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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
メインストーリー
204/346

空飛ぶ剣士VS空駆ける剣士

 急所は外した。だがサンダーブレードで刺した事もあって、しばらくは動けないだろう。

 水奈の治癒回復を使えばそう遅くない内に回復するはずだ。

 さて……

 

「――穂乃香……? なんで穂乃香がお兄さんに刺されてるんですか……?」


 水奈と一緒に駆け付けた神奈……

 

「どうしてですか……穂乃香はあんなにお兄さんに惚れてたのに……」


 こいつの文句も聞かなきゃ駄目か。

 

「答えて下さい……!」

「………………」

「……答えろ! 月島氷河っ!」

「……俺はこれから長期に渡って危険な所に行ってくるんだよ、穂乃香をそこに連れて行くわけにはいかない」

「それでどうして穂乃香を刺す事になるんですか!」

「そうでもしなきゃ穂乃香が止まらないからだろう……現に見てみろ」


 水奈に治療を受けてる穂乃香だが……


「ひょう……くん……」

「穂乃香っ! まだ動いちゃダメっ!」


 もう動き始めやがった……電撃が弱かったのか……?

 ここで穂乃香が復帰して神奈や水奈と組まれると厄介だな……最悪逃げても良いが、穂乃香は追って来るだろう……ここで諦めさせる必要がある。

 

「――! させないっ!」


 俺が穂乃香に近づく前に、神奈が斬りかかって来た。

 右手の剣で受け止める。

 

「……これじゃ完全に俺が悪役だな」

「今、この場でお兄さん以外に、悪い事してる人が居るんですか!?」

「んや、いねぇな。その通りだわ」


 その通りだけれども……

 

「悪いがこればっかりは俺も退けねぇんだわ……退くんなら退け、退かないなら……覚悟持って掛かって来い」

「……私は退きません! どんな理由があろうとも! 穂乃香を傷つけるなんて間違ってる!」


 ……じゃあ仕方ないな……

 

「「『グラビディ』」」


 俺も神奈も宙へと上がる。訓練と違う点は……俺が容赦なく魔剣術を使う所だ。

 

「『ウォーターブレード』」「――!」


 剣で受けたら不味いと神奈は回避を選んだ。正解だな。

 

「はぁあっ!」


 神奈が攻めに転じ、攻撃して来る。

 身体強化込みの神奈は、魔剣術を使わなかった時の俺より攻撃力が高く、速度も速い。

 尤も、剣術の腕では俺の方が上の為、真正面からの斬り合いは悪手だ。

 神奈もそれを理解して空中駆ける移動方法と速さを活かして、立体的に動き回って攻撃をしてくる。

 

「――っ! さっきから水奈が取り乱してたのもお兄さんのせいですね! なんで今になって出て行くんですか!? ようやく……ようやく落ち着いて暮らせると思ったのに……!」


 …………その平穏の為に、俺は行かなきゃなんねぇんだよ……


「…………落ち着いたからだろ。俺が面倒を見る必要が無くなった……神奈――お前、強くなったな。料理も上手くなった。あの2人を、安心してお前に任せられる」

「――~~っ! なんで……なんで今まで褒めてくれた事なんて無かった癖に……! なんで今になって――」

「――俺これから大量の人を殺しに行くんだよ」

「――え……?」

「だから水奈も穂乃香も連れてはいけない。こっちの事はお前に任せるぞ、弟子」


 神奈の頭にポンと手を置いた。それと同時に動きが止まった。

 敵対交戦中に褒められて、その直後に殺伐とした事実を告げられた。

 脳の処理が追いつけなかったのだろう。まあ、それが目的だったしな。

 神奈は動かなくなったまま固まっていたが、その目に降り注ぐ雨とは別の水滴が見て取れた。

 

「……氷君……人を殺せるなら……良いの……?」


 穂乃香……

 

「だったら……だったら私は――」

「ああ……お前はそう選ぶだろう。だからこれは俺の我が儘だ」


 ――お前の綺麗な手を、血みどろに汚したくなんかない。

 

「『我が奴隷に主から命ずる――」

「……やだ……いやだ……!」

「――人を殺すな』……穂乃香」

「あぁ……うぅうう……やだぁぁぁぁぁああああ!」


 日付の変わる深夜頃。

 雨降る屋敷の庭に妹、幼馴染、後輩の3人が泣いていた。

 泣かせた俺は、涙を拭う事も無く、屋敷の門を出て――

 

「――行くのか?」


 腐れ縁に捕まった。

 ……まだ文句言い足りないのが居たか。

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