小さい生命力
三日目午前4時。朝。
ユウタ「まだ…生きてる…」
五体満足を確認したユウタはいち早くサクラの安否を確認しに向かった。
自分だけ生きていても満足しないこの感覚…。
ユウタ「サクラ!いるか!?」
ユウタのサクラに対する呼び掛けとノックで、別の部屋のメンバーまで起こしてしまった。
アール「ユウタ!どうした!」
ユウタ「あ、いやただメンバーの安否を確認してるところで…起こして悪い」
アール「全然構わないけど…そこサクラだよな?」
ユウタ「そうなんですが…」
アール「そんなに必死で…もしかしてユウタ惚れてる?」
ユウタ「ば、ばばかなことを言わないで下さいよ。ただサクラが俺を頼ってきてるから答えてるだけで!!」
内心くっついてくるサクラも満更ではない。
サクラの「ユウタ…まだこんな…時間…」
そんなことをしているうちにサクラが部屋から眠そうに目を擦りながら顔を出した。
ユウタ「サクラ…ごめん生きてるの確認したくて。まだゆっくり休んでて」
サクラ「ふぁーい…」
これでユウタからして一気に心が落ち着いた。
しかし必ず他に犠牲者がいるはずである。
そんなことはいってられない。
そして何よりの問題はナナの安否だ。
ユウタ「すいませんナナさん!」
ノックもするが返事はない。
ユウタ「入りますよ!」
鍵のかからない扉を開けてナナの部屋に入った。
役職カードを見ないように用心しながら遂に見たかった物で、また見たくなかったものを見つけた。
ユウタ「ナナ…さん」
ある程度昨日のことで察しがついていたことだが、やはりナナさんが殺られてしまった。
つまりナナは預言者とは完全に断定できないが、村人であることは明白になり、結果マサはかなりの確率で人狼だと言うことになった。
だがまだマサが人狼だと断定出来るものがないのが事実。
ナナの死因は額の穴からわかる通りピストルだ。
ベッドから転げ落ちたように床に仰向けに横たわっている。
放心しているような状態なのに、両手がそれぞれ力強く握られていて、そこだけはまだ生命力を感じられる。
何か入っているのでは、と衝動的に左手からゆっくりと開いてみた。
左手にはなにも入っていない。
では右手は、と開くと丸めた小さな紙がそこにあった。
本当に手のなかに物があったことに驚いたが、それよりも俄然内容が気になる。
一度周囲に誰もいないか確認して紙の内容を確認した。
『レオナ くろ』
くろ、の部分は字がガクガクで汚く、レオナの部分はごく普通に書かれている。
もしこれが本当にナナが書いたものならレオナを預言することをあらかじめ決めておいて、
いざ予言した結果人狼であり、同時に人狼も襲ってきたため、急いで書き留めたといったところか。
だがこのメモも人狼のねつ造の可能性も十分にある。
下手に弄って疑われてはたまったものではないので、
そのメモは一度元にあった通りにナナの右手に握らせ、部屋を後にした。




