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クリーチャーズ・フィールド  作者: 須々木正(Random Walk)
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第一部 邂逅の夜 -01-



 例えばの話。

 密閉したものを標高の高いところに持って行くとどうなるか?


 ――富士山にポテトチップスの袋を持っていくような感じ?


 そう、そんな感じ。


 ――きっと、パンパンに膨らむだろうな。


 そうだろう。実際に破裂はしないまでも、はち切れそうなほどになるはずだ。

 では、なぜそうなるのか?


 ――気圧。


 そう、気圧だ。我々は絶えず、その直上にある空気の層の質量に押し潰されて生きている。そして、より高いところへ行けば、その分、宇宙に近づく。受けるべき頭上の空気の質量が少なくなる。


 ――よって、気圧が下がる。


 ポテトチップスの袋の内部の気圧は、密閉されている限りは変化しないため、結果として下がった周囲の気圧との間に力学的な不均衡が生まれる。相対的に、袋の内部の気圧が勝ることとなる。


 ――よって、その内外の気圧差で生じる外向きの力が袋を膨らませる。


 そのとおり。よくできました。


 ――それで、この話、何か意味が?


 その反応は理想通りだ。実際、この話はわりとどうでも良いことだ。そもそも、日常生活においては、気圧、すなわち、空気の重みを感じることはほとんどあり得ないわけだし。


 ――つまり、何が言いたい?


 深海魚に似ていると思わないかい?


 ――深海魚? なぜいきなり……。


 思考停止は良くないな。考えれば分かるはずだ。そっくりじゃないか。

 暗い海の底で暮らす深海魚は、その激しい水圧をものともしない。大気の底で暮らす我々は、気圧を意識しない。見事な対応だ。


 ――潰されているのに、気付かない。


 そうだ。どちらも世界の底で生きている。世界の重みをその身に背負っていて、でもその重みには気付かず。

 そう考えると、接点なんてないように感じる常闇の生命に対しても、なんだか親近感が湧いて来ないか?



  *  *





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