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朝起きたら女の子になっていた件〜性別を超えた絆の物語〜  作者: 柴咲心桜
第2部 同棲編

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未来を話す夜

夜の静けさが部屋を包む頃、ふたりはようやく一日の家事を終えて、リビングのソファに並んで座っていた。


照明は落とし気味で、カノンの手元にはホットミルク、恋は缶のミルクティーを握っている。


「……なんだか、一週間があっという間だったね」

恋がつぶやく。


「うん。でも、不思議と疲れてない」

カノンが笑う。


「きっと、恋が一緒だからだと思う」


「ふふ。ずるいな、それ」


そう言いながらも、恋はまんざらでもなさそうに笑った。


小さな静寂のあと、カノンがぽつりと口を開いた。


「ねえ、恋。……将来って、どう考えてる?」


恋は一瞬だけ目を丸くしたが、すぐにまっすぐな目でカノンを見つめ返す。


「将来って……仕事とか? それとも、私たちの?」


「両方……かな。いや、後者のほうが強いかも」


少しだけカノンの指が震えていた。でも、逃げずに言葉を継ぐ。


「私、いつか──恋とちゃんと結婚したいって思ってる。

ただ“一緒に暮らしてる”だけじゃなくて、“家族”になりたいって」


恋の目がわずかに潤む。


「……私も、同じこと考えてた」


「ほんとに?」


「うん。でも、カノンにとってそれって、すごく勇気のいることじゃない?」


カノンは黙った。

“私は女の子の姿で生きてる。でも、生まれたときは違った”──その事実は、未来のすべてに影を落とす。


「私ね、正直まだ悩んでるよ。

大学を出て、就職して、ずっとこのまま“カノン”でいるのかどうかも。

でも……恋と結婚したいって気持ちに嘘はない」


恋はカノンの手を取って、やさしく言った。


「じゃあさ──悩んでるままで、いいよ。

私はどんなカノンでも、ちゃんと好きだってもう分かってるから」


「……恋って、ずるい」

カノンは目を伏せて笑った。涙がにじんでいるのを、恋にだけは見られても平気だった。


「それにね」

恋は続ける。


「“今すぐじゃなくても、いつか結婚する”って思ってるなら、それってもう、気持ちとしては結婚してるようなもんじゃない?」


「……そうかもね」

カノンがくすっと笑う。


「じゃあ……」


「うん?」


「ちゃんとプロポーズ、待ってるから」


「──!」


恋の顔が一気に真っ赤になる。


「そ、それ私のセリフなのに!」


「言うの遅いから、先に言っちゃった」


からかうように笑うカノンを見て、恋は照れながらも返した。


「じゃあ、いつか“本物”の指輪、渡すよ。ちゃんとしたやつ」


「その時は、泣いてもいい?」


「うん。泣いても怒っても、キスしてもいい」


「……じゃあ全部、するかも」


ふたりは顔を見合わせて、また笑った。


それは、ふたりの未来を繋ぐ、静かな約束だった。

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