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エリートとは

 魔物の棲む世界は、悪臭に満ち。

 魔物の群は、身の毛がよだつほどに、醜悪で。

 みずからもそれをわかっているから、光を嫌い、光を食らう。


 レスキューは天界では下級天使として蔑まれる身、とはいえ。

 やはり天使のはしくれでは、あり。

 全身から光を放っており、しかも恐るべき大剣を帯びているので。

 魔物たちは怯み、後ずさる。


 レスキュー天使アンドラーシュは、天界から下る上官エザイアルの指示のもと。

 攫われた双子の天使たちの居場所へ、的確に降下。


 双子の片割れ、兄のエリート天使は、かろうじて、まだ汚れてはいなかった。

 ガーディアンに、守られていたのだ。


「ぼくを守れ!」

 魔界へ連れ去られようとする刹那、兄天使は手近のガーディアンを道連れに。

 ガーディアンはその命令に、従った。


 兄天使付きのガーディアンは既に、その身を投げ打って兄天使を守り、魔物の兇刃に倒れていた。

 道連れにされたガーディアンは、兄天使付きのガーディアンではなかった。

 偶然その場に居合わせた、劇場付きのガーディアンだったのだが。

 嬉々として、その命令に従った。


 しがない劇場付きのガーディアンが、エリート天使を守れるなど。

 なんたる僥倖。

 なんたる光栄!

 感激に打ち震えつつ、すすんで死地へと飛び込んだ。


 とはいえ、もとは劇場付きでしかない、ガーディアン。

 エリートを守る特殊訓練も受けていない。

 にしては懸命に踏みとどまってはいるものの。

 堕するのも、もはや時間の問題。


 アンドラーシュを認めて、満身創痍のガーディアンに生気が甦る。

「ありがたい、はやく、わたしのあるじを助けておくれ、わたしは、もう、もたないんだ……」


 わたしの、あるじ。

 ガーディアンは誇らしげに、兄天使をそう呼んだ。

 ホールでのパフォーマンスを任務のかたわら、目にする度、耳にする度。

 ああこのエリート天使に仕えることができたなら、この身を捧げることができたなら、と。

 幾度、夢に見たことか。


 よもやその夢、叶う日が来ようとは。

 たとえ、まさに刹那の夢であろうとも。


「妹天使がいるはずだ、彼女は何処に?」

 ガーディアンの一途な想いをよそに、職業的なアンドラーシュの問い。

 それには、兄天使が答えた。

 手短に。


「あいつはもう駄目だ、あれを見ろ!」

 兄天使が指差す先に、妹天使は、いた。

 魔物に、貪り食われていた。

 涙を。


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