調合
穂乃香と神奈の勝負が始まった。
俺はリノをフィサリスに預ける。
「フィサリス、リノの相手をしながら周囲の警戒を頼む」
「……? 良いけどご主人様何処か行くの?」
「素材収集だ、すぐ戻る」
千里眼で見える範囲にはいるけど、一応フィサリスに警戒をしてもらう。
俺は空間転移で薬草の多い地帯へと向かう。
地面すれすれを這うようにウインドカッターを飛ばして一気に刈り取る。薬草だけを空間収納に入れて行く。
いくつかのポイントでこれを繰り返した後、次に木の実のなっている木が多い地点に転移する。
熟した木の実に重力魔法を使って落下させ、地面に着く直前に浮かばせる。
そのまま手元まで浮遊させて空間収納に入れる。
他の地点も回った後、今度は洞窟へと向かい手ごろな金属と結晶を錬金術で採掘する。
手に入れた鉄塊や石英を空間収納に入れてフィサリス達の下へと戻る。
「あ、ご主人様おかえり~……って何それ……鉄?」
鉄塊を取り出して錬金術で変形させていく。
作るのは鍋が一つとお玉一つ。レードルと言うよりお玉である。
これにて準備完了。
「フィサリス、これからお前に仕事を与える」
「鍋におたまって……まさか」
「そうだ。調合をして貰う」
「……それは良いけど何作るの? 材料は?」
「MPポーションを作って貰う。材料はさっき採って来た」
空間収納から薬草と木の実を出す。
「癒しのハーブとオーブの実……この短時間でこんなに採って来たの?」
「空間収納にもっと入ってるぞ」
「ご主人様はいったい幾つ作るつもりなの……」
幾つあっても問題ないだろ。
うちのメンバーはリノ含めてみんな魔法使うんだから。
特に魔法メインで戦う水奈と、元々MPが少ないのに飛び回る神奈の2人が無くなりやすい。魔剣術なんかの複合スキルはMPの消費が少ないし、フィサリスはMPが多い上一撃で仕留める事が多いから消費自体は少ない。
でも使う事に変わりは無いからあって困る事はないだろ。
「作ったポーションを入れる物とかは?」
「石英を採って来た。錬金術で瓶にして入れる」
「割となんでもありだね、ご主人様は」
俺がというより錬金術先生がだがな。
錬金術で釜戸を作り、鍋を置く。
近くの木にウィンドカッターを当て、枝を集め薪に使う。ついでにすりこぎに使うのも選らぶ。すり鉢は土から錬金術で作る。
「じゃあ、よろしく」
「……調合なんて久しくやってないんだけどなぁ」
フィサリスが調合を積極的に行っていたのはスラム街に居た頃。金銭的に自由な訳でも無くMPが少なかったフィサリスは、MPポーションを買うより作った方が良いと考え調合を行っていた。
接近戦のロータスは武器と体力さえあれば戦い続けられたが、フィサリスは魔法専門のためMPが無くなってしまうと戦えない。負けたくないが故にMPポーションを作ってまで戦い続ける精神は尊敬するよ。
フィサリスに手作りのすり鉢とすりこぎ、材料の薬草と木の実を渡す。フィサリス一人だと限度があるので俺も手伝う。すり鉢をもう一つ作り、薬草と木の実を入れて擂りおろして行く。
フィサリスと2人でゴリゴリしていると、リノも興味を持ったのかすり鉢をのぞき込んでいる。すりこぎを渡すとリノも真似して回してみるが、力が足らない模様。なので解体の時と同じく手を添えて一緒に行う事にした。
俺とリノ、フィサリスの3人は、穂乃香と神奈がガチバトルを行っている隣で調合に励み続けた。




