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朝起きたら女の子になっていた件〜性別を超えた絆の物語〜  作者: 柴咲心桜
第4部 新婚旅行編

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選択を迫る“もうひとりの僕”

目の前にいるのは、かつての“俺”。


男だった頃の姿。


声も、表情も、所作までも――懐かしいはずなのに、今はまるで他人のようだった。


「……どういうことだよ」


俺は声を絞り出す。


これは夢か幻か、それとも現実なのか。


だけど、肌が感じる空気の冷たさや、部屋の匂い、そして彼の存在感は、どうしても作り物には思えなかった。


「僕は、“選ばれなかった可能性”の集合体さ。

 君がこのまま“女の子としての人生”を選んだことで、生まれなかった人生が、こうして揺り戻しを起こしてる」


「……選ばれなかった可能性……?」


「もし君が、あの日に戻れるとしたら。

 この手を取れば、男だった頃の身体に戻ることもできる。

 今の恋との関係は“なかったこと”になるかもしれないけどね」


彼が差し出してきた手は、俺の手とそっくりだった。


温かいはずなのに、なぜかとても冷たく感じる。


「君は“自分の人生を選べた”と思ってるかもしれない。

 だけど本当は――“ただ流されただけ”じゃないか?」


その言葉に、胸が刺された。


確かに。


あの日から始まった日々は、戸惑いと受け入れの連続だった。


女として生きるという選択を、完全に自分の意志で選んだと言い切れるかといえば……わからない。


「でも」


俺は、ゆっくりと手を胸に当てる。


「俺はもう、迷ってない。

 恋と出会って、彼女と結ばれて、子どもまで授かって……それが流れだったとしても、

 俺が選びたいのは、“今の自分”だよ」


“もうひとりの俺”は、ふっと笑った。


「……言うと思った。けど、それで終わりじゃない。

 このままでは“君の中に残っている過去の断片”が、彼女や子どもに影響を及ぼすかもしれない」


「影響?」


「選び取ったなら、ちゃんと清算しろ。

 “男としての君”の想いも、未練も、過去も――すべて向き合って、手放さなければ、本当には前に進めない」


――次の瞬間、部屋の景色が溶けていった。


気づけば、俺は“あの日”に立っていた。

あの、全てが始まった朝――

男だった自分が、女になって目覚めた、あの瞬間に。


静かに立つ、制服姿の“昔の俺”。

ゆっくりと振り返って、問いかけてきた。


「じゃあ……君は、どっちを選ぶ?」


(つづく)

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