幸運
森へと戻り、空中剣戟の稽古をする。
するんだが。
穂乃香は俺から二本とったのに対し、神奈はまだ一本も取れる気配が無い。
まあ、穂乃香はスペックがおかし過ぎるだけなんだけど。
神奈にもなにか勝とうと思わせる物が必要かもしれん。
一本取るごとに日坂のマル秘情報とか?
う~ん……微妙。最悪コイツが直接聞けば日坂話しそうだしなぁ。
本人に聞くか。
「なあ、神奈。俺から一本取ったら褒美をやると言ったら何を望む?」
「褒美ですか……? ん~……パフェが食べたいです!」
パフェが食べたいだと!?
俺だって食べたいわ!
「この世界にはチョコが無い。生クリームは作れるだろうが」
「じゃあシュークリームがいいです!」
シュークリーム……シュークリームかぁ……
シュークリームなら作れそうな気がする!
「じゃあ、一本取れたらシュークリーム作ってやるよ」
「ホントですか!? 絶対ですよ!? 良し、勝ってみせます!」
おお、やる気がいつもと違う。
神奈、頑張るんだ。俺もシュークリーム食べたいからな。
って言っても手加減してやるつもりは無いがな。
「そんじゃ始めるか……掛かって来い」
「行きます……!」
「お兄さん強すぎです……手加減して下さい……」
「手加減したら意味無いだろ?」
今日も神奈は一本も取れなかった。
強くはなって来てるんだけどな~。
ステータスはまだ俺の方が高いし、経験がどうしても足りない。
まあ、転移してきてまだ18日だ。
20日も立ってない経験でこれだけ戦えるなら十分優秀だろう。
穂乃香が異常なだけだ。
「クーデターまでには一本とって貰いたいところだ」
「くぅ……次は必ず一本取って、ぎゃふんと言わせて見ます!」
ぎゃふんって……
まあ、頑張れよ。
水奈達と合流し、日坂たちを拾いに行く。
「水奈ぁあああああ!」
「穂乃香っ……もう」
穂乃香が水奈を見つけ次第抱き着いた。
普段に比べると言葉数が減りはしたものの、穂乃香はきちんと連携して戦って来たようだ。偉いぞ穂乃香。
そしてお疲れラミウム。色々気を遣わせたみたいで悪いね。
(いえ、穂乃香様も目的自体は理解されておりましたので、きちんと協力して下さいました)
言えばちゃんとやる子だからな穂乃香は。
この後モンスターの解体作業を行って売りに行く予定だ。
その時にまた連れて行ってやろう。
とりあえず全員で屋敷へと帰る。
俺は倒したモンスターを預かり解体を始める。
水奈たちの所からは――アイスコモドドラゴン……ま、まあオオトカゲだよね~
穂乃香たちは――シーサーペント…………お、オオヘビだよね~
ん? 水奈たちの所から…………ビックフット?
お前らなんでこんなのばっか集めてくんだよ!
フィサリス! ロータス! ちったぁ自重しろ!
なんでこんな鑑定探してやっと会えるぐらいの奴らにポンポンと……
(………………)
……お前の運の良さか。
(恐らくですが……)
……まあ、高値で売れるから良いけどさ。
またギルドのお姉さんにBランクにならないかって言われるなこりゃ。
(すみません……)
謝らなくていい。
おかげでレベリングは順調に進んでる。
危ない事してる訳じゃ無いならいんだよ。
(危ない事する筆頭は氷河様ですけどね)
うるさい。まったくを持ってその通りだが言うんじゃない。




