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穴だらけ

作者:哀芭 友劃
読もうとしてくださってありがとうございます。物書きとしてまだまだですが、考えたり面白がったりするきっかけになれればと思います。それではよろしく願います。
 『穴があったら入りたい』とはよく言ったものだ。今の私は非常に穴に入りたい。穴と言っても考えようで、案外日常的に穴は近くにあるものだ。例えばトイレだ。あれは穴に水を張っているわけであって立派な穴だ。だが、私の様な肩が張り、胸元も厚めで、それなりに引き締めのある体躯の持ち主にとっては窮屈過ぎて収まらないだろう。似た様な例になるが、マンホールも穴だ。言わなくてもわかるだろうが、あれは横穴が多過ぎる上に繋がってるものだから、穴に入ると言うより潜ると言う感じだ。そう潜って行くという表現だ。何も私は前向きな気持ちで穴に入りたいわけではない。むしろその逆で、重い負荷のある感情を引きずり込んで穴に入りたいのだ。穴は確かに日常的に存在はする。しかし、それは用途があって作られた穴が殆どで、誰もかれもがご自由に出入りする事はできそうにない。ましてや七週間もの時間を穴で過ごすのだ。それなりの穴の質を求める必要がある。一つの条件を除いて一番ベストな穴が一つある。それがお墓だ。お墓は穴として十分な広さで、さすが人が入る為にあるなものなので、正にベストだ。問題はそこにある。先客がいる。しかも骸骨さんだ。自慢じゃ無いが社会的にはまだ若いと言われている私である。まだまだ骸骨さんと並んで時を過ごすには気が引ける。

 私は羞恥と言うものを嫌っている。いや、嫌悪している。そして羞恥の対局に存在するのが成功や、完璧だと私は思っている。その為に体を鍛えたとさえ言える位だ。四肢を鍛え、まさしく恥ずかしくない体になったわけだ。勉強やスポーツも同じだ。出来ないものを徹底して排除し、私は恥とは疎遠になったと思っていた。しかし奴はいつでも私のそばまでやって来ている。

 ある日私の通勤電車で痴漢に遭遇した。どう見ても五十を過ぎた通称おっさんと、十代にも見えそうな小柄な女子が、そう、絡んでた。私が気づいたのはおっさんが女子の頬を舐めるという世にも奇妙な、いやもはや奇天烈な事態を発見してしまったからだ。そして私は奴と出会ってしまった。これは私の持論だが、羞恥には二種類いる。人に認知される奴と。自分にしか認識できない奴だ。この時現れた奴は後者だ。痴漢を撃退しない限り私にしつこく纏わり付く心底嫌な奴だ。私は前者も後者ももちろん大っ嫌いなわけで、寄せ付けたくなかった。よって声を掛け、痴漢と羞恥をまとめて撃退するはずだったのだが、私は失敗したらしい。

 「そういうプレイだ」電車から降りて私とおっさんと女子の三人の初めての会話で、最初に口にされた言葉だ。なんて迷惑な奴らだ。頭に来た私は自分が思うにも珍しく声を強めて説教してしまった。なにはともあれ、迷惑なおっさんと女子のコンビと、羞恥の奴をまとめて蹴散らせたのだ、と清々しささえ感じていた私だった。だがこの頃には私のオフィスは地獄に変貌していたのだろう。

 オフィスに着いた私はすぐに気がついた。オフィス仲間の目が違うことに。みんなどこかよそよそしく、更に私には見えた。良く見ると、瞳の奥深いところに羞恥の奴が見えた。後になってわかったが、私が説教をしたその駅から乗車してた奴がいたらしく。そいつは私が勘違いでおっさんと女子を叱りつけたと吹いて回ったのだろう。そこで、噂が生まれ、生まれた噂は恐ろしい速さで成長し、生まれた当初とは全く別のものへと昇華せれる。最終的には、痴漢を見つけた私は電車から彼らと降りて一緒にヤって来た。とまでなったらしい。人はどうやら話が面白くなると思い込んで、他人の事はお構いなしにひどい事を言う。さらにそれを無邪気に信じてる者が噂を最終的な形に仕上げてくる。

 こうして私は穴の探すことにした。というかなった。社員寮で生活していた私は職と住まいを必然的に両方無くした。身寄りのない私は、丁度良い穴を探して未だに歩き回っている。
読んでいただきありがとうございました。ゆーかくです。お楽しみいただけましたか。穴の一文字に色んな意味を持たせて書いてみました。それと恥ずかしいことは皆さん経験しているし、嫌な事だと思います。最近それを妙に過敏に感じとる人が多くなっていると個人的に思ったりしています。なのでそこを気にして読んでもらえたなら嬉しいです。

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