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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
メインストーリー
16/346

感情と数値

 夕食を終えて、シャワーを浴び、水奈の部屋へと向かう。

 今日はいつもより早めに来た。

 まあ、理由なんて一つだ。

 

「水奈、俺だ」


 返事は無い。

 だが、扉は開いた。

 

「お兄ちゃん!」


 水奈が俺の胸へと跳び込んできた。

 

 

 月島 水奈

 恐怖度 95

 

 

 水奈は今、俺の胸の中に居る。

 胸の中に居て95だ。

 つまり、ついさっきまでは100だったのだ。

 とりあえず中に入って扉を閉めよう。

 穂乃香や神奈ならまだしも、その他に見られるのは色々と不味い。

 幸い近くに人はいなかったので、誰かに見られる事は無かった。

 俺は水奈を抱き締めて、落ち着くまで頭を撫でながら待つ。

 

 

 月島 水奈

 恐怖度 85

 

 

「ごめんねお兄ちゃん……もう大丈夫。ありがとう」

「俺は別に構わないが……どうしたんだ? 何かあったのか?」


 知っている。お前が全然大丈夫じゃ無い事も。その理由も。

 でも俺はそれを知らないはず(・・・・・・)なんだよな。

 

「美鈴が……怪我したの……前でも怪我する事なんてよくあったのに……今はそれが命に関わると思うと…例え治せるんだとしても…………見たくない……」

 

 水奈も神奈も運動部だ。部活で怪我する事もあるだろう。

 でも、部活で怪我するのと、戦いで怪我するのでは全く別だ。

 戦いでの怪我は、死に直結する。

 今回は軽傷だった。でも次回は重傷かもしれない。

 神奈が怪我した。次回は穂乃香かもしれない。

 大切な人達を失うんじゃないかと、水奈は恐怖していた。

 そんな水奈に対して、ほんのわずかでもその内慣れる(・・・・・・)と思った自分が、

 心底嫌になる。

 

「水奈は優しいな」


 本当に……優しすぎる……

 

「そんな事ないよ……それにお兄ちゃんの方が優しいよ。毎日私を心配して来てくれるんだもん」


 お前の兄は、お前の思ってるほど良い奴じゃない。

 今、お前を抱き締めてるのだって、恐怖の数値を下げるための作業・・になりかけてる。

 数値に囚われ始めた俺は……あと何回、感情から水奈を抱き締めれるのだろうか。

 ただ純粋に、俺の心配までする水奈が、尊くて仕方ない。

 

「水奈」

「ちょ、ちょっと!? お兄ちゃん!?」


 水奈のおでこにキスをする。

 そんな事をすれば、水奈の恋愛度が上がってしまうかもしれない。

 でも今のは、今のキスは、確かに俺の感情だったんだ。

 

 

 月島 水奈

 恐怖度 55

 月島氷河 親愛度 ERROR 恋愛度 60

 

 

 恋愛度が恐怖度を上回った。

 上がる恐怖を他の感情で塗りつぶせれば。

 そう考えてしまった時点で、俺の行為はまた一つ、感情による物では無くなって行く。

 俺は……どこまで堕ちて行くんだろうな。

 

「お兄ちゃん……今日も手、握っててくれる……?」

「ああ。もちろんだ」

 

 俺はベットに横になる水奈の手を握る。

 これが、感情による物か、水奈の数値の為かは、

 俺にはもう分からない。

 

「……お兄ちゃん……」


 水奈が眠った。

 俺は繋いだ手を放す。

 放したその手に微かなぬくもりと、虚しさを感じる。

 立ち止まってる時間は無い。早く行くとしよう。

 俺は水奈の部屋から出て、自分の部屋へと向かった。

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