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朝起きたら女の子になっていた件〜性別を超えた絆の物語〜  作者: 柴咲心桜
第4部 新婚旅行編

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新婚旅行、どこに行こう?

 仕事が一段落したある休日、ふたりはリビングのテーブルを囲んで、ノートパソコンを開いた。


 「そろそろ、新婚旅行の計画立てようか」


 カノンが微笑みながら言う。


 「うん!どこに行きたい?」


 恋は目を輝かせて、色々な旅行サイトをスクロールしながら答えた。


 「温泉旅館、どうかな?やっぱりゆっくり過ごしたいし」


 「いいね、温泉なら疲れも取れるし、のんびりできる」


 「海とかも好きだけど、今回は静かに癒されたいな」


 「じゃあ、山間の温泉街でのんびりってのはどう?」


 「それいい!自然の空気も美味しいし」


 「部屋に露天風呂がついてるところも探そう」


 恋はメモ帳にどんどん書き込む。


 「あと、美味しいご飯も大事だよね!」


 「もちろん。新鮮な魚とか、地元の名物料理を楽しみたい」


 カノンは楽しそうにページをめくりながら言った。


 「そういえば、旅行中はゆっくり話す時間も作りたいな」


 「そうだね。普段は忙しくて話せないこともあるから」


 「これからのこととか、赤ちゃんの話とか」


 恋の顔が少し赤らんだ。


 「うん。二人でいろいろ話そうね」


 計画がどんどん膨らんで、ふたりの笑顔が輝く。



***


 ぽかぽかした午後の陽だまりの中、リビングのローテーブルにノートパソコンと旅行雑誌が広げられていた。


 カノンと恋は、ソファに並んで腰を下ろし、旅の計画を立てている。


 「やっぱり、温泉旅館がいいな。静かで、ゆっくりできる場所」


 恋がぽつりとつぶやくと、カノンは頷いてスマホで地図を開いた。


 「いいね。じゃあ、山の方とかどうかな。川の音が聞こえる露天風呂つきの……」


 「うわ、それ最高じゃん」


 ふたりの視線が、宿泊サイトの“人気旅館ランキング”に集まる。


 「ここどう? 木造の古民家風で、夕飯が部屋食。お風呂も源泉かけ流しで、貸し切り露天風呂があるって」


 カノンが見せてきた画面に、恋が身を乗り出す。


 「……ここ、すごく素敵。雰囲気あるし、お料理もおいしそう」


 「ね、口コミもめっちゃいいよ。“静かで、時間が止まったみたいな旅館”だって」


 「うん、そこにしよっか」


 即決だった。旅館の名前は**『湯ノゆのみね』**。緑に囲まれた山の中、川沿いにひっそり佇む老舗の宿だ。


 「……なんか、夢みたい」


 恋がぽつりとつぶやく。


 カノンが、不思議そうに顔を向けた。


 「どうして?」


 「私、昔は“将来、結婚とかしないかも”って思ってたから」


 「……そうなんだ」


 「うん。恋とか、誰かと一緒に暮らすとか、ずっと他人事みたいで……。でも、カノンと出会って、変わった」


 恋は、少しだけ照れくさそうに笑った。


 「私もだよ」


 カノンは、そっと恋の指先に手を重ねる。


 「男だった頃は、こうやって誰かと旅行の計画立てたり、“一緒に未来を選ぶ”ってことが、想像できなかった。でも今は――」


 恋の頬にカノンの指がそっと触れる。


 「今は、あたりまえに君といたいって思う」


 「……ん」


 ふたりは小さく笑い合った。


 パソコンの画面には、旅館『湯ノ嶺』の予約フォームが開いている。


 あとは、出発の日を決めるだけ。


 「荷物、どうしようか。おしゃれもしたいし、でも動きやすい方がいいし」


 「……ちょっとだけオシャレしてほしいかも」


 「え、それ私の方? カノンもだよ、ちゃんと着てってね」


 「了解です、奥さん」


 笑い声がリビングに響いた。


 新婚旅行――ふたりで計画する時間そのものが、もうすでに思い出になっていた。



***


「……あっ」


 カノンが何かを見つけたように目を見開いた。


「恋、ちょっと見て。さっきの『湯ノ嶺』、今週末の予約……空いてる」


「えっ、ほんとに!?」


 恋が身を乗り出す。予約ページにはぽつんと「空室あり」の文字。


「偶然って、あるんだね……これって、行けってことじゃない?」


「……うん。行こう、カノン」


 ふたりは顔を見合わせて笑い合った。


 未来のことを話して、想いを重ねて、そして――一緒に旅に出る。


 ささやかだけれど、確かな新婚旅行の始まりだった。

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