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鑑定は死にスキル?  作者: 白湯
メインストーリー
117/346

条件

 本日は休暇。

 3日に一度の休みである。

 3日に一度、30日中20日が営業。ホワイト企業である。

 でもこの休み、俺のレベリングの時間をとるためである。

 即ち休日営業。社畜の鏡である。

 俺としてはステータスも上がった事だしボス狩りがしたいところだが、

 1人で行くのは怒られる。

 かと言って穂乃香たちを連れてボス狩りに行くにはまだ早い。

 だからフィサリスかロータスを連れて行く必要がある。

 でもそれだと特に穂乃香が足手纏いなのだと落ち込んでしまう。

 と、現状色々難しいわけだが、今日に限っては言い訳ができる。


「フィサリス、お前今日リノの為にワイバーンの卵取りに行く予定だな?」

「……? うん、そうだけどご主人様どうかしたの?」

「それ、俺も行く」


 そうリノの為に行くのである。

 ワイバーン狩りはおまけ、あくまでおまけである。

 うんワイバーン狩りが目的です、はーい。

 

「氷君! 私も行きたい!」

「ワイバーンは空中戦になる。穂乃香はそこまで空中戦に慣れてないだろ。あとステータスも足りてない。今日は留守番だ」

「うぅ~……」


 穂乃香は感覚で空を飛べるものの、神奈の様に練習している訳では無いので、あまり慣れていない。というか神奈の方が空中移動に関しては長けている。

 

「お兄ちゃん、お師匠様と2人で行くとするとリノちゃんはどうするの?」

「水奈に任せていいか?」

「私は構わないけど……リノちゃんがいいかどうか」


 その説得だよな。

 俺の膝の上に我が物顔で座ってる君、君だよ君。

 

「リノ、パパとママはお前の為にワイバーンの卵を取って来る。だから水奈と大人しく待っててくれないか?」

「……ちゃんと帰って来る?」

「ああ、もちろんだ」

「……わかった」

「……良い子だ」


 頭を撫でてやる。リノは気持ちよさそうにしている。

 撫でられているリノ、ママ扱いされたフィサリスに対し穂乃香が羨ましがっている。

 って水奈、お前もか。

 お前ら二人は帰って来てから甘やかしてやる。まあ行く前に頭ぐらい撫でてやるか。

 リノを水奈の膝の上に座らせ、水奈と穂乃香の頭を撫でてやる。

 お前らは本当甘えん坊だよな。ダンジョンに行ってた時からそうだった。

 今回外出するのは俺だけどな。

 

「穂乃香、重力魔法の制御がもう少し上手くなったら、空中組手でも空中デートでも付き合ってやるよ」

(空中デート!?)

「美鈴! 空中浮遊の練習するから手伝って!」

「え……私のは空中浮遊というより空中飛翔なんだけど……」

「いいから!」

「ちょっと――」


 穂乃香が神奈を連れて出て行った。

 穂乃香が本格的に練習すれば神奈に追いつくのはすぐかもしれない。

 そのうち剣と拳の打ち合いとかもするかもしれない。

 互いに鍛え合うのは良い事である。

 二人とも戦闘術を教えてるという意味では俺の弟子だしな。

 ロータスと日坂の師弟は既に朝早くから訓練に行っている。

 休日だというのに……いや、俺も人の事言えないけども。

 という訳でラミウム、水奈と一緒にリノの面倒頼んだよ。

 

(かしこまりました。無理をなさらぬようお気を付けて)


 分かってるよー。無茶はしないって。

 フィサリスを連れて国境付近まで移動する。

 この国にワイバーンって居ないんだよね。

 ちょっと魔族領寄りの無法地帯にいるからそこまでいかなければならない。

 穂乃香たちが千里眼の範囲から出てしまうのが少し不安ではあるが、危険な事はさせてない。大丈夫だろう。

 大丈夫……大丈夫だよね?

 

「ご主人様が私と2人になるって珍しいね。急にどうしたの~?」

「言ったろ、ワイバーンの卵確保だって。ついでにちょーっとワイバーンを倒すかもしれないけど」

「ご主人様はそっちが目的でしょ~、じゃなきゃ私と2人になんてならないよね。ご主人様、私の事避けてるし」


 避けてるか……避けてるか避けて無いかで言うと……避けてるな。

 

「ご主人様が穂乃香ちゃんを連れてこなかったのはなんでかな~?」

「それも言ったろ。あいつは空飛ぶのがまだ不慣れでステータスも低いからだ」

「確かにそれもあるかもしれないけど~……それだけじゃないよね」


 ………………

 

「穂乃香ちゃんを連れてこなかったのは、穂乃香ちゃんが大切だからでしょ? 危険な事に巻き込みたくない」

「だったらなんだって言うんだ」

「じゃあ私なら問題ないのは何故? それは私がご主人様にとって大切ではないから……」

「……何が言いたい」


 ……お前……!

 

「……ご主人様の隣に立つ条件、それはご主人様に愛されない事……なら、いいよ。ご主人様の傍にいれるなら――私は愛されなくていい」

「……それ本気で言ってんのか?」

「本気だよ。ご主人様には分かるんでしょ?」

「……だとしたらお前は、救いようのない馬鹿だな」

「……ふふふ。でもそんな救いようのない私を、救い出してくれたのはご主人様だよ?」


 ………………はぁ。

 

「……これクーリングオフとかできねぇのかなぁ」

「え~そんなの絶対に受け付けないからね~! 私は例え地獄でも付いて行くからね。良いでしょ? ご主人様?」

「…………勝手にしろ」

「……ふふふ…………ありがとう」


 馬鹿だ馬鹿だ、ホントに馬鹿だ。

 俺は暗に愛さないと告げたんだ。

 それを理解した上で、お礼を言って受け入れるなんて……馬鹿としか言い様が無い。

 その上で笑みを浮かべるお前は……本当に、救いようが無い。

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