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朝起きたら女の子になっていた件〜性別を超えた絆の物語〜  作者: 柴咲心桜
第3部 新婚生活編

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60/70

この世界で、母になる

 目を覚ますと、部屋の空気がほんのり甘かった。


 春の香りと、窓から差し込む朝の光。


 その隣に、彼女がいた。


 「……おはよう、カノン」


 恋が、小さく笑う。


 いつもより少しだけふっくらしたその頬に、指を伸ばして触れると、くすぐったそうに肩をすくめた。


 「お腹、ちょっと重いかも」


 その言葉に、私はそっと彼女のお腹へ目を向ける。


 まだ膨らみなんてない。だけど、そこには確かに――新しい命が宿っている。


 「……信じられないよな」


 「うん。でも、嬉しい」


 恋はそう言って、お腹を両手で包み込むようにさすった。


 母になるんだと、まだ実感が湧かないその手つき。


 でも、私はその姿をずっと、夢に見ていた気がする。


 数ヶ月前まで、私は男だった。


 一度は元の体に戻り、このまま生きることもできた。


 でも、恋と並んで歩く未来を思ったとき、私は選んだ――


 **「女として、妻として、母として生きる」**という未来を。


 「カノン……怖くない?」


 「ん?」


 「赤ちゃんのこと、これからのこと……私、ちゃんとママになれるのかなって」


 恋の声が少しだけ震えていた。


 無理もない。突然、自分の体に命が宿ったのだ。


 元男だった私が言えることじゃないかもしれないけど、それでも。


 「大丈夫だよ。……恋なら、きっと大丈夫」


 私は彼女の手を握った。


 その手の温もりは、何よりも確かな家族の証だった。


 「それに……一緒にいる。ずっと。怖いときは、私が支えるから」


 恋が目を細めて、ふっと微笑んだ。


 「ありがとう、カノン。……ママとママ、がんばろうね」


 ベッドの上でふたり、顔を寄せ合いながら小さく笑った。


 まだ先の見えない日々。


 だけど、ふたりの間には確かに“未来”が宿っている。


 この世界で、私は母になる。


 元・男としての過去を抱えたまま、愛する人とともに、新しい家族を育んでいく。

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