誘惑
「――、―――」
――ん? あれ?
「――、朝―――」
穂乃香の声は聞こえるのに視界が暗い……?
「おはよう、氷君」
顔を右に向けるといつも通りの穂乃香の笑顔があった。
俺は左半身を下にして横になっている。水奈も同様である。
そして穂乃香は水奈の頭のすぐ上の位置に座り、俺を正面から膝枕している。
「水奈ー、水奈も起きてー」
穂乃香が水奈の唇をプニプニし始め、やがて咥えさせる。
色々ツッコミたいんだが、まずは――
「穂乃香」
「ん? どうしたの?」
「お前……下着は?」
「付けてないよ?」
あーやっぱり? でもそれだけじゃないよね。
「……ズボンは?」
「履いてないよ?」
だよねー。今着てるの俺のTシャツだけだもんね。
通りで太腿の感触が直だし、前を向くとアレとこんにちわしてる訳だよね。
なあ、お前何してんの?
「氷君、私思ったんだよ。今日甘えられるのは一回だけ、でもそれは私からであって氷君からは何回でも大丈夫なんだよ。つまり私が誘惑して、氷君がその気になっちゃえば問題なくない!?」
それで朝一で仕掛けに来たのかお前!
だが穂乃香。俺はお前のを鑑定でも見る事ができる上、今までに実物も何度か見ている。
朝一で見せられたからと言って今更興奮など!
「氷君、体は正直だね~」
駄目だった。いや、無理だって。
右手は水奈が体に寄せ過ぎてアウトゾーン。左手も柔らかい。
そんな中で目の前に広がる穂乃香の秘部。無理でしょ。
「――ん~……?」
「水奈、おはよう」
「おはよう、穂乃香…………お兄ちゃん……その、当たってる……」
うん。ごめん。
でも水奈の手をどけて貰わないと俺も動くに動けないんです。
「水奈、氷君は水奈と私に興奮しちゃったみたい。これは責任持って私たちが処理して上げるしかないないよね?」
「え!? う、うーん……お兄ちゃんが……そ、そっか、なら……仕方ないかな……?」
こいつ水奈を味方に付けやがった!
あかん、天使が小悪魔に唆されている。
落ち着け水奈! 冷静になるんだ水奈!
「お兄ちゃん……その、優しくするから……ね?」
朝食は今、ラミウムと神奈が一緒に作っている。
俺は夕食時に教える。今はリビングで項垂れ中。
正直、自分だけされるのって情けなくない?
水奈はようやく冷静になって顔真っ赤。穂乃香は満足そうである。
またしてもあいつの一人勝ち。いつかやり返して――いや、それはそれであいつを喜ばせるだけだ。
どうやったら勝てるのだろうか……というか勝つ事自体可能なのだろうか。
そもそも勝つ必要があるのかどうから検討しなければ――
「――氷河、ちょっといいか?」
勝利とはについて考えていると日坂に声を掛けられた。
はいはい、何でしょう?
「召喚術ってどうやって使うんだ?」
日坂 統也
固有スキル『奴隷強化』『召喚術』
二つ目の固有スキルか。
スキル系はロータスに聞けば――ってブルーゼムには召喚術を使える奴居ないんだっけか。
千里眼で確認。
うん、もう料理は終わってる。大丈夫そうだな。
「じゃあやり方を教えるか。まずそこに立って腕で輪っかを作る」
「こうか?」
うーん、手はもう少し低め、輪っかはもう少し小さめに作って……そうそうその形。
「で、契約者……お前だと神奈をイメージしろ」
「神奈を……」
俺は輪っかを作ってリノをイメージする。
「そして唱える『サモン』」
「『サモン』」
「ん?」
「へ?」
俺の腕の中にリノが、そして日坂の腕の中に神奈が現れた。
ハイ、終了。
「ひ、日坂先輩!? これは!? ふぇ!?」
「大事なのはイメージと唱えるだけ。腕は無くてもいい」
「お前……わざとだな」
そ知らぬふりをしてリノと戯れる。
日坂君はエプロン姿の神奈さんと抱き合えたのに何かご不満でもあるんですか~。
(ハッ! お兄さんの仕業ですか! GJです!)
神奈に称賛の声を頂いた。良かったね。




