カナの告白
「かな!天!何してるの?」
私と天が静かに話していると、美羽の明るい声が私たちの間に割って入った。
「ごめん!今行くね」
私は慌てて笑顔を作りながら答える。少しだけ天に目線を送ると、彼女は小さく頷いてくれた。
――あとで、ちゃんと話すから。
その無言の約束を胸に、私は皆の輪に戻った。
***
その後、私たちは駅前のカラオケに立ち寄り、熱唱と爆笑のひとときを過ごした。気付けばスイーツショップにも寄り道して、クレープやアイスを分け合って笑い合った。
楽しい。
けれど、時間が進むにつれて、胸の中に小さな棘のような焦りが芽生える。
――このまま何も言わなかったら、私はまた後悔する。
「そろそろ帰ろうかな」
夕焼け色に染まった空の下、美羽がそう呟いた時、私は咄嗟に口を開いた。
「待って!」
みんなの視線が一斉に私に集まる。
「どうしたの?そんな大きい声出して」
みうが不思議そうに首を傾げる。私は深く息を吸ってから、意を決して言った。
「今日、こうして集まってもらったのは……話があるからなんだ」
「……話?」
「そういえば、電話でも言ってたよね。大事な話があるって」
天と目を合わせる。彼女は、頷いていた。
「実は――」
声が震える。だけど逃げることは、もうしない。
「私……本当は、元は男なんだ」
一瞬、空気が止まったように感じた。誰も何も言わない。風の音だけが静かに耳を撫でた。
私は全部を話した。
どうして女の子の体になったのか。
日々感じる違和感と、周りを騙しているような罪悪感。
そして、今日まで隠してきたことへの後悔。
「顔も体も女だけど……心のどこかに、やっぱり“男だった意識”が残ってるんだ」
喉が渇いた。息が詰まりそうだ。
「……そっか」
みうが、ぽつりと呟いた。私はうつむいて、拳を握った。
――これで、終わりかもしれない。
「話してくれてありがとう」
え?
「……え?」
思わず顔を上げると、美羽も天も、恋も、穏やかな顔で私を見つめていた。
「怒って……ないの?」
「怒る理由、ある?」
「だって……皆のこと騙してたし、隠してたし……」
「事情があるって、何となく感じてたよ。けどさ、男であれ女であれ――カナはカナでしょ?」
天が言った。まるで当然のことのように、あっけらかんと。
「私たちが仲良くなったのは、カナが“カナ”だったからでしょ?体がどうとか、性別がどうとか、そんなの二の次だよ」
「……ありがとう」
涙が出るかと思った。でも、今は泣かない。だって、ようやく自分を認めてもらえた気がして――心の奥が、あったかくなった。
気が付けば、街は夕焼けに染まっていた。
私の影が、友達の影と一緒に、夕日に照らされて伸びていた。
――ああ、よかった。本当に、話せてよかった。
「ありがとう、みんな」
もう一度、心からそう伝えた。
そして私は、私として――“カナ”として生きていく。
これからも、ずっと。




