貴方にとって
夕食を終えて風呂へと入る。
膝の上にリノ、右肩に水奈である。
肩に頭乗せてるだけだよ。ちっちゃくなった訳じゃ無いよ!
そんな水奈の身長は150センチ。撫でたくなるよねこのサイズ。
「お兄ちゃん、今日はやけに美鈴に協力的だったね」
水奈が目を瞑り、俺に体重をかけてリラックスした状態のままそんな事を言う。
訓練の時はボロクソ文句言われたけど、朝の召喚術の時や夕食の味付けに関しては感謝されたもんな。
「便宜を図るって約束だったからな。まあ世話焼かなくても、あいつらなら勝手にくっつくだろけど」
だが神奈はここぞでヘタレるからな。んでもって日坂は自己評価が低いから、きちんと伝えさせないと、俺なんかじゃ……とか言い出す。
総じて言うと、あいつらめんどくさい。
まあ、神奈は日坂ラブだし、日坂も脈ありだから時間を掛ければ問題ない。
問題はその時間があるかどうかだ。
日坂が人を斬れないと抜かすなら、此処に置いて行くから時間はある。
だが人を殺せて、付いて来る気があるなら時間は無くなる。
全て終わらせて戻ってくればまた時間は作れるが、それが何時になるかは分からない。
間隔が開き過ぎて自然消滅なんて事にしないためにも、ある程度近づかせておく。
……なんで俺がこんな事をせねばならぬ。
まあ、頑張ってはいるが一本は取れない弟子へのご褒美だな。
「パパ」
膝の上に座っていたリノが立ち上がった。
どうしたの急に。座ってる俺の前に立つと可愛いお尻が丸見えよ?
――ハッ!
「『サークル』」
「おしっこ」
「『テレポート』」
トイレへ緊急転移したため、事なきを得た。
しかしトイレ後、リノは再び体を洗い直し。
体を拭いてなかった為、床等々がびしょびしょになったトイレも掃除となった。
互いに一糸纏わぬ裸体の状態で、トイレに籠るびしょ濡れの女児五才と男子高校生の図。
問題しかねぇわ。
今後は風呂の前にトイレに行かせよう。寝る前もだな。
シレっと聖魔法使えるようになってたからすげぇなと思ってたが、そういう所は五才児だな。
一騒動……というか一苦労終えて現在は風呂上り。服着て水奈の部屋にたどり着きベットに横になる。リノの尿意、問題なし。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんにとって美鈴ってどんな存在?」
俺の右手を繋ぎ腕に頭を乗せた水奈が質問してきたので、簡潔に答える。
「後輩兼弟子」
「短っ!」
それ以外に何があるのよ。同じ水奈教の信者?
というかどうしたの。
「なんかさぁ、お兄ちゃんと美鈴の会話してるとことか、一緒に料理してるとこ見るとまるで兄妹みたいだなぁって思って……」
フィアもそんな事言ってたなぁ。別にそんな事ないと思うけど。
でも妹的にお兄ちゃん取られた様に感じて、やきもち焼いて訳ね。可愛い奴。
「水奈は俺の妹でありたい? 彼女でありたい?」
「え!? か、彼女!? う、う~ん…………………………私はやっぱり、お兄ちゃんの妹でありたいかな」
妹でありたいか……まあ、そうだよな。
「俺もお前の兄である事を選ぶ」
だから……だからこそ、俺たちは歪である。
男女の仲でありながら兄妹でありたいと望んでいる。
「パパ、リノは?」
「養子」
「でもリノ、パパのおよめさん」
それまだ言うか。可愛らしい夢だが大人になれば変わるよきっと。
そもそもだ。
「リノが成人するまで後10年はあるぞ? リノが15歳になる頃には俺はもう27だ」
「だいじょうぶ」
「大丈夫な訳あるか」
ピチピチの15歳が、アラサーのお嫁になりたいなんて言うんじゃありません。
パパが悲しむわよ。本物の。
里親と結婚しましたなんて報告受けたくないだろ。また化けて出るぞ。




