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朝起きたら女の子になっていた件〜性別を超えた絆の物語〜  作者: 柴咲心桜
第2部 同棲編

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55/70

些細な喧嘩と確かな絆

朝、キッチンからジュウッという目玉焼きの音が響いてくる。


カノンはエプロン姿でトースターにパンを差し込みながら、寝ぐせだらけの恋を振り返った。


「おはよう、恋。……髪、すごいことになってるよ?」


「……うーん、あと5分だけ寝させて……」


「ダメ。朝ごはん冷めちゃうよ」

カノンは苦笑しながら皿をテーブルに並べた。


それがふたりの、初めての“朝”。


恋がようやく椅子に座ると、カノンが差し出した目玉焼きを見て首をかしげた。


「え、これ半熟……じゃない?」


「うん、そうだけど?」


「……私、目玉焼きは固焼き派なんだけどなあ」


「え、そうなの!? ごめん……」


「いいけど……っていうか言ったと思ったんだけど」


「初耳だよ……」

言葉が少しだけ冷たくなってしまったことに、お互い気づいていた。


沈黙が落ちる。


「ごめん……私も気をつけるね」

カノンが小さな声で言うと、恋は少し気まずそうに笑った。


「こっちこそごめん。朝から嫌な言い方だった」


ふたりとも、ふっと笑い合う。



***


朝食のあと、洗濯機の音が部屋に響く。

恋が洗濯物を干している間、カノンは掃除機をかけていた。


するとまた、些細なことでぶつかる。


「ねえ、バスタオルって一緒に洗って大丈夫だったっけ?」


「それ、分けて洗う派なんだけど……」


「あ、そうなんだ……もう回しちゃった」


「……ううん、いいよ。次から気をつけよ?」


表面上は笑顔だった。でも、胸の奥にほんの少しの「ズレ」が残っていた。



***


夕方。沈んだ気持ちのまま、ふたりは別々のことをしていた。


そんなとき、カノンのスマホが鳴る。

──ママからのLINEだ。


> 「喧嘩した?最初の同棲ってそんなもんよ」




カノンは思わず吹き出す。

まるで監視されてるみたいだ。


そのあとに続いたメッセージ。


> 「気を遣いすぎず、自分の気持ちもちゃんと話すのよ」




「……そっか」



***


夜、ふたりはベランダでアイスを食べながら並んでいた。

気まずさは残っている。でも、どちらも逃げなかった。


「恋、ごめんね。私……全部合わせようとしてた」

「私も……気を遣わせすぎてたのかも」


「本当は、朝の目玉焼きも……ちょっとだけショックだった。言い方が冷たくなっちゃったの、自分でも分かってた」


「……そっか。でも私、固焼きの目玉焼き作る練習する」


「じゃあ、私もバスタオル混ぜて洗うの、少しは慣れるようにしてみる」

ふたりは顔を見合わせて笑った。


カノンがそっと、恋の手を握る。


「ねえ、恋。もしこれが“結婚生活の準備”なら……最初から完璧じゃなくていいよね」


「うん。ぶつかって、話して、笑って。それがきっと、私たちのかたちなんだと思う」


そうしてふたりは、少しだけ強くなった。

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