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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
メインストーリー
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クーデター1

 ブルーゼムの城に到着した後、私と水奈はお兄さんに王妃の居る執務室前へと、連れて来てもらった。

 お兄さん曰く、王妃に付きっきりで護衛せずとも、執務室へ来ようとする武装した兵士を食い止め、突破させなければそれで良いらしい。

 そのため私と水奈は執務室前で防衛戦となる……のだけど……

 

「…………? 美鈴? どうしたの?」

「……ううん、何でもないよ」


 私がジッと見ていた事に対し、水奈が不思議そうに首を傾げた。

 水奈のコクりと首を傾げるの可愛いよね。他の女子とかだったら表情にあざとさが出るのに、水奈の場合は本当に表情が不思議そうというか……言い方を悪くすればアホっぽい。

 でもそこが可愛い。計算された上で可愛く見せてる女子は違って、素でこれをやってるのが凄いよね。

 今回防衛戦と聞いて、水奈はお兄さんと訓練した盾術を活かす時だと張り切っている。

 張り切っていると言うよりかは、やる気に満ちているの方が正しいのかな?

 少なくとも私よりは。

 私はやる気が無いわけじゃない、やる気が出ないのだ。いや、屁理屈じゃ無くて。

 それもこれも、大体お兄さんのせい。

 お兄さんの言葉にどうも引っ掛かりを感じてしまった。

 まず、ここの担当が私の水奈の2人だけと言う事。防衛戦というなら確かに盾術が使えて防御力のステータスが高い水奈が守り、敏捷力の高く空中も移動できる私が攻撃に回るのは良い配置だと思う。前衛後衛でバランスもとれている。

 でもよく考えて欲しい、相手は王妃を殺そうとして来る人達だ。

 水奈は対人相手に攻撃なんてした事無いし、私はお兄さんや穂乃香相手に稽古はした事あるけれど、実際の斬り合いはした事など無い。そして私自身、対人戦が得意だとは思わないし、人を斬るとなれば難しいと思う。

 そんな対人戦に向かない二人が対人局面に立たされている。あのお兄さんがその事に気付かない筈が無い。

 現にお兄さんは敵を食い止めろと言ったけど、敵を倒せとは言わなかった。

 それはきっと人相手に倒さなきゃと考えると、緊張と焦り、恐怖で動きにくくなるからだと思う。

 それらを考慮した上で辿り着いた予想なんだけど……

 此処ってそこまで人攻めて来ないんじゃない? ……というか、

 私達体良く避難させられたんじゃない? 敵戦力が全然来ない所に。

 あのシスコンならやりかねない……このまま敵が来ないなんて可能性もありえる……

 

「…………過保護野郎め……」

「……? 美鈴?」

「あ、うんうん。大丈夫、大丈夫だよー」


 とりあえず、このクーデターが片付いたらとっちめる。

 

 

 

 城に着いてから俺は穂乃香ちゃんと共に空間魔法によって食堂へと転移した。

 俺は城内で見た事があるのは召喚の間と地下牢入口の部屋、召喚の間からそこにたどり着くまでの廊下ぐらいの為、食堂を見たことが無い。

 初めて見た食堂の風景は天井やや下、上空。空中から見下ろした風景だった。

 

「うおぉっ!?」

「『グラビティ』」


 二人揃って落下しかけた所を、穂乃香ちゃんの重力魔法によって空中に留まり、下のテーブルにはぶつからずに済んだ。

 ……心臓に悪い……

 

「穂乃香ちゃん……どうして転移先が空中なの……」

「……建物内の転移って難しいんですよ……建物の内部構造を把握した上で、現在地から移動地点までの距離、方角、高度の正確な座標を知らないといけないんです。……床の上に転移しようなんてしたら足が埋まる可能性がありますし、場合によっては良くて家具、悪いと人体と物理的に合体しかねませんよ? 氷君の転移の正確さには一般人では到底及びません」

(だから全く違和感を感じさせない様に、注意を払いながら転移してくれている氷君を! 敬い、称え、感謝せよ! 日坂!)


 なるほど……転移って難しいもんだな。

 氷河はポンポンと簡単にしている様に見えて、あれは千里眼あってこその正確さだったのか。

 恐らく一般はリノちゃんみたいに視界の先、数メートルぐらいが普通なのだろう。

 距離が離れれば離れるほど座標情報の正確さは薄れるし、視界に移らなければ記憶と予測を頼りにするしか無くなってしまう。

 そう考えると穂乃香ちゃんは城の入口から食堂までの距離と方角、高度を、記憶と予測で補完してみせたのか。……やっぱりこの子は天才の域だな。

 氷河みたいに千里眼がある訳でも無いのに、長距離転移を可能としてるフィサリスさんも半端ないな。あのロータスさんと張り合うだけの実力者って事か。

 俺と穂乃香ちゃんは今、テーブルの真上の空中に佇んでいる。

 それはつまり、向かい合って座る人達の間に居ると言う事であり、当然座ってる者からの注目を集める。

 

「如月さん……!?」

「日坂先輩だっ!?」

「今、どこから現れたんだ!?」

「なんで浮いてるの!?」

「神々しい……」

「日坂先輩……指名手配になってるのにどうして城に……」


 穂乃香ちゃんは俺と同時に床へと着地する際軽く手を広げていた。

 重力魔法でゆっくりと着地した為、目の前に居た生徒からは天から下りてくる女神様の様に見えたのかもしれない。神々しいって言っちゃってるし。

 でも……これからの俺の交渉次第では、みんなから見た女神様は鬼へと変貌するかもしれない。

 床に着地してすぐ、穂乃香ちゃんは食堂の入口へと転移した。

 交渉は俺の仕事だと示す……と言うより、みんなの逃げ道を塞いだという方が正しいんだろうな……

 退路は塞がれた。被害者を減らせるかは俺の説得次第だ。――やるしかない。

 

「食事中に済まないが、みんな聞いてくれ――――」

 

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