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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
メインストーリー
211/346

2ヶ月目

「――、―――」


 ……汚れてきたな……随分と……


「氷―、――に―――か―」


 ……あれ、懐かしい感じ……

 

「氷河、お、おはよう!」

「………………」

「………………」


 俺が穂乃香の膝枕に恋しくなっていた事を知って、膝枕をしてあげようと考えたものの、普段ツンツンのお姉さんなキャラをしていた為、優しく微笑んで「おはよう」なんて言った事が無く、でも求められている物に近づけようと、恥ずかしがりながらもぎこちなく微笑んで見せるフィアの姿があった。……いや、可愛過ぎだろ」 

「説明しなくていい! 言わなくていいからっ!」

「あ、手も握ってくれてたのね。俺のパートナー様世界一――むぐ……」

「黙って! しばらく黙ってて!」


 顔を真っ赤にしながら手で俺の口を塞ぐフィア、しかし繋いだ方の手は繋いだままである。

 いやぁ~パートナー様最高です。殺伐とした世界に癒しをくれるオアシスだね。

 とりあえずお礼の意を込めて頭を撫でておく。前は喜んでくれたからね。

 あ、赤みが増した。

 

「ご主人様おはよう~MPポーションは瓶に入れといたよ~」


 フィアの可愛い姿を俺と一緒に見ていたフィサリスが声を掛けてきたので、手を上げて応える。口は塞がれてるからね。

 

 

 

 魔族領に来て2ヶ月。野宿はデーモンが夜間徘徊をし始めた頃から、錬金術で地面に穴を掘り、地下深くに空洞を作ってそこで行うようにしている。

 中に入った後、穴の入口から空洞までは、調合や料理時に出る湯煙を逃がすためだけの、小さな気功サイズにしてしまうため、人は入って来れなくなっている。

 人の視線を気にする必要がなくなった為、錬金術で浴槽を作り、風呂に入る事が出来る様になった。

 それまでは川や湖での行水だったからな。もっと早くから地下空洞を作れば良かった。

 これならベットを持ってきて使う事も出来たんだなぁ……と思いはしたけど仕方ない。

 無い物は無い。

 風呂は互いが寝てる間に入るようにしている。時間は極力レベリングと暗殺に割きたいからな。

 

「で、あるのに」

「んー?」

「なんでお前は俺と一緒に風呂入ってんだよ」

「ご主人様が寝てる間に入り忘れたの~。いいじゃん一緒に入ろうよ~」


 故意過ぎるだろ……つうか、

 

「まず、タオル巻け」

「スキルでいつでも見れるんだから一緒でしょ?」


 お前がそれを言うのかよ……

 

「それともご主人様は生で見るのは別腹? 見せてあげようか?」

「見せなくていい、立たなくていい、座れ」


 もう少し恥じらいを持ちなさいよ君。

 

「ご主人様はさ~性欲が溜まったりしないの?」

「……なんだよ急に」

「睡眠中と食事中以外は戦いばっかりでしょ? 四六時中私と居るけど襲って来ないし、私が寝てる間にフィアちゃんとしてる感じでもなさそうだし……もう2ヶ月経つけど溜まらないの?」


 …………そりゃ思春期の高校生だから堪らない訳じゃ無いけども……

 

「…………まあ、その辺は全部終わってからだろ」

「え~、でも早くて後4ヶ月は掛かるんでしょ~? 辛くない?」

「……別れを済ませる際に穂乃香を刺してきたからな……全部終わった後、俺は穂乃香に短くて三日間、長いと一週間近く監禁される事になると思う……今から溜めてても足りないぐらいだろ……」


 ながーいお叱りと埋め合わせとして穂乃香の好き放題にされるんだろう。

 褒美として1日与えただけでアレだったからな。今度は1日なんてものじゃ絶対に済まない。

 

「……刺して来たって……どんな別れ方してきたのご主人様……」

「正攻法じゃ無理だと思ったから悪者になって来た。ついでに日坂を凹ましてきた」 

「ついでで凹まされたんだ日坂君……」

「まあ、でも今回は俺直々に凹ませたからな。次会う時はとてつもなく強くなってると思うぞ」


 強さの片鱗は見えた。だが、その上で凹ませてやった。

 一度目は穂乃香に相手させて、二度目は盗賊に襲われた際に凹ませたが、今回はそれ以上に凹ませた。

 あいつは凹ませる度跳ね上がって来るからな。次は俺もレベリングちゃんと詰まないと追い越されかねないな。

 

「……でも、勝つのは俺だ。あいつにだけは負けてやらねぇ」

「……男の子だね~」

「お前も似たようなもんだろ。ロータスにレベル1勝ち越しただけで大喜びしてたじゃねぇか」

「あいつに負けるとか絶対イヤ」


 声低っ!

 

「ん~……でもやっぱりご主人様も溜まって無いわけじゃ無いんだよね~」


 息子に指をさすな。仕方ねぇだろ、お前がタオルも巻かずに俺の前をチョロチョロするんだから。

 

「ご主人様~……お姉さんが抜いて上げるよ?」

「断る」

「え~! あ、じゃあ性欲処理の奴隷として私を使うのは? 浮気にはならないよ?」

「する訳ねぇだろ! ……お前なんで初めてもまだの癖に、自分の扱いそんな雑なんだよ……」

「――――私はもう、一度死んでるから。私はご主人様の物。ご主人様が私のご主人様だから、私はご主人様に使われて良い」

「………………」


 俺はお前をそんな扱い方する気は無い、と言い掛けたが現状どうだ……?

 こいつに殺しをさせている現状、俺はフィサリスを使ってないと言えるのか……?


「………………」

「私はご主人様が大好き。ツンツンしてるけど大事に扱ってくれるしね。ご主人様は? 私の事嫌い?」

「…………その聞き方はズルいだろ……嫌いじゃねぇよ……」

「……えへへ~」


 嫌いな奴と四六時中一緒に居るかよ、一緒に風呂入るかよ……

 こいつは好きかと聞かず、嫌いかと聞いた。

 こいつは好かれて無くてもいいんだ。嫌われて無い、その事実に喜んでいる。

 ……本当に救いようの無い馬鹿野郎だ。

 

「あ、じゃあ、ご主人様! 私が欲求不満だから、それをご主人様が手伝ってくれるって形ならどう?」

「……フィアに手伝って貰え」

「え~」


 フィサリスへでこピンをかます。


「あうっ」

「俺はもう上がる。お前ものぼせる前には上がれ、んで次こそちゃんと寝ろ」

「……ふふふ、はーい」  

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