不味い、睨む、謝る、クビ?
「………。」
なんだろう。この、物足りなさは、
店長が作ってくれたオムライスをもぐもぐごっくんした後、失礼ながらにそう思っていたら、顔に出ていたのか店長が「やっぱダメ?」って苦笑いをした。
「えー美味しいですよぉ!この人超失礼なんですけどぉー?ねぇ智志美味しいよねー?」
可愛い人は怒ってたって可愛い。そんな場違いな考えしか浮かばない私は、黙々と食べ続けた。なにか、なにかが足らない様な。
「…お前のはケチャップそんだけかけてんだから美味いも不味いもわかんねーわな」
うっ、と喉を詰まらせる彼女は結構な確信犯である事が判明した。
息子よ、可愛い彼女の嘘は許してあげようっていう歌を知らないのかい?愛した人の嘘はそれすら愛しいとか続くんだよ一回聞いてみてよマジリスペクトっすよ。
「…親父の酒とつまみは美味いけど飯は不味い。」
あぁ、そうなんだ。へぇ、と思いながら卵は問題ないな、やっぱり具かな?と頭を捻っていると「うーん、」と唸った店長が厨房へ戻って行った後、ガタっと椅子を引く音がしたと思ったら彼女がキッと私を睨んでいた。
「アンタ、何様?」
「……す、すいません?」
うーん、困ったなぁ、もしかして、私、クビですかね?
重苦しい空気の中、だけど箸は休めずにそんな事を考えていたら「おい、」と息子の声がした。息子からも文句言われるんだろな、はぁーもうすぐ食べ終わるからせめてそれまで待ってケロ…
「す、すいませ…
「お前、何かスポーツしてんの?」
とにかく謝っとこうと口を開いたらそれに被せて何を言った?え?今なんて?




