柑橘系ドロップな日々
甘夏と文旦と八朔が柑橘類では好きです。死体の来歴を書くのが楽しかったです。
「『・高架下の列車通過時の騒音
・空港の、飛行機の離着陸時の騒音
・住宅の近隣に設置された風車が稼働するときの低周波の音が近隣住民の心身に与える悪影響
・近くに米軍基地があるので各種飛行機が与える周辺住民への騒音の被害』
以上の物が与える不快さ程度かまたはそれを上回る程度には、お前の発生させる雰囲気みたいなものが不愉快でならないんだよ! わかるか!? ドブネズミ特有のいやらしくて薄汚い淀んだ、工場の排煙や廃棄された油、生活排水、燃え滓等が毛皮にこびりついたまま、特に掃除や身だしなみを整えるために取り除くということもされずに放置され、その上腐肉寸前の生ごみや動物の死骸や瀕死の動物等を主な餌にしているせいで、屍臭めいたものまで仄かとか言うレベルではなく纏っている要するに人間が一般的に受け付けない臭いのようなものが、物理的にというに限らず、精神的な腐敗まで伴ってお前の表面や内部で進行している惨状を具体的に反映している様子でこちらまで伝わってくるんだよ! 重油が酸化した臭いみたいな……鼻をつくような刺激的ないやな臭い、そういう印象、いかに清潔を保って衛生的に生活したところで精神の腐敗は隠しきれないということを実感しているのか? 本当にわがこととして考えてみたことが有るか? 精神的な腐敗がもたらす実生活の荒廃について生き生きとした実感を持って感じたことはあるのか? 精神的に腐敗しているというのは、実生活の荒廃がどれほど進んでも、それが現実感や躍動感を持って臨場感あふれる様子で自分自身の目の前に迫ってくるようには到底感じられないことを言うんだ、そういうことは考えてみたのか? それに思いもいたらないという現状をことさら問題として見つめ直す気はあるのか? 自己啓発を行うこととは何の関係もなしに、まるでその気もないのに、自己啓発書を購入したことはあるのか? 読んだのか? 題名は何だった? 著者は? 出版社は? 実は自己啓発書に関心があるんだ、読んだことが微塵もないもんでね、本当に微塵も、一ミクロンもない、髪の毛一本ほどの関心さえ、これまで全く払ったことがないと自信を持って言えるので、それが真であることに、ドロップ一缶賭けたっていいくらいだ、このドロップはパイナップルやメロンの他、温州みかん、ネーブル、八朔、デコポン、キンカン、甘夏など、柑橘系が充実していて特にお気に入りなんだが、まあ君がどうしてもっていうなら賭けたっていいし、なんなら甘夏味をあげないこともないけれど、自己啓発書っていうのはとくに愉快な本なのか? 読んだことがあるのか? それはビジネス書の類なのか? それともスピリチュアルなものか? 自己啓発書には下位分類があるのか? どういった自己啓発書がお気に入りか? 自己啓発書の文体模写ができるほど読み込んでいるのか? でも自己啓発書を読んだくらいで虚しさはなくなりやしないのか? 処方量の12倍くらいの抗不安薬でもなくならなかった虚しさが自己啓発書でなくなるのか? 僕が本当に必要としているのは僕を殺してくれそうな優秀なヒットマンとか、頑丈なロープじゃなかったのか? こんなはずじゃなかったのか? どこへ行ってどうすればよかったのか? そういうことは全部遊園地が教えてくれたのか? 人生で大切なことは全てファンタジー系RPGが教えてくれたのか? 異世界転生したら奴隷同然の扱いが恒常化した労働条件最悪のしかも職業兵士でまともな食事や医療等が全く供給されないせいで戦地での死者の多くが病死及び餓死、または栄養状態の悪さに起因する病死等なのか? 異世界転生したら南太平洋のアメリカ領に侵攻してマラリアで死亡したのか? 一億三千万総玉砕なのか? 破滅が目に見えているので躁状態なのか? 一番星に東条英機と名付けたのか? そういうことが自己啓発書には書いてあるのか? 全ての失敗は予測可能なのか? 驚くほど仕事が速く進む魔法の思考法が三千万部突破でお手軽健康管理料理法の紹介書籍とともに今年のベストセラーベストテン入りして狭義の文芸所はベストセラーベストテンの三割程度にとどまりその中に海外文学の翻訳所が皆無だったりするのか? ←それって鎖国同然なのか? そのような状態が長く続くことは意識の風通しを悪くするので精神的な腐敗に繋がるのか? 精神的な腐敗は頻出ワードか? 経済用語か? 「日経今年のキーワード」とか存在するのか? これは文章と呼べるのか?罵倒するはずだったのに、罵倒しようという意思はどこに行ったのか?」
「とにかく、人を故意に不愉快にさせるような真似をお前が故意に繰り返すから、特に不愉快になったんだよ! わかってるのか!? 性格が悪いのか? 故意に不愉快にさせることを明確な意図を持って2回以上繰り返し行うようなら、そこの地面に埋めてやる! ちゃんとブルーシートと専用の鋸と、鍋と、薬剤と、スコップを用意してある。他にも様々な道具が現在待機中だ。悪趣味な冗談を繰り返す様なら、確実に埋める。いかにお前が注意して細心に気を配ろうと、絶対に隙はあるに違いないから、そのような意識のゆるみを利用して、重いもので全身をメッタ打ちにしてから首や胸を何度も鋭利な刃物で刺してとどめを刺したので、容疑者には強い殺意があったものと推測され、現在県警には捜査本部が設置されており、近辺で数日前から日ごろ見かけない不審な車の目撃証言があることなどから、その車が犯行の下見に使われたことも考えに入れて捜査が行われていると県警への聞き込みから判明しましたが、被害者の身体への執拗な損壊などから、顔見知りによる怨恨やトラブルが原因の犯行かとも推測され、なお、財布など、金目の物は現場から盗まれてはいないとのことです。といった具合にお前をやたらと損壊して殺した上で埋めることもある程度具体的に検討しているので、二度とここに来るな、わかったか!? もうたくさんなんだよ、ゾンビの製造法の研究(大抵失敗)とか、薬物によるトリップとか、新しい瞑想法の開発による現世からの遊離とか、破壊的な落胆とか、様々な種類があるので逐一あげているときりのない不法行為、一例として動物虐待、偽金づくり、誰も、行っている当人たちですらまるで信用していない、対象の茫洋とした愚弄としか言いようのない悪魔崇拝やその儀式とか、早い話がしっちゃかめっちゃかとしか言いようのない黒ミサとか、高純度のヘロインとか、東洋への、これ見よがしな傾倒とか、それら全部を合わせた胸の悪くなるカオスとか、もういいだろう、聴き飽きたし、その渦中にいるのもいい加減飽きたよ、つかれたんだ、君の現実逃避、作り話、素敵な嘘にはもう付き合い切れない、これから何らかの事業を行うつもりであるなら(人工ドブネズミの開発とか、死なないけれど生きてもいない細胞の工業的生産とか)、あんたが他所で適当な仲間を見つけて行ってくれ、僕はもううんざりだ、なあ何も実際にあんたを土に埋めたくて発言しているわけじゃないし、そんな気力もない、基本的に僕は、慢性的に疲弊しているんだ。どれだけ有効に思える休息をとっても一向に収まらない。骨から抜けない疲労感。寧ろ僕を切り刻んで埋めてほしいくらいだ。そうすれば治るだろう、だから君の実験動物として、蘇生を試みることだけは勘弁してくれ、わかったらもう帰れ、君と話すことなどない」
そのころ市中では、道端に死体が放置されているとの苦情がしばしばあがっており、市役所やその衛生部門などでも問題視されてはいたものの、流行中の高病原性感染性胃腸炎などの対応に追われる中なかなか死体まで手が回らない、というのも既に片付けられた死体の火葬や仮置き場への移動、仮置き場の整理や拡大等に追われていたからであり、特にコレラが流行したので1ダース単位で死者が出たということもないのだけれど、空気が乾燥しているのは死体が放置されがちな現状では不幸中の幸いと言うほかないのだが、とはいえ手洗いうがいなどを励行することは地元の小中学校などでも熱心に呼びかけられているので、インフルエンザによる学級閉鎖はまだ一例も出していないのがこの市の誇らしい今年の実績である。とはいえ、道端にダンプカーに轢かれたのでねじれた肉塊というのが的確な表現になってしまった3丁目の田中さん(40代女性、専業主婦。近隣のスーパーマーケットでよく買い物をしていて、お気に入りは、コンビーフポテトの缶詰。それだけでもちょっとしたおかずになるので、使い勝手がいいらしい。)の死体が結構盛大な目立つ血痕とともに放置され、カラスに日に日につつかれていたり、いまだ犯人が逮捕されていない通り魔に刺された今年度に入って5人目の通り魔の被害者の、16才の女性(地元の高校に通っていた。交通手段はバスと徒歩。俳句同好会に所属しており、活発に活動していた。この俳句同好会はインターハイにも出場する強豪同好会で、昨年度は団体部門で5位、被害者は自由律俳句個人で14位の成績をおさめている。)が、傷口がそろそろ乾きかけてきた状態で、やはり目立つ血痕とともにゆっくりと地面の上に広がるように潰れつつとけていくものが放置されていたりするのは、美観という点でも良くないし、衛生的にも問題である。とはいえ、事故や事件等の今年に入っての稀に見る豊作によって市の死体回収車の処理能力が現状の死体の発生スピードを下まわり始めてしばらく経っているのも現状であって、となりの自治体との死体回収車の融通なども進められつつあるが、問題なのは死体回収車の処理能力だけではなく、死体回収の手続きの煩雑さにもあるというのが最近の一般的な意見である。もともと市内の路上発生死体の数はそう多くはなかったから、これと言った問題もなく、大正時代に制定されて以来目立った改訂は特になく現在に至るのが、「路上発生死体の回収及びその処理に関する条例」であるのだが、とはいえやはり大正時代に制定されただけあって、時代に合わない面や、非効率さなども現れており、「路上発生死体の回収及びその処理に関する条例」の改正が市議会でも議論の的になっており、早くとも来年度の5月ごろには改訂された条例が施行される見通しだが、そんな中で、警察や医療関係者との連携をスムーズに勧めることで、より速やかな死体の処理が可能になるなどの方針も見られ、路上発生死体を特に区別して扱わず、死体として扱いを一元化する案もある。
あっさりと気持ちが悪い話でした。。