とりあえず撫でてみる
「――、―――」
もう少し……もう少しだけ……
「―――、氷君」
ああ、もうそんな時間か。
「おはよう。氷君」
穂乃香の笑顔、プライスレス。
この笑顔の為ならレッドゴブリンの一匹や二匹、
いや、二匹は無理だな。洒落になんねぇわ。
少なくともレベル15。
後1レベル上がるまでは、はぐれマスターを続けよう。
「今日も眠そうだね。また眠れなかったの?」
「ああ、まあな」
またしてもほっぺたプニプニされてたのか。
そして鎖骨をさわさわしてたのか。お前どんだけ鎖骨好きなんだよ。
そして昨日も言ったでしょ?
朝立ちしてないか確認するのは止めなさい? はしたないわよ。
いや、心の中でしか言ってないけども。
でもこれ不味いな。
性欲の処理なんてする暇ないから、いつか立ちかねない。
今だって後頭部から柔らかい感触、視界には御山二つの絶景が広がってるんだ。
こんな状況で立ちでもしたら……俺は……俺は……!
穂乃香に食べられてしまう!
なんと俺が受け……でも穂乃香相手だと冗談で済まなさそうなのが怖い。
息子よ、立つんじゃないぞ! お前が立つべき時は今じゃない!
「そっか……次はぐっすり眠れるといいね」
穂乃香に優しく頭を撫でられる。
ヤバい女神がいる。肉食系の女神が居る。
肉食系の女神……何それ強そう。
しかし……穂乃香に撫でられてると、このままこうして休んでたくなるな。
いや、もちろん休まないよ? 時間ないし。
というか着々と穂乃香に攻略されてないか俺?
穂乃香、恐ろしい子っ!
「そうだな……まあ、その内慣れるだろ」
そう。慣れるしかない。
しばらくは眠い日が続くだろうが、
生活のリズムとして身に付けば、短時間の睡眠でも十分になるはずだ。
その内慣れる。
穂乃香の向ける感情に対し、そ知らぬふりをする罪悪感にも。
悪いな穂乃香。お前の好意を受け取る余裕が、今はない。
今、情欲に溺れてしまえば、ひと時の感情に身を任せてしまったら、
後々に取り返しのつかない後悔となって降り注ぐ。
俺にはもう、立ち止まってる時間は無い。
どれだけ屑に落ちようと、もう止まれないんだ。
穂乃香の柔らかい太腿を名残惜しく思いつつ頭を起こす。
若干の気怠さはあるが問題は無い。
俺は穂乃香と一緒に食堂へ向かった。
朝食を終えて、戦闘員組の見送りをする。
「お兄ちゃん!行ってくるね~!」
月島 水奈
恐怖度 80
「おう、頑張ってこい」
月島 水奈
恐怖度 65
頭撫でられるのってそんなに落ち着くのかね。
って俺も穂乃香にされたばかりか。
うむ。あれは大変良かった。
つまり、水奈もそんな感じという事か。
よし、毎日撫でてやろう。
水奈を撫でていると、水奈を羨ましそうに穂乃香が見ていた。
なんだ、お前も撫でられたいのか。
まあ、そのぐらいならいいだろう。
「え!? ひょ、氷君!?」
「おう、お前も頑張ってこい」
穂乃香が顔を赤くして俯いた。
如月 穂乃香
月島氷河 親愛度 100 恋愛度 100 発情度 40
内心大騒ぎである。
しかし穂乃香の影響力は凄いな。
妹の特権が……と微かに嫉妬している水奈はまだ可愛いものだ。
ほぼ全部の男子から敵意が飛んできたぞ。
水奈はまだ妹だからいいが、穂乃香は幼馴染。
血のつながりがないって意味では他人だもんな。
幼馴染と言うだけでクラス一の美少女の頭を撫でたのなら、
しかもそいつが話し合いにも参加せず訓練にも参加しないとあれば、ムカつきもするか。
逆に、私も撫でられたい……と思った一部の女子は何を思ったの?
君たちから見たら完全なるニートだよね? いいの?
年上で顔そこそこ良しなら……それでいいのか……そうですか。
戦闘員組を見送った。
よーし部屋に戻りますか。
非戦闘員組からの視線? 無視無視、オール無視。
ただいまマイル――ム。
そしてさよならマイル――ム。
はぐれスライムのAGLを訂正します。
そこまでバグれてなかったので。




