希望調査
生徒30人、その内の3人は水奈、穂乃香、神奈の為、残り27人。
女子は全員此処に残るで一致したそうだ。12人中7人が戦闘スキル持ちだが、5名は戦いを望まなかった者なので、冒険者として戦力になりそうなのは2名だ。
男子は戦闘組の内4人が、俺も王国も信用できないとパーティーを組み冒険者になると言った。それとは別に戦闘組の1人が世界を見て回りたいから旅に出ると答えた。
うん。勝手にしてくれ。君たち5人はここで解散、お疲れ様。
非戦闘組の内4人が俺に従うぐらいなら王国の方がマシだと、城に戻る事を選んだ。
戦闘力を持たないこの4人は。冒険者として生きていくのが難しいと考えた苦渋の選択の様だ。まあ王国側からしても非戦闘員が4人来たところで、求めてるのはお前らじゃ無い状態だろうけどな。
そこにキタコレ(委員長)が加わった。戦闘員が居ないのは危険だろうと本人は言っていたが、実際は俺に顔合わせ辛い事と、唯一の戦闘員となれば期待の勇者として扱って貰えるだろう、という打算から来ている。
お前も大概懲りないな。まあ、もう好きにしたらいいさ。
と言う事で此処に残る男子は5人、全員非戦闘員だ。
『鍛冶陶芸』のスキル持ちが残ったのはありがたいな。働いて貰おう。剣道部って事は日坂の後輩か。
女子目当てでキタコレ(根暗)が残ったのは残念だ。スキルの『植物豊穣』使って薬草栽培でもして貰うか。
そんな訳で女子12人の男子5人、計17人の部屋を用意すればいいわけだ。微妙だな~17人……割りにくっ。
まあ、その辺はまた後で考えるとして、まずは城に戻りたい5人を返してくるか。
ブルーゼムの城へと移動し、男子5人を置いて来た。もう戻って来るんじゃないぞ。
ブルーゼムに来たついでに拠点に置いた家具、ランタンを回収していく。
もう此処に来る予定ないし良いだろ。
椅子18脚と机が8台、長机2台にベットが8台。
長机は後2台買って椅子と一緒に食堂用にするとして、残り机とベットが8台ずつか。
このベットふかふかでお高い奴なんだよな……屋敷組のベットと取り換えて屋敷にある16台のベットを全部学生寮に置くか。
となると1台足りないのか。良いか、1台ぐらい買おう。
屋敷の俺の部屋を含める空き8部屋から、ベットが無くなるが問題ないだろう。使わないし。
個室机があと9台と、個室椅子は……錬金術でよくね? 休憩スペースの机とソファーは買うか。
後はなんだ、窓とトイレ便器、厨房調理器具と食器、解体包丁に鍛冶道具と調合鍋。
……今回の買い物しんどいな。何回転移を繰り返せばいいんだよ今日。
全ての買い物を終えて屋敷へと帰り着いた。
土地代含めて100万近く飛んだ気がする……あと700万あるから余裕はあるけど、やっぱり割に合わないよな。疲れてるのは俺なのにステータス上がってるの日坂だしな。
まあ実際にこれから面倒見て行くのは日坂だし、俺の奴隷にするかと聞かれたら拒否するけども。
魔剣術の子? あれは日坂がそういう条件で取りつけやがったから、しゃあない。
さて予定は詰まっている。まだまだする事があるんだよな残念ながら。
30あった席が20となった青空教室で再び教卓の前に立つ。
水奈達3人が座ってる意味は特にないよ。話の行く末が気になってるだけ。
「はーい席に着け、静かにしろー。俺が居ない間に屈服主従を結んでいた奴は和解主従を結び直したな」
ステータス半減状態じゃ役に立たないからな。
しかし和解ねぇ……敵対し屈服させた相手との和解か。解放では無く主従は続くあたり微妙じゃないか? でも、まあ確かに互いに和解していなければ結べはしないか。
「これから君たちの適正魔法と働く内容の説明をして行く。まず適正魔法だが、この世界には魔法が使える奴と使えない奴がいる。それを左右しているのが適正だ。適性が無ければどんなに訓練しようと魔法は使えない。逆に適正さえ有れば、非戦闘スキルを与えられた奴でも戦う事が出来る」
まあ、魔法に限らずスキルは磨けば身に付くんだけどな。
日坂なんて剣術も雷魔法も魔剣術も、全て訓練して身につけたものだからな。
与えられた固有スキルだけに頼るのは良い手では無い。
「適正魔法が無くても悲観する事は無い。魔法は使えないが戦闘スキルは努力すれば身に付く。固有スキルって言うのは通常スキルの延長線でしか無い物がほとんどだ。ごくまれに特殊なのもあるけどな」
俺みたいに。
「通常スキルって言うのは努力した分だけ身に付く。非戦闘系の固有スキルだからと言って自分に戦闘は向かないと勘違いしない様に。戦いたい奴は戦っていい。現に俺も日坂も固有スキルは非戦闘系だ」
とりあえず一人一人に適正魔法の有無、何の適正かを説明してやった。
「――……さて、それらを踏まえた上で何の仕事をするかを決めて貰う。冒険者として働くのは何人でもいい、料理出来る奴は2人は欲しい、鍛冶に1人、調合に1人、解体に2人かな。あー後、5歳児の世話係1人、女子限定な。冒険者では無い奴は、共通して暇な時に掃除を分担して行って貰う。風呂掃除係と洗濯物係は別に作る」
まあ、こんなもんだろ。
それぞれに希望調査を行った所、戦闘組だった女子2人、元非戦闘員の男子3人、それと闇魔法の適性があると知った元非戦闘組の女の子1人の、計7人が冒険者を選んだ。
最後の1人は固有スキルが生活系スキルだったものの、本人は戦いに興味がある様だ。
やっぱ憧れるよね魔法使うの。しかも闇。
男子3人は魔法の適正は無かったが、戦う意思はある為、日坂先輩からの剣術指導が行われる。剣が難しそうであれば槍を教えれるロータスが居るし大丈夫だろう。
鍛冶は固有スキルを持った男子が行う事に決まったが、全然決まらなかったのが解体。
解体をしたいと言う女子は居なかったため、冒険者の男子1人と、鍛冶の1人が兼任して行う事になった。うちのリノは迷いなくモンスターを解体するというのに……リノ程肝の据わった子は居なかった。
代わりに料理と調合が3人で兼任。風呂掃除と洗濯物は4人で兼任となった。なんか女子特有の仲の良い子と一緒にやる感。
まあ、風呂は大浴場だし、洗濯物や料理も17人分だから多くて問題は無い。
料理と調合は固有スキル持ちの子が居る為安心できる。
そして残った男子1人と女子1人……
「……高橋、お前薬草栽培係な」
「……なんですか……それ?」
「調合でポーションとか作るのに必要な薬草を、お前のスキルで育てるんだ」
今回残った中で一番要注意人物のキタコレに、洗濯物や風呂掃除は任せられない。
解体なら考えたが、料理も調合も駄目だ。現にコイツの今の頭の中は――
(調合……媚薬……いや、惚れ薬なんか作れたり……)
――こんな状態である。
……いや、別に良いんだけどさ?
「……高橋……お前が調合で媚薬なり惚れ薬なり、作ろうと思うのは勝手だが、それを水奈や穂乃香に使おうなんて考えでもしたら――斬り飛ばすぞ」
「ひぃっ!」
あ、あかん。またやってしまった。
キタコレに白い目が向く。嫌でも仕方ないと思うんだよね。
ほぼほぼコイツの自爆じゃん?
そして最後にリノの世話係の女子なんだが……まあこれに関してはリノの立ち合いも必要だから後に回そう。
「話はこれで全て終了だ。後はどうにか慣れてくれ。あと君たちが住む家が完成するまでにもう少し時間が掛かる。それまでの間うちの屋敷で休んでくれて構わないから、後は自由に過ごしてくれ」
さて……家作るか……




