3ヶ月目 1
魔人族領をくまなく見て回って分かった事なんだが……意外と転生者って居るんだな。
人間族領はそこまでくまなく見てなかったから分からないけど、もしかしたら探せば居たのかもしれない。
知らない奴が多かったけど中にはまた1人知ってる奴も居た。
運が悪かったのかスラム街の子供に転生してた。
過去のよしみって事で保護してやりたい所ではあるが、俺らは人間で魔人族領のお尋ね者な上、2000人以上殺してる大量殺人犯だったわ。保護してやれん。
と、いう訳で――強く生きろ。
魔人族領で3ヶ月が経った。
3ヶ月もぶっ続けで戦っているせいで、問題が発生した。
「………………」
「もうボロボロだね、ご主人様の剣」
武器の消耗……攻撃をくらう事は無いためローブは平気だが、剣はずっと劣化していく一方である。
特に俺は魔剣術、聖剣術で魔法を纏わせる為、余計に劣化が早い。
新しい剣を用意しなければならない……が、
まず、買うなんて言う選択肢は存在しない。
魔人族通貨は、殺した奴隷の中で『そいつの財産を引き継ぐ者が居ない奴』から巻き上げている為、ある事にはある。
だが、武器屋に行って人間だとバレる、なんて事をしたら今までの苦労が全て水の泡だ。
存在がバレるにはまだ時期じゃない。
とすると選ぶ選択肢は一つ、自分で作る事だ。
鍛冶スキルはあるし、魔結晶もゴーレム用に幾つか確保している為、鉱石さえあれば作る事が出来る。
問題はその鉱石だ。
今後魔王戦にも使う事を考えると今の武器より強い物が良い。
素材はオリハルコン……だと固くは成るが……魔法を纏わせる事を考えるなら、魔法と相性の良いミスリルだな。
魔人族領にも鉱山はあるが、ほとんどが銀、鉄、銅の取れるところばかりだ。
ミスリルの取れる鉱山は空間魔法阻害エリアにされていて、侵入する事が出来ない。
……鋼鉄で我慢するか……? だがしかし…………――
「――ねぇ~、ご主人様~今日どうするの~」
「………………」
「ご主人様、考え事する時並列思考働かな過ぎだぞ~? 頬っぺたプニプニだね」
「………………仕方ないか」
「あ、動いた」
動かないからって人の頬をやたらに突くんじゃない。リノ相手だったら指喰われるぞ。
「フィサリス、今日1日だけは戦闘は無しになるかもしれん」
「う~ん、良いんじゃない? 3ヶ月近くずっとだったし~偶には休もうよ。……で、どうするの?」
「出来ればしたくは無かったんだが……やむを得ん」
あ~……嫌だ……今から考えるだけでも嫌だ……
「――――知り合いに会いに行く」
「……転生者?」
「俺や日坂たちは肉体ごとこの世界にやって来た転移者だ。それに対し、転生者は魂のみがこちらの世界にやって来る。大体の場合は俺らの世界で死んだ者の魂が、こちらの世界の死ぬはずの予定だった器に乗り移る。赤ん坊に転生する事もあればある程度大人になった体に転生する事もある」
「へぇ~……それって意識とか記憶はどうなるの?」
「意識は完全に魂持ち主の物となる。記憶は前世の記憶を引き継ぎながら、その器の記憶も引き継ぐ事が多い。まれに前世の記憶を引き継げず、その器自身として新たに生きていく場合もある」
「魂の持ち主が変わっただけかぁ……身近な人物がもしかしたら一度死んでて、記憶を失った転生者とかの可能性があったかもしれないんだね……なんか怖っ」
記憶を失っても魂は変わってるから、急に性格が変わった奴とか、ある時を境に豹変した奴とかは可能性が無くないな。
「今回はその記憶を引き継いだ転生者で、元の世界で俺の知り合いだった奴がいるから、そいつに会いに行く」
「……それって元の世界で、ご主人様の知り合いが一度死んだって事なんだよね?」
「そうだな。まあ、今から会いに行く奴は、いつ殺されてもおかしくないような奴だけどな」
「え、何それ、どうゆう事?」
「……会えば分かる」
……まずは、交渉の場をどこにするかだな。




