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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
メインストーリー
195/346

これから

「君たちの進路選択肢は3つある。一つ目は日坂の奴隷となってその庇護下に置かれる事、二つ目はブルーゼムの城に戻って王国の庇護下に置かれる事、三つ目はどっかその辺の国や街に行って暮らす事。二つ目と三つ目は奴隷契約を解除した上でだ」


 クラスがざわざわとしている。静かにしろって言ったじゃん。


「おい、奴隷じゃ無くても良いのか?」

「本人が望むなら別に良いだろ。自己責任だ」


 嫌がる奴を拘束するつもりは無い。

 俺らがこいつらを置いて行ったのではなく、こいつらが俺らの下を去って行ったのであれば、こいつらがどうなろうが水奈に責任は無い。

 

「ただ今から説明する事を良く理解した上で、選択を選ぶ様に」


 間違った認識ぐらいは解いてやろう。これっぽちも思わないが仮にも先輩だからな。

 

「まず、お前たちが思っている勇者と、この世界における勇者の違いについてだ。勇者と聞けば俺らの世界では絶対的強者で、どの国の権力者にも優遇される様な存在だっただろう。――だがこの世界では違う。まず勇者は人間が扱える『スキルの限界を超えれる可能性を持った』だけの一般人でしかない」


 強力なスキルを持つことが出来る。でもそれだけだ。

 

「1ヶ月ダンジョンに潜ってレベルアップしてきた戦闘組も、この世界で10年、20年と戦ってる戦士達には到底勝つことは出来ない。君たちを倒した日坂だって俺らの中での強さは5番目ぐらいだ。この世界において、勇者とは絶対的強者では無い」


 1,2番がほぼ同列でフィサリスとロータス、3番俺、4番目がラミウムで5番6番がほぼ同列の日坂と穂乃香になる。ラミウムがそこまで攻撃的では無いから上下するかもしれないが、大体5番ぐらい……もしかしたら6。

 

「そして他国に行ったからといって優遇して貰えたりもしない。この世界における勇者とは魔族軍に対する戦闘兵器でしかない。もし国から必要とされたのであれば、それは戦闘兵器として利用したいだけであり、それ以上の価値は無い。また、世界にとって魔王さえ倒せればそれで良い勇者は、32人も居る。だから使い捨てになろうが、犠牲になろうが数人残れば構わないという思考の権力者も居る。お前らに指導していたダリア一派もその一つだ」


 教室が騒めく。壁が無いからさほど煩くは感じないが、話は終わってないからちゃんと聞きなさい。

 

「そして、魔王が倒された後の勇者の扱いだが……世界からしてみれば、強くなる可能性を持った身元の無い孤児だ。ああ、魔王を倒したら帰れるって言う奴、あれ嘘だから。元の世界に帰れる方法は今の所、無い。隣のグリントスって国に80歳になる先代の勇者が居るから、聞いてみれば確認は取れる」


 今日一番で騒がしくなる……まあ、予想はしてたけどね。

 

「嘘だっ!」

「そんなの信じられるか!」

「そもそもどうしてそんな事分かるんですか?」


 前半2人は椅子没収。

 手を上げて発言してくれた子の質問は答えましょう。

 

「俺のスキル、『鑑定(極)』は見た相手の現在と過去、その全てを知る事が出来る。そしてレベル20を迎えるごとに増える固有スキルのうちの一つ、『千里眼』でブルーゼム全域ぐらいの範囲を見渡す事が出来る。だからまあ、俺の視界に移る世界での事で知らない事はほとんど無い」

「……かなりチートですね」


 俺もそう思う。

 

「だから君たちが今何を考え、思っているのかって言うのも分かる。右から2列目前から4番目が今お腹すいている事も、左から3列目の一番後ろが元の世界に残してきた弟に会えないと打ちひしがれている事も、一番左の前から2番目が俺のスキルも話自体も全く信じていない事も、全て知っている」

「「「――!?」」」

「信じない奴は信じないでもいいぞ。その結果どうなろうが俺の知ったところじゃない。ただあまりウザいと黒歴史を一つ一つ公開してやるからな。……高橋健太郎、邪念がウザい。見えてるって言ってんだろ」


 あ、キタコレ(根暗)に白い目が向けられた。

 ……名指しは止めてやるか。

 

「俺のスキルで見た限り、ブルーゼムにもこの国にも先代勇者の記憶にも、元の世界の帰る手段は見当たらなかった。俺もこの世界の全てを見た訳じゃ無いからまだ分からないが、帰れる確率は無い物だと思った方が良い。この世界で生きていく事になる、それを理解した上で今後の身の振り方を考えろ」


 ほとんどの生徒が、まだ元の世界に帰れないというショックから立ち直れてないな。

 でも俺も早く休みたいし説明は聞いて貰おう。

 

「それでだ。日坂の奴隷をこのまま続ける者にはこちらから衣食住を提供してやる。ニートは困るから働いては貰うが、戦闘が出来る奴は冒険者として面倒見てやるし、戦闘が出来ない者は料理や解体、掃除でも構わないから貢献すれば良しとする。子供好きの奴がいれば屋敷に住む五歳児の面倒を見るでも構わない」

「おい、ナチュラルにリノちゃんを押し付けるな」


 ……仕方ないだろ。しばらく俺、不在予定なんだから。

 

「奴隷を辞めてブルーゼムの城に戻りたい奴は城まで送ってやる。ただ城は今クーデターが終わったばっかりでお前らに構ってる暇は無いだろう。ダンジョン遠征もしばらく再会出来ないだろうから、ニート生活を送りたい奴はそっちに行け。戦争が始まればそのまま駆り出されるし、魔王が倒されたら用済みで追い出されるけどな」


 ニート生活をしてたのお前だろ! って思った奴、椅子没収。

 さっき騒いだ2人に返還。もう騒ぐんじゃないぞ。

 

「俺だって意味無く部屋から出てなかった訳じゃねぇよ……外に転移して実戦経験詰んでたんだ」

「月島先輩はどうして空間魔法が使えたんですか?」


 質問の際は手を上げて発言しなさい。

 質問に答えましょう。

 

「俺は他人が訓練し経験した記憶を見て自分と重ね合わせ、そのスキルを自分の物として使う事が出来る。転移してきた直後、召喚の間に居たクーデターの主犯の奴から貰ったんだよ」

「……先輩のスキル、チート過ぎませんか」


 俺もそう思う。

 

「城に戻るでも無く、俺らの奴隷になるでも無い奴は何処へとなりでも行け。そこら辺のモンスターにやられて野垂れ死ぬなり、苗床にされるなり、盗賊に殺されるなり、盗賊として生きて行くなり好きにしろ。身元不明の無一文、身寄りのない孤児風情がその足でどこまで生きれるのか試してみればいい。勇者だから誰かが拾ってくれるなんて考えてるのなら大間違いだ。この世界にとって勇者は使い捨ての戦闘兵器でしかない。冒険者として生きていくならそれでも良いだろう、宿代と食事代を稼ぐところから始めるんだな」


 これは本当は別にしてやる必要の無い事だ。ただ、同郷のよしみとして慈悲で保護してやったに過ぎない。

 こいつらを奴隷にしたところで食費、家具、宿を用意しないといけないので出費が増えるだけだ。微かに増えるステータスのメリットに対しデメリットが多すぎる。

 これで文句を言い、出て行きたいと言うのなら勝手に出て行かせる。

 その先でどうなろうが自己責任、俺の知った事じゃない。

 衣食住を提供してやるんだから奴隷化はさせて貰う。指示の無視や、反抗などされたら堪ったもんじゃない。呼び出された事への文句はグリオスか魔王、世界に言え。

 

「自分の人生だ、自分で選べ。奴隷化を断った奴の分の部屋は用意しないからそのつもりで考えろ。これはあくまで俺らがお前らの同郷の先輩だから、善意で面倒を見てやるって話だ。俺らの義務じゃ無い。そこをはき違えるな」


 ……まあ、こんなもんだな。

 

「話は以上だ。一時間やる、自分のこれからの人生、よーく考えろ」

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