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クエストだらけのVRMMOはお好きですか?  作者: 薄いの
旅する主従と変容した世界
20/61

Quest18

「主。考えてみたんだが、もしかしたらこの辺りには魔素溜まりがあるのかもしれない」


 クラウスさんを引き連れて森林の中に拓かれた通路を進んでいるとコレットが神妙な顔でそんなことを言い出した。


「というか、魔素溜まりってなに?」

「……そこから説明すると長くなるんだが、この世界は二つの世界の中間点と言われているんだ。女神フィラメリアの居る神界、悪魔や魔物の跋扈する魔界、そしてこの世界が精霊界だったかな。もっとも、これも正確なことではないんだが」

「この世界が精霊界?」

「そうだ。恐らくは今の主にもこの世界に溢れる精霊たちの姿が感じ取れているだろう? 生憎、私には感じられないが」


 コレットがさも当たり前のように教えてくれる。

 え、なにそれ。分からない。少なくともボクの中に居る灯火の精霊以外はまったく感じられない。

 もしかして、ボクの中に隠された力があって覚醒してないから感じられないとかそういうカッコいい話?


「はっは、コレットさんはご冗談が上手い。精霊はもう二百年近く前にお隠れになってしまったじゃないか」

「……え? 隠れたって居なくなっちゃったんですか!?」


 コレットも口をあんぐりと開けて唖然としている。そんな馬鹿なとでも言い出しそうだ。そもそもコレットは二百年も屋敷に籠り続けた超引きこもりだ。情報が古いのも仕方がないのかもしれない。


「そうだね。随分と前から精霊使いは誕生していないね。ヒューマンどころかエルフにも居ないさ」

「ま、待ってくれ! 四大巫女姫……いや、精霊使いはどうなっているんだ!?」

「四大巫女姫? あぁ、あれは面白い読み物ですよね。現存する巫女姫は風の巫女姫のハイエルフのミランダ・クランベール様だったかな。ふむ、そういう意味では精霊は完全に隠れた訳ではないな。ミランダ様とその精霊、ハリューラのみが現存する精霊かな」

「読み物があるんですか。興味があります。すっごく」

「……子供の頃は大好きだったな。焔蛇の巫女姫、リリア・エルアリアのお話とかはとてもへんてこな話でね。早くにその才能を開花させた彼女が今はなくなってしまったんだが、当時の巫女姫を育成する精霊院の半ば軟禁状態にブチ切れて神聖とされた精霊の力で周囲を脅しながら脱出するところから始まるんだ。とにかく自己中心的だった彼女は勧善懲悪ならぬ懲善懲悪で周囲を巻き込みながら好き勝手するんだが、不思議なことに彼女の回りには人が集まるんだ。各地で英雄探しをしていたことでも有名かな。もっとも、最後まで彼女のお眼鏡に適う英雄には会えなかったみたいだが。まぁ、四大で最も我の強い巫女姫っていったら彼女だろうね。これもどこまで本当なんだか分からないけどね」


 なんとなくコレットへと視線を向けるとコレットは気まずそうに目を逸らした。大体合ってるというニュアンスを感じる。というかハイエルフか……。ファンタジーのエルフといったら寿命の長さだもんなぁ。


「精霊はどうして居なくなってしまったんでしょうか」

「それは……誰にも分からないな。もしも分かるとしたらそれは――」

「……ミランダ・クランベールですか」

「あぁ。精霊の喪われた世界での唯一の巫女姫、彼女を置いて他に居ないだろうね」


 大きな目標が一つ決まったな。

 ボクは会いに行く。――ハイエルフ、ミランダ・クランベールに。もしかしたらリリアはこの世界から精霊が喪われたことに気づいていたのかもしれない。

 だからこそ、新たな精霊姫を生み出した。――っていうのは考えすぎかもしれなないけど。


Unique Questが発生しました。

『喪われた精霊』

このクエストを受諾しますか? Y/N。


 またか! またUnique Questか!

 これ前回と一緒なら貴方の行く先には苦難が沢山ありますって言われてるようなもんじゃん!

 ……ぐぬぬ。負けない。ボクは負けないぞ。


「と、ところでコレットが言ってた魔素溜まりって結局なんなの?」

「……この世界は二つの世界の中間点だと言ったが悪魔の世界、魔界からの干渉によって生み出されるのが魔物だ。これは女神フィラメリアの力によって悪魔本人はこの世界に降り立てないが故の苦肉の策、それが魔物だと思っていい。時折魔物の討伐が滞るなどの様々な要因によって過剰に悪魔の力を受けた場所が魔素溜まりになる。そうなると厄介だ。魔素溜まりから現れる魔物は一回り強力になる。定期的に魔物が討伐され、魔素が散らされているほど強力な魔物は現れにくくなる」

「魔素溜まりを消す方法は?」

「魔素溜まりには番人となる魔物が居る。そいつを倒せば魔素溜まりは自然に散る。逆に言えば番人が居なければ保てないほど不安定なものなんだ、魔素溜まりはな」

「……商人も通る道だし、この情報も広まってておかしくないのにクラウスさんは知らない。もしも本当に魔素溜まりならここの魔素溜まりは出来たばかりだと思うんだけどどう思う?」

「全く同意見だな」

「……やっぱり叩くなら早いうちかな」


 伺うようにクラウスさんへと視線を向けるとクラウスさんは鷹揚に頷いた。


「おぉ、困った困った。森がこんなに危険では、このままでは私は帰ることもままならない。本当に困ったものだ」


 ボクはクラウスさんの棒読みの演技に思わず笑ってしまう。


「そんなことはありません。我々二人が見事マルリア森林の魔素溜まりを払って依頼人様の帰路を守ってみせましょう!」


 それに返すようにしてボクはわざとらしい演技で盾を構えると、ボクとクラウスさん、そしてそれにつられてコレットが小さく噴き出した。

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