ノルマ
水奈達と合流してからが慌ただしかった。
頃合いを見て作る予定だったMPポーションを入れる瓶を、アクシデントにより作れなかったため、急いで作って中身を入れていく。
作る作業と入れる作業を分担して、フィサリスと協力して行いながら、
突如召喚されて説明もなく放置された水奈とラミウムが、詳細を求めて来たため、内容を一部ぼかして説明しつつ、
穂乃香から神奈に全勝したという報告も受けた。
この間、大活躍した並列思考。
あいつマジで全部勝ちやがった……全敗した神奈は落ち込んでいたが、それ以上に気を落としている日坂を見て、今日の夕食に日坂の好物を作ると意気込んでいた。
健気というか良妻というか、あいつ良い奴だな。
日坂の事は神奈に任せてれば大丈夫だろう。俺からできる事なんて何もない。
MPポーションを全て瓶に移し終わった後、道具を回収し屋敷へと戻った。
夕食前。石英を取り出して、瓶を作っていく。
先ほどは急いでいたため、面白みがない普通のフラスコの様な形に作ったが、折角ならばポーションらしく香水瓶の様な凝った作りにしたい。
試作品も含めて大量に作っていると、ガラス細工に興味を持ったリノが現れ、不用意に触れて割らないようリノをフィサリスが抱き上げた。
「ご主人様は器用な上に凝り性だね~」
……まあ拘りはするな、割と。
「フィサリス、空間収納に空きはあるか?」
「え? あるけどどうし――」
鍋、お玉、すり鉢、すりこぎ、薬草と木の実を空間収納から全て取り出す。
それを見たフィサリスが固まってしまった。
「これ全部渡しておくから、暇な時に調合を頼む」
「…………癒しのハーブとオーブの実、多すぎじゃない? あんな短時間に狩り尽してきたの?」
「植物として繁栄に必要な分は最低限きちんと残してきた」
フィサリスは驚きを通り越して呆れた様子。
解せぬ。全部見えてるんだからな、俺だって傷付くんだぞ。別に良いけど。
フィサリスが大量の素材を次々と空間収納に入れて行く。
「そこにある瓶も全部頼む」
「……こんなに作るの~? ご主人様、私を働かせ過ぎじゃない?」
「今まで全く家事をしてなかったんだから、このぐらい働け」
フィサリスは不満を垂らしながらも瓶を回収して行った。
「じゃあご主人様? 働くからには私もご褒美が欲しいなっ!」
「働いてから言え」
「え~、今日作ったじゃん」
「一ノルマ100個で、達成する毎に等身大リノ人形を作ってやろう」
「多いし、それ自分で作った方が早いじゃん……」
うん。確かに。




