始まる世界
ルビ振りなおしました。
今回はそういった失敗は無いと思うので、多分読みやすいと思います。
「それで横永君はどの職業に就きたいのかね。むふふん」
一通りミーシャからこの世界の話を聞き終えた後、青明は選択を迫られていた。
「えーっと、とりあえずどんな職業があるか教えてもらえませんか。」
「りょうかーい、それじゃ、この世界の先輩たる私ミーシャによる特別授業を始めたいと思います!」
「はーい。」
「返事が小さいよ、青明君!」
無駄話も多かった特別授業だったが、話をまとめると。
農業…危険も少なく、堅実に稼げて、尚且つ人々に奉仕すると言う目的も達成する事が出来るため
割と人気な職業。
ただ、畑を作れるのが街中に限られている為、先達が転生しないと自分の土地が持てない。
中には大型農業をやっている所で小作人として働く事もある。
農業にするならば、最初は見習いから始めると言う事を覚悟しなければならない。
料理人…食材を扱い、人々により近い位置で接するため、人々により多くの奉仕をする事が出来るが
自分の店を持つことはほとんど出来ない。
また、たとえ土地があったとしても、大通りに面していなければ集客は望めない為、店によって奉仕度が大きく異なる。
こちらも、見習いから始める覚悟がいる。
事務員…幅広い職業に必須となる存在であることは間違いないが、より優れた人材でなければ日の目を見ることは無い。
また、ギルドの職員ともなれば、ある程度の顔の良さ、性格、コミュニケーション能力が必要となってくる。
しかし、会社の規模と自分の役職に応じて会社への貢献、ひいては社会への貢献へと繋がる。
事務処理能力が高ければそれだけ早く出世する事も可能となる。
商人…料理店と異なり、見習いからでも貢献度を稼ぐ事が可能であるが、その分危険も大きくなる。
また、仕入れなどの計算、黒字を出す経営なども目指していかなければならないため、本人の能力に大きく依存する。
また、店を持つほど大きくなったとしても、価格の大幅な変動、およびその他の予期せざる状態に対応できなければやって行く事が出来ないシビアな職業。
職人…剣などの武器、日用品などの雑貨を製造する職業全般を指す。
この場合、店を持たなくても工房の見習いから始めれば、食いっぱぐれることは無い。
だが、大きな工房に入る事が出来なければ、なかなか日々の生活も難しくなる。
しかし、作る商品の質が高いほど、人々に貢献できる為、本人の努力が実を結ぶ典型的な職業。
狩り人…通称リッパー。ギルドに属し、街の外にいる外敵を倒す事を主とする職業。
この世界において最も人気の職業であるが、クランに属していない新人の多くは命をすぐに落とす。
貢献度も多く稼げて、尚且つ金銭も稼げるが、危険の多い職業である。
「で、横永君どの職業に就きたいかは決まったかね。うむうむ」
「うーん、ミーシャさんはどの職業に就いているんですか。」
「最後に説明した狩り人。なんてたって危険も多い代わりに実入りも多いからね。」
「なるほど、そうですか。」
さんざん悩んだ末に青明は結論を出した。
「そうですね。僕も狩り人になりたいと思います。
やっぱり男ならギルドとか冒険とか憧れますから。」
青明の出した結論にミーシャは難しそうな顔で答える。
「うーん、でもねー横永君。狩り人は本当に危険なんだよ。外にいる奴らも手ごわいし、命を落とす危険性もあるし。
この世界に来た人の多くは最初に狩り人になろうとするんだけど、その過程で危険な目に遭って多くの人は辞めちゃうし、中にはトラウマになって部屋から出てこなくなる人もいるんだから。」
そんなミーシャの忠告を軽く受け流し、青明は尋ねる。
「それで、ミーシャさんさっきから気になっていたんですけども。この世界の外敵ってのはなんですか。」
そう、狩り人がいるならば、その反対に狩られる対象がいなければ成り立たない。
現代日本ではこちらを脅かす存在は極少なく、職業的知名度を誇るハンターなどは存在し得なかった。
だが、この世界では、職業としての地位を確立している。
それは、厄介な外敵が存在している事の証明に他ならないのである。
「まぁ、外敵の説明ならこの世界では生活に切り離せない事ではあるから、説明するけど。
だけど、職業はよく考えてほしいな。」
この世界の外敵。通称、魔獣。いつどこで発生するのかは詳しく分かっていないが、一説によると現実世界で人々が負の要素を感じる出来事が起こると、その負の感情を核として生まれるとされている。
魔獣の多くは空想上の動物の姿を取っており、この世界の住人に等しく害をなす。
街の中まで進入したと言う記録は今まで存在しないが、街の外に1歩でも出れば襲われるので、人々にとっては天敵と言っても差支えない。
「で、それを狩る仕事が狩り人ってわけ。」
「人々の負の感情を元にか。それなら、ミーシャさん、逆の存在もいるんじゃないですか。」
「うん、存在するよ。神獣って呼ばれていて、人々の味方をしてくれるんだよね。
中には狩り人のパートナーになってくれる個体もいるよ。
一般的に神獣をパートナーにしている狩り人の事をテイマーって呼ぶんだよ。」
「やっぱ、みんな現実世界から来ているから、そこは共通認識なんですね。」
「さて、色々説明も終わったし、そろそろ横永君も職業について考えてくれたでしょ。
私のお薦めは農業なんだけど、横永君結局どうするの。」
「すいません、ミーシャさん。やっぱり狩り人になろうと思います。
心配して頂いているのは重々承知の上ですけど、やはり狩り人には抗いがたい魅力を感じているんで。」
強情に意見を変えない青明に遂にミーシャは折れた。
「うーん、そこまで意見を変えないなら、しょうがないなー。
でも、やっぱり心配だから慣れるまでは私とパーティーを組んでもらうからね。」
「ありがとうございます。それで狩り人になるにはどうしたらいいんですか。」
「簡単に説明すると、ギルドに行って登録すれば終わりだよ。
んじゃ、善は急げって言うし、さっさとギルド行っちゃおっか。」
ミーシャに連れられて、青明は大通りを進んでいった。
ということで、説明回です。
次も多分説明回です。
しばしお付き合い下さい。