眠りにつくまで
「お兄ちゃん、何してんの?」
水奈の部屋にて、リノをこねくり回していた所、水奈から声が掛かった。
まあ、じゃれ合いと呼ぶには俺からの一方的過ぎるし、リノは全く抵抗してないしで、傍から見たらよく分からないよな。
因みに抵抗が無い理由は俺にも分からない。でも抵抗して来ないし良いかと思ってこねくり回していた。
「何ってリノの細かいサイズを測ってたんだよ」
「サイズ? お兄ちゃん、リノちゃんの服でも作るの?」
「いや、作らないけど」
「……? じゃあなんでサイズ測ってるの?」
「等身大リノ人形を作るためだよ」
「……は?」
水奈に「は?」って言われた。低い声で「は?」って言われた。
お兄ちゃん割と傷付いたぞ。
「…………お兄ちゃんってロリコンなの……?」
そんな悲しい目しないでよ。
身長150㎝の水奈をロリに含めるならロリコンでもいいが、基本的そんな趣味は無い。
その誤解は早めに解かなければなるまい。
「フィサリスに渡すんだよ、俺のじゃない。MPポーションを100個作ったら褒美として渡す事になってる」
「なんだお師匠様の為かぁ。お師匠様、可愛い物好きだもんね」
その可愛い物に、水奈自身含まれている事に気付いてるのだろうか。
実は可愛いと自画自賛してる形になっている。可愛いけど。それに気付いてない所がまた可愛い。
そしてフィサリスの可愛い物趣味は、ラミウムやロータスだけでは無く水奈にもバレてしまっている。
まあリノがフリフリの服着たままだったり、人形を持ったままでリビングに現れる事が度々あったからな。出所を辿れば自然とバレるよな。
「でも、一緒に住んでるのに本人の人形って要る? 着せ替え人形にしたり、抱き枕にしたりしても、リノちゃんが嫌がってるとこ見た事無いけど」
リノは寛大というかノリが良いからな。
着せ替えれば決めポーズまで取るし、抱き枕にすればくっつき人形並に離れなくなる。
リノ人形……フィサリスには今後必要になるかもしれない。
帰るべき場所があれば、それは生き抜く力になる。心をすり減らす毎日を送る事を考えて、救済アイテムとして人形を渡す……下手するとホームシックを促しかねないが、まあそうなった時は帰らせてやればいいか。無理してまで着いて来いとは言わない。
「……今日みたいに、リノと一緒に寝れない日に抱き枕として使うんだろ」
「あ~、一日交代だもんね」
リノの全身を測り終えた所でベットに向かう。
キングサイズは3人で横になっても問題なく、いつもより広々としている。
広々としているのだが、俺が真ん中で2人は俺の腕に頭を乗せるので使用スペースはいつもと変わらない。でも今日は、この形で良かったと思う。
「……パパ?」
「どうしたのお兄ちゃん?」
「……なんとなくだ」
俺は水奈とリノを引き寄せる様に抱き締めた。
明日が決戦で、早く寝ないといけない事は分かってる。
でも、もう少しだけ、この3人で寝る時間を味わっていたいと思ってしまう。
もう少しだけ、もう少しだけ……もう少しだけ――――――――――