最期
人狼を暴露したレオナは泣き崩れた。
今まで一方的に人狼役をやらされ、人を殺してきたのだ。
死ぬことの恐怖よりも罪悪感の方が強いかもしれない。
ユウタ「…ごめん」
レオナ「ゆ、ユウタ…謝らないで…逆に苦しいから…」
ゼロ「レオナさん…今のcoは本当ですか?」
レオナ「…はい」
ゼロ「…わかりました」
アール「レオナさん。もう一人の人狼ってやっぱりマサさんなのか?」
アールは更に核心をつくが、ユウタも気になっていた。
マサが人狼なのかどうか。
レオナ「…もう一人の人狼はマサさんでした…。実はマサさんとはネットでもかなり仲良くて、
ここに来てから個室で結構話してました。
人狼のことも、プライベートのことも…」
ユウタ「うん…」
レオナ「そのときに…マサさんはこのゲームで人が本当に死ぬことをいち早く理解していて…私に提案したんです…。
できるだけ早く人狼として死のうって…」
ユウタ「それで一日目の投票でマサさんはレオナさんに投票し続けたわけですか…」
レオナ「そうです…でも私は…そんなマサさんを殺すのが怖くて…出来ませんでした…」
カズ「でもなんで最初に人狼coしなかったの?そっちの方が早いよね」
レオナ「ご、こめんなさい…いざってなると怖くて…本当にごめんなさい…」
自分の立場だったらどうなっていたか。
自分から人狼です、殺してください、なんて果たして言えるのだろうか。
主催者…許さない。
アール「…あと15分だ…」
レオナ「はい…私もマサさんみたいに部屋から出れば皆に殺されたことになるとおもうからそうするね…」
レオナは1人立ち上がり、フラフラと部屋の扉に歩いていった。
ユウタはそんな姿を見ていられず、レオナの片腕をもった。
レオナ「や、やめてよ…どうせ死ぬんだからいいじゃん…」
ユウタ「レオナさんが何か悪いことをした訳じゃないのに罪を償うような形で…。せめて最期まで力になります」
するとレオナはユウタを力一杯吹き飛ばした。
レオナ「余計なお世話よ…」
ボロボロと涙を流しながら再び扉に向かって歩いていった。
レオナが扉を開け、あと一歩で廊下に出る、というところでピタリと止まった。
レオナ「…私は…二人で人狼役をやっていく内に、もう一人の人狼の事が好きになってました…普通の恋がしたかった…です…。私が死んだら人狼はいなくなるので、皆…頑張って生きてね…」
レオナは一度だけ振り返り、笑顔を見せた。
ユウタ「レオナさ…」
廊下からばたっと鈍く人が本当に倒れる音が響いた。
こんな死に方…。
あまりにも切なすぎる。
人狼が発覚すれば全てが終わり、生き延びられると思っていた。
しかし人狼の発覚は自分にとっても苦痛な物であって、最悪的な結末だった。
カズ「おわった…のか…」
ゼロ「そうですね…」
アール「レオナ…さん…最期泣かせやがって…」
サクラ「ユウタ…帰れる…よ?」
ユウタ「……うん」
人狼の孤独感、それに耐えながらレオナさんはずっと戦ってきたんだ。
それなのにこんな…。
ユウタは土下座するような体勢で泣いた。
とても喜べる心境ではなかった。
マサさんとレオナさん。
今回の人狼は本当に良い人だった…。
こんな結果で終わってしまうとは…。
複雑な気持ちでユウタはその場に座り込んでしまった。
『皆さんお疲れ様でした。それでは1時までに各部屋に戻ってください』
カズ「…え?」
サクラ「部屋にもどって寝たら主催者の人たちがまたここに来たときみたいに何処かに連れてくんじゃない?」
カズ「そういうことか…じゃぁ俺は戻って寝るわ。かなり疲れた」
アール「俺も…。おいユウタ…気持ちは俺もよくわかる。
でもって今はもう休め。もう戦わなくていいんだ」
ユウタ「…わ…わかってる…」
アール「…おやすみ」
ゼロ「この三日間本当に疲れましたね。お疲れ様でした」
部屋にサクラと二人きりになると、サクラがユウタにそっと抱きついた。
サクラ「ユウタ…帰れるんだよ…また平和に暮らせるんだよ…」
ユウタ「ああ…。でも…深い傷を負った…それはサクラも同じなのになんでそんな前向きにいられるんだ」
サクラ「…レオナさんとマサさんは私達が生きられるように努力してくれた。
だからこれからもその分しっかり生きてかなきゃならないんだよ」
ユウタ「うん…そうだよな。情けなくてごめんな…」
サクラ「…」
ユウタ「…っ!?」
サクラ「どうせユウタ彼女なんていないでしょ?」
ユウタ「そ、そりゃ…そうだけど」
サクラ「私も…人を好きになったの久しぶり。
初恋の人は…事故で死んじゃったから…。
ああ、でも気にしないで。もう、忘れるようって頑張ってるから」
ユウタ「…サクラ…」
サクラ「…ユウタ」
時間を忘れて二人の唇は重なったままだった。




