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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
メインストーリー
203/346

魔法剣士VS魔法拳士

「えーっと……つまりどういう事?」

「水奈の場合、人間サイズ化したクアアとは何しても問題ないけど、人間サイズ化したシアドと性行為をすると精霊の苗床になるって事だよ。大精霊っていうのはこっちが望まない限り何もしてこないが、一度でも望んでしまえば繁殖器として使われてしまう。見た目が理想の姿になるのも、望まれやすいようにするためだ」

「…………意外と怖いんだね大精霊……」


 まあ、本気で大精霊と恋愛して、精霊の子供を宿す事に幸せを感じる人間も居るから何とも言えないな。

 

「で、聞きたいんだが――水奈が好きなのは俺か? それとも俺の見た目をした別物か?」

「――――…………そっか。私、もうお兄ちゃんから離れられないんだ」


 ……水奈が選んだのは本物の俺と……安心した。

 

「ふぅ……これで俺が居ない間に、シアドに寝取られるなんて可能性は無くなったな」

「居ない間にって……毎日一緒に寝てるでしょ、お兄ちゃん」

「………………」

「……お兄ちゃん?」


 …………ごめんな……水奈……

 

「……水奈、俺はこれから遠い所に行く事になる」

「……お兄ちゃん? 何言ってるの……? 冗談でしょ?」

「帰って来るのは長くて1年……短くても半年は掛かると思う」

「ねえ、さっきから何言ってるの……? 冗談でしょ……? お兄ちゃん……私を置いて行くの……?」

「……ごめんな……水「――嫌だ!」


 水奈に床に押し倒された。

 水奈の顔は怒ってるような悲しんでるような、そんな泣きそうな顔だった。

 

「今更……! 今更お兄ちゃんの居ない生活なんて出来る訳無いじゃん! 私を、お兄ちゃんから離れなくしたのはお兄ちゃんなんだよっ!? なのに……! なんで…………私を独りにしないでよっ!」

「……水奈」


 あー……

 ……泣かせちまった……

 

 月島 水奈

 月島氷河 依存度 ERROR

 

 依存させ過ぎた自覚はある……水奈に依存し過ぎた自覚もある。

 でも、こればっかりは俺も譲れないんだ。

 お前らを、戦争に巻き込ませるわけには行かない。

 

「ごめんな水奈……必ずお前の下に、帰って来るから……」

「……っ……いやっ……っ……いやぁっ……!」


 泣きじゃくる水奈の頭を撫でて、唇同士を重ね合わせる。

 

「――……『テレポート』」




 屋敷の玄関外へと転移した。

 悪に最後まで染まりきる……なら文句がある奴の話は聞いてやらないとな。

 

「――氷君、こんな夜更け、雨も降ってるのにどこ行くの?」

「……盗み聞きして、全部知ってるくせによく言うぜ」


 声の発信源……穂乃香は、俺の言葉に不満そうに頬を膨らませた。

 

「盗み聞きするつもりは無かったんだよー? 夜這いに行こうと思ったら中から水奈の怒鳴り声が聞こえてビックリしちゃった」

「……それで? お前どうするつもりだ」

「氷君こそ聞かずともスキルで知ってる癖にー……私も付いて行く」

「駄目だ」

「……どうして?」


 穂乃香が目を細める。おちゃらけた雰囲気は無くなった。

 

「お前、俺と一緒に居たければ犯罪を犯せって言ったら……「――犯す」

「……だから駄目なんだよ。因みに勝手に犯罪を犯したら穂乃香の事、嫌いになるから」


 ならないけど。

 

「むぅ……じゃあ犯罪は犯さない。……氷君は何しようとしてるの? また危険な事?」

「………………」

「……ふーん……私達を置いて行ってまで、危険な事を1人でしようとするなんて、私氷君の事嫌いになっちゃうよ?」

(ならないけど)


 ……………………


「……嫌えよ」

「…………え?」

「嫌いたきゃ嫌えよ。俺はお前に嫌われたとしても、譲れない事がある」

「………………――何それムカつく。……ねぇ氷君、私今日、人生で初めて氷君にムカついたよ……それも凄く……!」


 穂乃香から殺気が飛んでくる。

 ああ、確かに、お前の殺気を正面から受け止めるのは、人生でこれが初めてだ。

 

「だとして……お前はどうする?」

「氷君が言っても聞かないなら仕方ないよね――半殺しにする。そして私と水奈で付きっ切りで看病してあげるからね? 危険な所なんて行かせない」

「……相変わらずお前の愛は重過ぎる……と、するなら俺は――お前を半殺しにしてでも置いて行く」


 穂乃香がフル装備で拳を構えると同時に、俺も剣を構える。

 奴隷の契約上、本来主には攻撃出来ないんだが……今回は許可しよう。

 

「……退く気は無いんだね」

「そりゃ、お互い様だろ」

「「この、分からず屋」」


 俺の剣と穂乃香の拳がぶつかり合う。

 これは訓練じゃ無い、本気の勝負だ。俺もフル装備で戦う。

 穂乃香とは拳での勝負はした事があったが、剣では無い。

 もっとも穂乃香も神奈と稽古をして、剣術相手は何度かしているが……

 俺と神奈を同格だと思って貰っちゃ困る。

 

「『ウォーターブレード』」「『ファイヤーナックル』」


 ――! 言葉ではファイヤーと言いつつ無詠唱を使ったサンダーナックル。

 それに同時にアイスボールも飛ばしてきたか。便利だな無詠唱。

 

「『グラビディ』」


 重力魔法でアイスボールは1カ所に固める。

 

「『ウィンドボール』『ファイヤーボール』」


 穂乃香の魔剣術を対応しながら、アイスボールの塊の中心部に火と風を混ぜ合わせる。

 さあ、弾けろ!

 

「『障壁』」


 氷の割れた破片が障壁に当たる。

 穂乃香はテレポートで俺の後ろに転移した為、くらわずだ。

 思った以上に無詠唱が厄介だな。

 接近戦では俺に分がある。だが、魔法戦、詠唱速度では勝てる筈が無い。

 だが、使う魔法は思考で全て読めている。負ける事は無い。

 だが……まさかこのレベル差で勝負を拮抗させられるとは……

 首、頭の急所は避けている……それを分かった上で穂乃香はそれ以外を確実に防御してるからな。

 こいつの戦闘センスは末恐ろしい。同じレベルだったらきっと負けてたな。

 だが、俺に見えていて穂乃香には見えていないものがある。

 ――周りの状況だ。

 

「『テレポート』」

「――止めて二人とも!」

「――!」


 穂乃香は俺に集中していたため、水奈が近づいていた事に気付かなかった。

 そして……穂乃香、お前はやっぱり優しい奴だよ。水奈の声で動きを止めた。

 ――その一瞬が命取りだ。


「『サンダーブレード』」 

「っぐっ……ひょう……く……」

「穂乃香っ!」


 穂乃香、お前は殺せる人間だが、殺しには向いてない。

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