反省
屋敷へ戻った風呂上り。
リバイアサンと戦わなくて良かった~、っとフィサリスが思ったせいでラミウムに即バレ。
現在二人揃って正座中。
しかも俺だけリノと言う重し付き。いや、そこまで重くないけど。
長時間になればなるほど辛くなるでしょコレ。
「何か不満がおありですか?」
いいえ、ありません。
因みに、最初から反対しており直前で俺を止めたフィアは御咎めなし。
ラミウムから話は伝わって、水奈は涙目で怒っており、神奈は呆れ顔、穂乃香は仕方ないなぁと微笑み、フィサリスへは嫉妬。
穂乃香はあまり心配していない様。というか、うん。相変わらず信頼が重い。
「お兄ちゃんはどうして無茶ばっかりするの!?」
涙目の妹に怒られる兄。
泣かれるのには弱いんだよなぁ。どうして、か……
大元を辿れば、クーデターを起こそうとしてるリコリスのせいであり、そもそも俺たちをこの世界に召喚した国王のせいであり、そのきっかけとなった魔王のせいなんだけど。
外的要因ではなく内的要因があるとすればそれは――
「――俺がお前の兄であり、男であり、月島氷河であるが所以だな」
結局のところそこに行き着く。何故かと言われれば、俺が『俺』であるからだ。
俺の解答を聞いた水奈は目を大きく見開き――
「――お兄ちゃんの馬鹿!」
滅多に出さないほど大きな声で怒鳴り、リビングから出て行ってしまった。
残り三名からの視線が痛い。特に神奈からの視線が痛い。
「……お兄さん、馬鹿ですね」
うん。そうだね。俺もそう思う。
「あんな言い方したら、無茶してるのはお前のせいだって水奈からは聞こえますよ」
ん? え? なんで?
……あ。
『俺がお前の兄であり――』
俺が無茶するのは兄だから……逆を返せば妹がいるせい、水奈のせいってか?
俺が無茶するのは俺が馬鹿だからであって、水奈のせいじゃないんだが……水奈にはそう聞こえたのか……
「氷君、水奈を泣かせたままじゃ駄目だからね」
「ああ、分かってるよ」
早めに誤解を解いて、謝っておきたいところ。
という訳でラミウム様、この正座を解いてもよろしいでしょうか?
「水奈様はまだ、感情の整理が付いていないご様子。もう少し落ち着いてからの方が良ろしいでしょう。それまで氷河様はそのまま反省なさって下さい」
いや、心配かけたのは悪いなぁと思ってるんです。
でもですね。リコリスやマグオートと戦う事になるならば、レベルアップはどこかでしておく必要があると思うんですよ。
(それがデスラインへと向かい、リバイアサンとも戦おうとする理由ですか?)
……流石にやり過ぎたなぁとは思ってます。
(……もう少し反省なさって下さい)
いや、もうだいぶ足が痺れてきたというか……ちょっ! リノちゃん! 突かないで!
夕食前、ようやく正座を解いて良いとの許可が出た。
フィサリスと2人で足の痺れに悶絶していた。
「ご主人様のせいで酷い目にあった……」
「……バレたのはお前の不注意だろ」
「私は止めておいた方が良いって言ってたじゃん……」
「お前ノリノリでケルベロス倒してただろうが……」
フィサリスと互いにグチグチ言い合った。
帰ってきた日坂とロータスに奇妙な物を見る目を向けられた。
あいつらにああいう目されるのなんかムカつく。
夕食時、水奈は一度も俺と顔を合せなかった。
仕方ないとはいえ、俺的にダメージ大。
だが、俺以上に傷付いてるのは水奈だ。夕食後、しっかり話さねばなるまい。
話そうと思ったが、水奈は夕食後すぐに風呂へ行ってしまった。
俺は既に風呂に入ってるため、水奈の部屋で待つことにした。
しばらくして部屋の扉が開いた。
そこには風呂上がりでパジャマを着た水奈が立っていた。
「……何してるのお兄ちゃん」
いつもより少し低めの声に心をチクリとしつつ、俺は椅子から立ち上がった。
「少し話をしよう……水奈」