恋と迎える、初めての朝
朝の光が、障子の隙間から射し込んでいる。
まだ少しひんやりした空気の中で、私は静かに目を覚ました。
隣には——恋がいた。
穏やかな寝息。髪の乱れた横顔。
まるで夢みたいで、でもちゃんと“現実”だった。
昨日、私は言った。
恋のことが好きだと。
女の子になった私として、ちゃんと恋をしたと。
そして——恋はそれを受け止めて、抱きしめてくれた。
(……なんでこんなに、胸がふわふわしてるんだろう)
寝返りを打った恋が、ふと目を開けた。
「……おはよう、カノン」
その声に、心臓が跳ねる。
「お、おはよう……恋」
目が合うだけで、昨日とはちがう。
ふたりの間には、ちゃんと“想いを交わした証”がある。
「昨日の夜、カノン……可愛かった」
「……っ! あ、あの、それ、ずるい……!」
枕を抱きしめて、私は思わず顔をうずめる。
恋がくすっと笑って、「ごめん」と言いながらも、声はあたたかかった。
「今日も一日、一緒にいようね。……俺の奥さん」
「……もう……ばか……」
だけど、その言葉が嬉しくて、
私はもう一度、恋の隣に身体を寄せた。
***
朝食は旅館の食事処でいただくことになっていた。
「カノン、焼き鮭好きでしょ?」
恋が私の皿にさりげなく切り身を取り分けてくれる。
何気ない仕草なのに、胸がぎゅっとなる。
「……ありがと」
なんてことない会話。
でも、目が合って、ふたりで笑うだけで、心が満たされていく。
食事を終えて部屋に戻ると、私はこっそり恋の背中を見つめた。
(……昨日までは、どこか“夢の中”みたいだったのに)
(今日からは、“恋人”として、夫婦として、ちゃんと隣に立ちたいって思える)
「着替えたら、出かけようか。散策コース、昨日調べておいたよ」
恋が振り返り、スマホの画面を見せてくれる。
近くには川沿いの遊歩道や、小さな神社、甘味処があるらしい。
「……うん、行きたい。一緒に歩きたい」
浴衣姿で並んで歩くなんて、
想像するだけでちょっと照れくさいけれど。
そのあと、準備を終えた私たちは、
旅館の入り口で並んで靴を履いた。
「……カノン、手、つないでもいい?」
「うん……。私から、つなぎたかった……」
自然に指が絡む。
そのぬくもりが、昨日とはちがう形で伝わってくる。
外の空気は少しだけひんやりしていて、
でも私の心は、恋とつながって、あたたかかった。
こうして少しずつ、私は“星宮カノン”としての人生を歩いていく。
恋と一緒に、この道を。




