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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
メインストーリー
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『殺せない』

「人を殺せないのであれば無理に人殺しとして立つ必要はありません。絶対に人を殺さないと言うのも一つだと思います」

「……絶対に殺さないって言うのは、殺せないと同じなんですよね?」

「同じですよ。殺せないのであれば殺さなくていいんです。最初から一択でそう決めているのであれば、誰が相手であっても行動に迷いは出ないでしょう。当然殺せない方が戦闘においての立ち回りは難しいですし、急所に攻撃が出来ない分不利でしょう。それでもなおその在り方を貫き通すのであれば、それを弱さとは呼びません。信念と呼ぶんです」


 絶対に人を殺さないと言う信念……でもそれを実現するとなると――

 

「――殺す選択肢を持つ相手より、圧倒的な力が無いといけませんよね……?」

「はい。殺せる人より厳しい茨の道ですね」

「人より力の劣っている俺が、殺さない信念を持つのは、ただの足手纏いでは無いでしょうか?」


 それこそ今日盗賊と戦った時みたいに。

 俺は盗賊を殺せなかったから、囲まれて殺されそうになり、氷河とロータスさんに助けられた。


「もし劣っていると言うのが月島様と比べているのでしたら、それは比べる相手が悪いです。月島様は規格外と言っていい。彼の持つスキル、経験は私でも到底敵いません。ですが月島様も万能ではありません。もし私と戦えばレベルとステータスに差がありますから勝つのは私でしょう。劣ってるものがあるならば、優れているもので戦えば良いのです。私が魔法戦では無く白兵戦で戦うように、フィサリスが白兵戦では無く魔法戦で戦うように、得意分野と呼べるもので勝てば良いのです」

「……俺には……レベルもステータスもスキルも戦闘も経験も……何も勝てる物はありません」

「そんな事はありません。日坂様には持っているだけで危険視され牢に閉じ込められるほどの、強力なスキルがあるではありませんか」

「奴隷強化ですか……?」


 確かに強力なスキルだけど……

 

「氷河も奴隷術を持ってますよ」

「ですが月島様は恐らく、その効果を十分には発揮されないでしょう。彼は他人にへの関心が薄い、奴隷を増やすつもりはあまりないと思われます」


 確かに。

 神奈のクラスメイト達を、全員俺の奴隷にさせようとしてるしな。

 

「逆に日坂様は人に対して関心を持ち、接していく性格をお持ちです。冒険者や騎士などの方々と交流を増やし親睦を深め、志を共有できる同士を集めて契約者を増やして行けば、圧倒的なステータスを、力を手に入れられると思います。

 月島様が『鑑定(極)』というスキルで、多くの人達から経験を得て、スキルで圧倒するのであれば、日坂様は『奴隷強化』というスキルで、多くの人達との繋がりを増やし、ステータスで圧倒すれば良いのではないでしょうか」

 

 …………人との繋がりか……

 昔から1人では出来ない事が多くて、友達と協力して物事に取り組む事が多かった。

 異世界に来てもそういう所は変わらないのか。

 俺のスキルは人との繋がりを作り、互いに強くなるスキルだ。

 確かにこれならいつか氷河に追いつけるかもしれない。

 追いつけるかもしれないが…………

 

「……強くなる為に奴隷を増やすのはして行こうと思います……ただ、人を殺さないかどうかはもう少し考えてみようと思います」

「はい。しっかりと自分の納得のいくようになさってください」


 ロータスさんはワインを口にした後、星だらけの夜空を見上げた。

 俺も同じく月の無い夜空を見上げ考える。

 氷河は今、人を殺す事に関係する何かをしようとしている。

 もし俺が人を殺せない選択をしたとしても、それでもいつかは追いつけるかもしれない。

 ただその場合……あいつの隣には立てなくなるんじゃないか……?

 あいつを1人にしていいのか……?

 考えても答えは出ず、気を紛らわせようと飲んだ赤ワインは、苦く感じた。

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