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そして彼女は

「この店にはよく来るけど、今日はなんだか新鮮な気分。奢ってもらうのってなんだか照れるわ」


 店の奥の個室は仕切りが色の着いたガラスになっていて、二人きりと言っても部屋のすぐ近くに専属の給仕が待機している。貴族令嬢として個室で男性と二人きりという状況は眉をひそめられる物だがここではその心配もあまりない。

 貴族令嬢達にもこの席はデート用に人気がある。内緒の話をしたいけど公の場がいい、なんて時にも最適だ。


 何度かこの席を使用したことはあるが、デートでというのはルーナも初めてでどこか不思議な高揚感があった。


 目の前の料理も文句のつけ所のない完璧なものだ。自然とルーナの口元が緩む。


「貴女が僕の誘いに頷いてくれたなら、こんな体験はいくらでもさせてあげられたのに。接待として君たち家族が支払いをしてしまうからいつもヤキモキしていたんだ。僕は好きな女性には甘やかされるより甘やかしたい性格だから」


 顔を合わせるたびノクスはルーナをデートに誘ってきたが、婚約者のいたルーナはもちろん毎回丁寧に断っていた。


「劇団への投資は大事だもの。食事を振る舞うのもそのひとつよ」

「それが僕だけ特別に、ということであれば喜べたんだけどね」

「私が個人を支援するなんてそれだけで成功間違いない、と言われてるものね」


 ルーナ自信がそんな大きな宣伝文句を言ったことはないが、いつの間にかそう広まっていた。

 だが、まあ考えてみればおかしな話ではない。


 ルーナの資金が尽きることは無いのだ。あとは本人が自由に伸びていくだけ。やる気があるのに続けられない、という絶望に遭遇することが無いのだから。


「アーベンドルクの名前は確かに魅力的だよ」

「あら、正直ね」

「でも僕は、さっきも言った通り、あなた個人に惹かれているんだ。あなたの財産は二の次さ」

「あら。私がいればお金なんて必要ないとは言わないのね」


 シャンパンのグラスを傾けて、ルーナはクスクスと楽しそうに笑った。


「そのお金を使って自由自在に飛び回る貴女も魅力的だから捨てきれないんだ」

「本当にお上手。でも嫌な気はしないわ」


 お金なんてなくても良い、と言われてもルーナは素直に喜べないだろう。愛は素敵だがお金も大事だ。出来ることが増えるのだから。


「もちろんあの男のように与えられるだけで満足なんてしないけれどね」

「私とプレゼント勝負でもしてくれるつもり?」

「楽しそうだけど、僕も資産は余るほどあるが、あなたには敵わないからね。だから驚きを添えたお返しをするよ」


 この手を取って貰えないかな、と差し出されたノクスの手を、ルーナは考え込むように見つめた。


「考えておくわ」

「貴方は婚約者がいなくなってもガードが堅いな」

「だって沢山お誘いをいただいているんだもの。決められないでしょう?」


 アーベンドルクの名前は誰もが手にしたい憧れそのものだ。

 ルーナの婚約解消は瞬く間に広がって、全てに目を通しきれないほどの釣書やデートの誘いが舞い込んでいる。


 選ぶも選ばないも、全てはルーナ次第だ。


 ノクスはそんなルーナに肩を竦めて見せた。


「今はそれでいいよ、レディ。誘ったらまたご一緒してもらえるかな?」

「そうね、構わなくてよ」


 芝居がかった様子で再び手を差し出したノクスの手に、ルーナも芝居がかった口調で返し、今度はその手にそっと自分の手を重ねた。


 ルーナの恋はまだまだ遠い。





最後までお付き合いいただきましてありがとうございました(^^)


意識せずに生活基準を落とすのって難しいですよね

買われたんだ、と思い込んだヘイリットはずっと負の感情を抱えたままで、冷静に周りを見ることは最後までありませんでした

何かに気づけていたなら多分1番幸せな勝ち組人生を送れたかもしれないのに…


ルーナのお金を目当てに近づいてきた友人たちも、なんだかんだルーナ本人を大切にしていて、お前ほんとバカだなとヘイリットを袋叩きにする場面なんかも考えたんですが今回は没に…

お金目当てだもの、が口癖のくせにお金なんていらわないよ!とルーナに啖呵を切る気の強いツンデレ?少女がチラッと作者の脳内に生まれかけていたのでそっとここに置いておきます 'ᢦ'

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