変わる身体、変わらない想い
春の終わり、肌寒さの残る風が頬を撫でた。
この場所には、三年前にも来たことがある。
恋とふたりで桜を見上げながら、未来の話をしたあの日。
私は――カノンは、かつて男だった。
一度、不可思議な力で“女”になり、恋と出会い、惹かれ合った。
だが、その力はやがて解け、私は“元の身体”へと戻った。
男の身体に、戻った。
もう恋とは一緒にいられないと思った。
この恋は、夢だったのだと。
だけど、恋は私を拒まなかった。
男に戻った私の手を、ためらいなく取ってくれた。
「どんな姿でも、私はカノンが好き」と言ってくれた。
それでも――
「……私は、女として、君の隣にいたい」
もう一度、力を借りて、私は“女性の身体”に戻った。
それは選択だった。
運命ではなく、私自身の意思で選んだ道だった。
今日、病院で診断を受けた。
恋のお腹の中に、新しい命が宿っていると――。
「おめでとうございます。妊娠、二ヶ月目です」
医師の言葉を聞いた瞬間、恋は目を丸くして、それから涙を流した。
私も、隣で泣いた。
「私、ママになるんだね……」
恋の声が震える。
私はその手を握った。
指先は少し冷たかったけれど、私たちの未来は、確かにそこにあった。
「私も、もう一度、ママになるよ。……君の妻として、母として」
あの日、男に戻った自分を否定したかったわけじゃない。
でも今は、この人生を愛してる。
女になったことも、恋と出会ったことも。
そして、今――このお腹の中に宿った小さな命も。
これが私たちの“選んだ家族”のかたち。




