなかった。

 星原が認めない人間……委員長に下心ありで近づく者や、委員長を利用しようと考える者、貶めようとする者……つまり委員長に近寄る自分以外の悪意だ。

 委員長はそういった奴らを見抜いた上で、人間は悪い面だけじゃないと気にせず接していたのだが、星原はそれを許さなかった。

 まずは相手の良心に訴えかけお前は汚い人間だと責め立てる、大概はそれで止めて行くのだが、人によっては開き直る。開き直った堂々とした悪意は本来星原の好みだが、委員長に関しては話が別だった。委員長から遠ざける為、相手の弱みを握って脅し……時には転校にまで追い込んだり、引き込もりになるまで追い詰める事もあった。

 特に多かったのが弱みとして握った事を、そいつの親友や恋人、知られたくない人物に話し人間関係を破壊しに掛かる事が多かった。

 それは単純にこいつの趣味だ。真正の屑だ。

 

 

 2人が命を落とす事になったのもその人間関係の破壊が原因だった。

 委員長を利用しようと近づいた女子の1人が、表では良い子ぶって裏は相当性格の悪い奴だった。と言うか悪い事してた。

 まあ、つまりは星原の格好の餌食だ。

 星原はその女子の彼氏と仲の良い女子グループにそいつがどんな奴か、内心どんな事を思ってるからそういった発言、行動をとるかの心理学を説明した。

 まあ、全部当たってるから救いようが無いな。人間関係って大概そんな物だけどな。

 そういう薄っぺらい関係から徐々に深まって、ほんの2~3人だけが本当に信じられる。そういうのが人間関係ってもんだ。

 だが星原はその薄っぺらい状態……深くなる可能性も0じゃない状態で全てを破壊した。

 その女子は彼氏からも友達からも距離を取られ絶望していた。そんな女子に手を差し伸べる人物が居た……委員長である。

 委員長は元々、その女子の性格がお世辞にも良いとは言えないと、気付いていながら接していたからな。それが公になったところで対応は変わらない。むしろどうして公になったかも分かるから、星原に怒りを抱きつつ、独りで寂しくない様にと、その女子の傍に居るよう務めた。

 遠ざける為に破壊したのにむしろ近くなってるという皮肉。

 だが、その女子にはそれが気にくわなかった。でも委員長が居てくれなければ本当に独りになるのも事実で、どうしようもない。故になおムカついていた。

 委員長の従兄弟のせいで人間関係を無茶苦茶にされて、孤独になったのに、それを委員長が助けるという構図に、見下されているようで我慢できなかった女子は、星原と委員長を憎み、恨み……電車のホームから委員長を突き飛ばした。

 その際に星原は委員長を助けようと跳び出して……2人とも死んだ。

 殺された委員長は、殺した女子が恨んでたのも憎んでいたのも知っていたし、それでも彼女が独りになったのはきっと私のせいだからと、突き飛ばされてなお、恨みはしなかった。

 もはや女神だろ。そして誰のせいかと言われたらその女子と星原だよ。

 そんな女神、美空 奏は現在12歳年相応の子供の様に俺にしがみ付いている。

 

「説明した通り、俺らは人間族だ。委員長を連れていく事は出来ない。出来ても早くて3ヶ月後……魔王を倒してから、俺の奴隷って形でなら人間族領にも連れて行けるが――」

「――3ヶ月待ちます! 私を奴隷にして下さいっ!」


 あんなにかっこ良く「対等な立場でありたい」と言っていた委員長に、迷い無く奴隷になる事を選ばせる星原の力よ。

 嫌われ過ぎだろ。それ相応の事しかしてないけどさ。

 委員長と奴隷の契約を結んでやった。

 

「ステータスはちゃんと1.5倍になったろ? 後マジでピンチな時は俺らが戦闘中じゃない限り召喚で助けてやる」


 殺し中は無理だが、レベリング時なら少し時間を割いてやるぐらいは良いよ。

 

「ちょっと氷河ちゃん~? 僕そんなの聞いてないよ?」

「なんだ? 交渉違反だとでも言うか?」

「いやいや――――僕も氷河ちゃんの奴隷になりたい」

「………………」


 星原に無言で手の平を差し出す。

 

「――ミスリルを積め」

「……がめついなぁ……――別に良いけど」


 お前を奴隷にしてやりたくなんか無いが、対価を寄越すなら良いだろう。

 主権限で口止めを確実に出来るしな。

 星原も仕方なく、大変不本意だが奴隷にしてやった。

 

「これで僕も氷河ちゃんのハーレム入りだね!」


 んな訳あるか。俺には心が見えるんだぞ?

 体が女だとしても心が男なら男だ。お前だけは絶対に無い。

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