感情
ゼロを呼び出し、部屋に入れた。
ゼロ「どうしたんですか?」
常に持ち歩いているゼロのノートを見ながら言った。
ユウタ「ゼロさん投票の結果いつも記録してましたよね?」
ゼロ「はい。見ます?」
ユウタ「うん。そうしたかったんだ。ありがとう」
ゼロ「いえいえ。皆で考えるために書いてますので。どうぞ」
ユウタ「ありがとう」
普通の大学ノートに一つ一つ正確に投票の結果は書いてあるようだった。
ユウタ「ゼロさんいつもノート持ってるんですか?」
ノートの最初方のページはここに来る前の事であろう私事のメモが記されていた。
ゼロ「そうですね。意外と生真面目なので。
投票の結果も全て正確に記してあります」
ユウタ「助かるよ」
ユウタは一つ確認しておきたかった事があった。
最期にマサが投票したのはレオナ。
マサは自分が預言者だと名乗り、俺を人狼だと言った。
そしてその後ナナが預言者だと名乗り結果マサは投票により死亡。
それなのにマサは最期レオナを投票している。
昨日の一回目と二回目の投票でマサは二回ともレオナに投票していた。
だがレオナはマサには投票していないので、これはマサが一方的に恨みかなにかあったのだろうか。
たがしかしあの状況で偽予言までしておいて最期の投票はユウタかナナに入れるのが自然だ。
『狼』グループに入ってる以上決して初心者ではなく、馬鹿な事はしないはず。
とりあえず今夜誰が人狼に殺されるかによってある程度の仮説は立つ。
もっとも自分が殺されては意味ないが。
ある程度考えたところでノートをゼロに返した。
ユウタ「ごめん、ありがとうな」
ゼロ「いえ、必要になったらまたいつでも呼んでください」
ユウタ「そうするよ」
ゼロ「じゃあ用件が以上なら僕は部屋に戻りますね」
ユウタ「ゼロさんは…
村人ですか」
こんな今更と聞く意味もないが、正確にノートに記録している時点で人狼探しに協力的であることは確かだ、
振り向き様に、
ゼロ「もちろんですよ」
と言って部屋を出ていった。
そしてゼロが部屋を出ると丁度入れ替わるようにサクラがやって来た。
サクラ「ゼロくん来てたんだ。何か分かった…?」
ユウタ「まだ…なにも…。でもあいつは頭もいいし協力的だ。村人だと思う」
サクラ「たしかにゼロくん頭いいしすごく協力的だよね。『狼』でも私いつも見破られて…」
ユウタ「そうだな。でもそれはサクラの演技りょ-」
サクラ「ばか!そこはいいのよ!」
ユウタ「ハハハ、ごめんごめん」
サクラ「もぅ…」
こんな状況だからこそ冗談でも言って気を紛らわすことは間違っていないと思う。
サクラのためにも。
ユウタ「でも。もう三人も死んでるのに犯人も人狼も何一つ手掛かりを掴めていない…。
俺は今後どうしたらいいんだ…」
サクラ「ユウタは…絶対村人だからちゃんと考えてくれてる。まだ分からないのは仕方ない事。
それを真剣に考えてるユウタはとても立派だと思うよ」
ユウタ「そう…かな」
サクラ「そうだよ!少なくとも私は信じてます」
ユウタ「…うん。ありがとう。サクラのお陰でここまで頑張れるじぶんがいる気がするんだ。本当にありがとう」
サクラ「感謝するのはこっちの方だよ…、ユウタ。こうやって私の相手してくれて。ありがとう」
サクラのことはもう全面的に信じるしかない。
もし人狼だとしても素直に負けを認める。
そう誓ったのだった。
ユウタ「…それでさ、マサさんは人狼だったと思うか?」
サクラ「そんなのわかんない…考えたくもないよ…。
でも今夜ナナさんが死んじゃったらマサさんが人狼ってことになるよね…」
ユウタ「そうだよな。ナナさん皆を守るためにcoしたのだとしたらとても良い人だよね…」
マサが人狼…。心の底ではそうであってほしいと強く願っていた。
やはりこれ以上死者を出すわけにはいかない。
サクラ「ネットでよくナナと話してたけどね。なんとなく楽しくて優しい人だなって思った。
女の子だとも思ってたけどね」
ユウタ「それは同感だよ」
サクラ「…どうして…こんなことになっちゃったんだろうね…」
ユウタ「全部主催者が悪いんだ犯人グループは複数いるはずだからもっと許せないな」
サクラ「もっと…普通の人狼ゲーム…したかった…」
サクラはユウタに泣きついた。
抱き返すことしかできない事にユウタは自己嫌悪した。
サクラだけでも…。
初めて人を守りたい、という感情がユウタに芽生えていた。




